クルッグマンの「さっさと不況を終わらせろ」に、経済評論家の池田信夫氏が評論しているが、恐らく誤読している。
読んでもいないのに良く分ると思うかも知れないが、クルッグマンの主張に『増税』があるのに、池田信夫氏はそれには触れていないからだ。以下のような記述は、ブログのエントリーで良く見る(NYTimes,「明かりの消えるアメリカ」)。
But they wouldn’t be quite as cash-strapped if their politicians were willing to consider at least some tax increases. (でも,政治家が少なくともいくばくかの増税を検討する気にさえなれば,そう大した金欠ってわけでもない)
米国では公共サービスの質が低いので、(金持ちから)増税なりして公共サービスの拡大を行うと、雇用水準も増えるし、経済も豊かになるし良い事尽くめだと主張している。効果の有る無しで言えば、増税と公共サービスの拡大と言うポリシー・ミックスは、その額と同じ効果を持つ*1。
また、池田氏は住宅債務の減免策に触れているが、議論が粗雑だ。
いまだに1500万世帯が債務超過になっているといわれる状況を是正しない限り、deleveragingによる不況は終わらない。(中略)そういう状態でバラマキ財政政策をいくら増やしても役に立たないというのも日本の重要な教訓だが、クルーグマンはそれには知らないふりをしている。
消費者(1500万世帯)が債務超過になっているので、財政政策が効かないなんて聞いた事が無いのだが。日本の場合は銀行部門と企業部門のB/Sが問題になった*2が、消費者のB/Sが問題であったと言う論者は少ないはずだ。
*1教科書的なY=c(Y-t)+I+Gのケインズ・モデルで、税金tと政府支出Gを同額増やすと、国民所得Yも同額増える。ただし生産能力の限界が考慮されておらず無限に増えていくので、極端な状況ではある。
*2銀行部門は不況になると自己資本比率不足で貸し剥がしなどを起こしやすい。企業部門のB/S問題はフィナンシャル・アクセラレーターとしてモデル化されて議論されている(関連記事:マクロ経済ショックが長引くある理由)。
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