米国ではケータイのカメラなどで、警察官のマイノリティへの暴力*1や不用意な発砲が可視化され社会問題になっているが、米欧では警察官の規律対策としてボディ・カメラ(BWCs)の装備が各所で試されている。「ボディカメラの装着で警官に対するクレームが93%減少」のような大きな効果を伝えるニュースをよく見かけるのだが、ランダム化比較実験(RCT)を用いた厳密な政策効果の測定を行うと費用対効果は微妙な結果になる*2。
ボディ・カメラの効果は、そう自明なものではない。状況が記録されていれば、警察官は訴訟や苦情を避けて注意深く振舞うようになる気がするが、逆に暴力を振るう必要性の証拠になると考えて粗暴な態度を取る可能性もある。政策効果を測定してみないと、何とも言えないわけだ。実際に調べてみると、大きな効果は観測されない。方法論としては、トリートメント群を勤務時間シフトもしくは警察官個人で選ぶ2種類があるそうだが、分析結果は同じ方向を指している。
理由は明確ではないのだが、随分前から常に誰かにケータイなどで撮影されている可能性があるので、警察は司法省の調査の下で、暴力は最小に留めるように研修を実施し、報告システムを構築して来ており、ボディ・カメラと同様の効果が既に得られているのかも知れない。ただし、時折発生する警察が説明に追われる事件では役立つし、市民の安心感は得られる。市民が司法に訴える件数は減っていないが、市民が苦情を申し立てる件数は減っている。また、黒人に対する無意識の差別行動が明らかになったと報じられていたが、多面的な分析にも使える。
問題は、やはりお値段。ワシントンD.C.に導入したケースでは、100万ドルの初期コストに、年200万ドルの維持費がかかっている。また、「ボディカメラを装着した警官は暴行を受けやすい」と言う話もある。
*1実際は白人やヒスパニックの方が黒人よりも射殺されやすい(5 Statistics You Need To Know About Cops Killing Blacks | Daily Wire)ので、警察官が人種差別的とは限らないという指摘もある。
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