人気ブロガーのはあちゅう氏が、電通在社時に体験した人気クリエイターの岸勇希氏からのパワハラ/セクハラ体験を告白し*1、反響を得ている。岸氏は全面的にではないが事実を認めているし、セクハラは非難されるべき問題なので、はあちゅう氏に文句が出るはずが無いのだが、ネット界隈でははあちゅう氏の普段の言動との関係を疑問視する声が上がっている。このはあちゅうdisには加わる気はないが、別に気になった点を挙げておきたい。
2017年12月31日日曜日
2017年12月26日火曜日
中世風の異世界にシャワーはあり得るか?
作家の山本弘氏がライトノベルの平鳥コウ作『JKハルは異世界で娼婦になった』を読んで、現代社会とは大きく異なる世界の描写ができる異世界と言う素材を上手くいかしていないと論評し、その中でシャワーの存在を取り上げて現代技術を当然と考えてしまっていると批判している*1。小説の設定なので読者がそれぞれ面白いかどうかだけで判断すればよいのではあるが、中世風の異世界にシャワーが不可能なのかを考察してみたい。
2017年12月12日火曜日
フィリピンの“慰安婦像”に文句を言う前に
荒唐無稽なぺジー社齊藤社長の経済財政諮問会議提出資料が語ること
ぺジー社の補助金詐欺に付随した話題だが、同社社長の齊藤元章氏が経済財政諮問会議に提出した資料について、中日新聞社記者の望月衣塑子氏の「神がかってて意味わからない。こんなもんに大金注ぎ込んでた政府とは」と言うツイートに非難が集まっていた。非難自体はネット界隈ではぺジー社齊藤社長は人気もので、望月記者は嫌われ者なせいか望月記者に辛辣に思えるが、望月記者も一つ勘違いをしているし、望月記者が嫌いな安倍内閣が/も抱える一つの問題点に気づいていないようなので指摘したい。
2017年12月6日水曜日
国民に適切な情報提供ができるまでが長い子宮頸がんワクチン副作用問題
子宮頸がん対策のHPVワクチンの安全性とその効果を科学的根拠に基づいて訴えてきた医師でジャーナリストの村中璃子氏がジョン・マドックス賞を受賞した。ネット界隈では、HPVワクチン懐疑論者とHPVワクチン接種を促さないメディアへの非難が改めて強まっている。副作用を訴える声が大きく報道されたあと、厚生労働省の積極的な推奨が2013年6月に一時中止され、地方自治体の公的補助が継続されているのにも関わらず、接種率が大きく下がったためだ。しかし、決定権があるのは政府の厚生労働省なので、副作用を訴える人やそれを報じるメディアを責めていてもはじまらない。むしろ、厚生労働省の消極的姿勢を責めるべきであろう。
2017年11月30日木曜日
福島の甲状腺がん検診についてあれこれ言う前に
2017年11月28日火曜日
アイヌの歴史は17世紀からではない
Yahoo!ニュースの「アイヌとして生きる若者たち――薄れゆく民族意識の中で」と言う記事の出だし部分、「アイヌ民族。17世紀ごろより東北地方の一部から北海道、旧樺太(サハリン)などに定住し、自然とともに生きてきたとされる」が大嘘だと、ネット界隈で突っ込まれている。2つの意味で間違いがあって、アイヌは17世紀に他地域から流入してきたわけではなく、北海道やシベリアに住んでいた人々が10世紀に確立したエスニシティになる。
2017年11月25日土曜日
2017年11月22日水曜日
インフルエンザ・ワクチンが効かない年がある理由
スペイン風邪以来怖れられているインフルエンザ対策と言えばワクチン接種だが、実は効き目が毎年違う。なぜならば、流行のインフルエンザ株にあわせたワクチン製造に失敗する事があるからだ。その事情が、POPSCIで説明されていた。
突然変異を繰り返すインフルエンザ・ウイルスには、毎年同じワクチンは通用しない。国立感染症研究所のウェブページには、毎年のインフルエンザワクチン株がリストされているが、その4種類の組み合わせは確かに毎年変わっている。ワクチン生成をする前に、流行のインフルエンザ株を特定しないといけない。
2017年11月20日月曜日
2017年11月15日水曜日
タックスヘイブン対策税制はそこそこ機能している
租税回避地の利用者リストであるパラダイス文書が話題になっている。この手のタックスヘイブンが話題になるたびに高収益の国際企業の節税行為が問題視され、税制の見直しがされて来ているのであるが、某大手携帯電話/コンピューター製造販売者のように毎回、槍玉に挙げられる企業も存在する。これまでの国内法や国際協調BEPSなどの規制強化は意味が無かったのであろうか。報道されている限りは、そういうわけでは無さそうだ。
2017年11月14日火曜日
ふらふらとした韓国の外交政策は必然
2017年11月12日日曜日
2017年11月11日土曜日
2017年11月10日金曜日
大学進学率を上げる社会的意義は小さいかも知れない
開発援助畑の畠山勝太氏の「大学生は多過ぎるのか、大学に行く価値はないのか?」と言うエッセイが流れて来たのだが、読んでいて気になったところがあるので指摘したい。
畠山氏は、大学教育への公的支出を、大学教育は労働生産性を改善する人的資本蓄積効果が大きく、改善しないシグナリング(スクリーニング)効果は小さいとした上で、社会的利益(外部経済)と流動性制約や保護者の無理解による過少教育投資の存在から、「経済発展のための人的資本投資」として正当化できると主張しているのだが、その証拠になる統計を示せていない。
2017年11月9日木曜日
MV-22オスプレイの事故率急上昇への有効な対策は
普天間基地の辺野古移転。
MV-22オスプレイは危険と言われつつも、10万飛行時間あたりの死亡もしくは機体全損のクラスA事故率が低かったが、ここ1年間に3度のクラスA事故が生じたために、クラスA事故率が急上昇するに至った。2012年の1.93から3.27に跳ね上がり、海兵隊全体の2.72よりも高い数字となった(朝日新聞)。ただし、中身を見ていくと心配すべき機体の不具合は無く、市街地上空を移動していて生じるような事故は起きていない。
2017年11月8日水曜日
待機児童解消と幼児教育無償化は平行して実行される事になっている
NPO団体代表の駒崎弘樹氏が「幼児教育無償化は、幼稚園業界への利益供与か」と言うブログのエントリーで、幼児教育無償化だけではなく待機児童解消にも施策が必要だと主張している。しかし、安心して欲しい。政府によるとだが、駒崎氏の願いは叶う方向だ。
2017年11月7日火曜日
太平洋戦争は自衛戦争だった論に欠けているモノ
気づかないうちにネトウヨの皆様の間で、太平洋戦争は自衛戦争だった論が展開されているらしい。米国の対日経済制裁によって苦境に立たされたので、対米開戦をせざるをえなかったと言うのが、その理屈だ。1941年12月8日以前の国際情勢に関する知識が欠落しているのだが、日本の拡張的領土政策に対する制裁であったことが欠落した議論になっている。1937年の盧溝橋事件以後のシナ事変が、1941年の全面石油禁輸措置が理由で始まったわけではない。
2017年11月6日月曜日
2017年11月5日日曜日
ジェンダー・ギャップ指数では中国社会の闇は測れない
2017年11月4日土曜日
数物系のお供「リー群の話」
警察官がボディ・カメラを装備しても、態度が良くなるとは限らない
米国ではケータイのカメラなどで、警察官のマイノリティへの暴力*1や不用意な発砲が可視化され社会問題になっているが、米欧では警察官の規律対策としてボディ・カメラ(BWCs)の装備が各所で試されている。「ボディカメラの装着で警官に対するクレームが93%減少」のような大きな効果を伝えるニュースをよく見かけるのだが、ランダム化比較実験(RCT)を用いた厳密な政策効果の測定を行うと費用対効果は微妙な結果になる*2。
2017年11月3日金曜日
大学設置審議会の加計学園の獣医学部設置認可は、問題が無かった事を意味しない
文科省の大学設置・学校法人審議会が、加計学園獣医学部の開学を認可する見通しとした事に対して、これまで言われた疑惑が虚偽であったことが示されたと喜んでいる人々がいる一方、疑惑があるのに設置認可を出したのは不透明だと憤る人々も出ている。政治的な立ち位置で意見が分かれるのは分からないのだが、ちょっと待って欲しい。設置審議会はあくまで国内基準で判断するところなので、今まで出された疑惑とは関係の無く設置認可を判断している。だから、論争に決着をつけることはできない。
コチャバンバ水紛争は民営化が悪い事例にはならない
新自由主義やグローバル化を嫌う人々が、1999年から2000年に南米ボリビアで起きた水道事業の民営化に対する反対運動コチャバンバ水紛争を引き合いに出して、水道事業の民営化に反対しているのを見かけたが、日本での議論の引き合いに出すのは無理があるので指摘してきたい。コチャバンバ水紛争は、外資系民間企業への水道事業の売却が、反対運動の激化により撤回された事例で、確かに成功事例ではないのだが、水道の安定供給に失敗した事例でも、料金高騰を招いた事例ではなく、行政の狙いを住民が理解できなかった事例であった。
2017年11月2日木曜日
利用言語を意識すれば、時間感覚が変わる
言語が思考に強く影響し、現実世界の認識を左右すると言うサピア=ウォーフ仮説が否定されてから久しいが、利用言語が知覚に影響する事もある。Journal of Experimental Psychology: General誌に掲載された研究で、スウェーデン語話者とスペイン語話者で、時間感覚に違いが出る状況が確認されたことが、POPSCIで紹介されていた。ただし、説明されるときに使われる言語によって体感時間の精度が変わると言う、ちょっと解釈が難しい実験結果であった。
2017年11月1日水曜日
ICT投資と非ICT投資を分けると日本のTFP成長率が落ちる理由
先日のエントリーで紹介したTEDのTFP成長率の90年代の値が、Hayashi and Prescott(2002)のものと比較して格段に低くなっている理由について議論があったので、考察を加えてみた。結論を先に述べると、HP論文ではICTと非ICT投資の配分効率性の改善をTFPの改善として計測してしまうため、ICTと非ICT投資を分けているTEDよりもTFP成長率が高めに推移していると考えられる。
2017年10月31日火曜日
報道機関がまだ森友学園問題を終わらせてはいけない理由
2017年10月28日土曜日
2017年10月26日木曜日
2017年10月25日水曜日
2017年10月24日火曜日
2017年10月23日月曜日
野党が仲良く選挙協力をする方法
今回の第48回衆議院選挙は、解散を決断した安倍総理もびっくりのドタバタ劇であった。少数派は合併して大きくなるか、綿密な選挙協力をしないと勝てないのが小選挙区制度なのだが、選挙のために主義主張が異なる集団と手を組む事に耐えられない政治家が多いようで、統一政党の分裂癖はなくならない。
2017年10月21日土曜日
2017年10月20日金曜日
2017年10月19日木曜日
就業者数で景気判断をするとアベノミクスは微妙になる
ネット界隈のリフレ派は、2012年末までの民主党政権に景気が底をうっていたのを認めると心の中の何かが壊れるのか、最近は景気遅行指数の就業者数をもって第2次安倍政権になってから景気が良くなったと主張している。マネーストック、期待インフレ率、インフレ率はどうでもよくなったのか、景気一致指数の有効求人倍率を見なくて良いのかも気になるが、就業率ではなく就業者数をみると色々と奇妙な事が起きるのを指摘しておきたい。
2017年10月17日火曜日
賭け金を全て行動経済学に載せない方がよい理由
2017年のノーベル経済学賞もしくはスウェーデン銀行協会賞は、行動経済学の大家であるセイラーに決まった。2002年にカーネマンらと同時受賞をしていてもおかしく無い人で、今回の単独受賞の理由を訝しがる人もいるが、賞に相応しい業績を持つ人物であるのは間違いない。あぶく銭を軽率に使ってしまう限定合理性、国や地域によって公正な振る舞いに差があることを意味する社会的選好、夏までに痩せると宣言し菓子を貪る自制心の欠如を、存在証明し分析した功績がある*1。しかし、これで行動経済学の知見を鵜呑みにするべきかと言うと、そうでもない。
2017年10月16日月曜日
公的年金支給開始年齢の引き上げの60歳以上就業者数への影響
はてサのid:scopedog氏が「55~64歳の年齢階級で就業者数が安倍政権になって増えた理由は、年金支給開始年齢の引き上げが2013年から開始されたから」と主張しており、その理由として「55~64歳の年齢階級で2013年から15歳以上人口に対する就業者数や非労働力人口の割合の推移傾向が変わっている」からだと主張している*1。明らかに変なのだが、ブックマークのコメント欄でちゃんと突っ込んでいる人がいなかったので指摘しておきたい。
経済統計でデッド・キャット・バウンスと言われても
ネット界隈のリフレ派が好む用語に、デッド・キャット・バウンス(Dead Cat Bounce)と言うのがある。死んだ猫でも高い所から落とせば跳ねるように、急落している最中に一時的に回復傾向になる株価の動きを指す。今では株価以外の経済指標にも使われるようになったが、これで資本市場以外の説明をするのはやめた方がよい。そのような現象が頻繁に見られるわけではないし、理屈が全くつかないからだ。
男と女は違うことを認めないと、女が困ることになる
男女で薬剤の効き方や副作用が異なり、特に排卵や月経などの影響を考慮した治験など臨床実験を行なわないと、女性が困る事になると言う話がPOPSCIでされていた*1。紅斑性狼瘡、尿路感染症、心臓疾患などにおける性差は広く知られているので、従来から認識されていた話だと思うが、Nature Communications誌に掲載された研究のマウスを使った大規模実験で性差の影響が改めて確認された。
2017年10月15日日曜日
アレな評論家の得意技モット・アンド・ベイリー論法
弁当が旨そうな話ではない。よく炎上する評論家の得意技に、モット・アンド・ベイリー論法(Motte and bailey)と言う立派な名前がついていたと言う話である。
その主張が過激でトンデモであると非難されると、もっと穏当なことを主張している、それが分からない人がおかしいと弁解をする文筆業の人を見かけたことがあるであろう。主張が過激なモノにも穏当なモノにも読める曖昧作文を行なっているのが問題なのだが、この事には反省の色は見せない。
2017年10月14日土曜日
求職意欲喪失者や縁辺労働者や不本意なパートタイマー労働を考慮した失業率は、完全失業率とよく連動
完全失業率の改善を示されても、雇用環境が余りに悪いと職探しをしても仕事が見つからないので、失業者が求職を止めてしまう就業意欲喪失効果や、パートタイマーへの不本意就業による妥協による低下であって、雇用環境は実は悪化していると主張する人々は少なくない。ネット界隈のリフレ派が2012年までの民主党政権時の、反安倍政権の左派が最近の完全失業率の低下に対して、このように主張するのを見かけたことがある人は多いであろう。しかし、求職意欲喪失者や縁辺労働者や不本意なパートタイマーを考慮した失業率を作っても、完全失業率とよく連動する。完全失業率を見ていれば、だいたい間違いは無い。
2017年10月12日木曜日
東浩紀の「積極的棄権」が選挙のボイコットを勧めていないとして
文芸評論家の東浩紀氏が、衆院選「積極的棄権」の署名活動を開始したそうだ。選挙の棄権を呼びかけるとは何事かと非難され、それに投票の棄権を呼びかけているものではないと弁解する問答がされている。何ともポストモダン的状況である。
2017年10月9日月曜日
2017年10月8日日曜日
2017年10月3日火曜日
ヒトES細胞を試料に用いるための生命科学者による倫理的正当化
生命倫理について、人文系の哲学者の主張を見つけることは容易いと思うが、生命科学の研究者がヒトES細胞を試料に用いることを、どのように倫理的に正当化しているのか、はっきり確認できることは少ない。
実際問題、学内の研究等倫理審査委員会をパスできれば良いわけで、それ以上の関心を持っている研究者は少ないのであろう。しかし、さすがに偉い人になると外部との折衝があるのか無視するわけにもいかないようだ。そのツイートをよく見かける中辻憲夫氏の著作『幹細胞と再生医療』の第5章には言及があった。
2017年10月2日月曜日
2017年9月30日土曜日
いまどき財政ファイナンスで高インフレに苦しむベネズエラ
マクロ経済学者の多くは歳入を貨幣発行に頼る財政ファイナンスに対して強い警戒心を持っている。一方で、日本が20年近く安定した物価を維持しているためか、インフレに対する恐怖心が蒸発してしまっている人が多いようで、ネット界隈にはマクロ経済学者の言説を感覚的に理解できない人々が一定数いるようだ。クーデターで政府転覆されるケースすらあるのだが、時折インフレで滅んだ国は無いような言説も見かける。時が経つと失敗への反省は薄れるものらしい。しかし、国外に目を向ければ今も高いインフレーションと経済混乱に苦しむベネズエラがあり、財政ファイナンスの帰結がどのようなものかを知る事ができる。