マルクス経済学者の松尾匡氏の連載2回目『ソ連型システム崩壊から何を汲み取るか──コルナイの理論から』が公開されていた。掴みの部分の1回目*1に比べて脚注も大幅に増えた気がするし、論が精緻になってきた。つまり学術的になってきたのだが、よく考えるとやはり上手いプロパガンダになっている。ミクロ的非効率の存在を厚く議論する一方で、価格メカニズムと言うマクロ的機構の重要性を無視しているからだ。
2013年11月28日木曜日
女子のための「性犯罪」講義―その現実と法律知識
京都女子大学の江口氏がしっかりした仕事で心あたたまると評していた吉川真美子氏の『女子のための「性犯罪」講義―その現実と法律知識』を拝読してみた。確かに講義資料のような感じで、どちらかと言えば薄い本なのだが、性犯罪に関して法律面から知っておくべき基本的な事を簡潔に網羅しているように感じる。
2013年11月27日水曜日
ドイツの売春自由化がもたらしたもの
売春を合法化したほうが売春婦の保護にはなると書いていた*1ら、The Economistの関連記事を示唆された。1999年に売春を禁止し、売春客に罰則を与えるようにしたスウェーデンと対比しつつ、合法売春の範囲を拡大したドイツの事情を紹介している。図はFrance Infoにあったものだが、合法売春の範囲が広いのは、欧州でも緑の国に限られるため、ドイツの事例は重要だ。
2013年11月26日火曜日
貧乏人は教師に賄賂を払わないと学校に入れないのか?
経済学101で『無償教育は貧乏人にとってはタダじゃない:教育における汚職と格差』と言う世銀の研究員のブログ記事の翻訳が公開されていた。開発途上国では教師が賄賂を支払わない保護者の子供の入学を拒絶するケースがあるが、金持ちはそれを免れると言う話だ。一見もっともらしく興味深いが、何か抜けた議論になっている。議論の元になっているEmran, Islam and Shilpi(2013)を拝読してみた。
フランスで売春客への罰則が提案される
日本ではもともと売春婦ではなく客が罰せられるようになっている*1のだが、フランスで売春行為の客を罰する法案が議会で議論されるそうだ。初回が€1,500(約20万円)の罰金、再犯は€3,000の罰金で、18歳未満の売春婦を買った場合は最大で€45,000と3年間の懲役が科せられる(France Info)。昨年はクロアチアで同様の法律が議論されていた*2。
決定できないと言う意見は無意味? ─ がんばれChikirin!へこたれるな!
戦略系コンサルタント会社マッキンゼーの元人事担当者だったと噂されるアルファ・ブロガーのChikirin氏が『「AともいえるがBともいえる」とか言う人の役立たなさ』と言うエントリーで、どちらとも言える、どちらとも言えないと言う意見を述べる人は、自分の意見が持てず、決断できない役立たずな人間だと罵っている。酒席の愚痴になっていて興味深い。
2013年11月24日日曜日
特定秘密保護法案はあるべき秘密の基準を裁判所に丸投げしている
国会で議論が行われている特定秘密保護法案*1だが、その規定が濫用されないか危惧されている。スパイ行為などの情報漏洩に対して法的対抗手段を用意するものだが、取材手法を抑制し、内部告発を妨げると考えられているようだ*2。しかし条文を見ると裁判官任せのところが多く、どういうケースで有罪に持ち込めるのかが良く分からない。政府にとっても、報道にとっても、曖昧なのはよくないように思える。
2013年11月20日水曜日
ハルビン駅に建立する方向らしい安重根碑は気にする必要が無い
伊藤博文を暗殺した事で知られる安重根は、韓国では英雄として扱われている。そして暗殺現場の中国のハルビン駅に、安重根碑を建てようと言う動きがある。これに対して菅官房長官が「日韓関係のためにはならない」と不快感を述べたらしいが、この言及は不要であったように思える。
2013年11月19日火曜日
かけ算の順序にこだわる教師と出版社の皆様へ
東北大学の黒木玄氏が“掛算の順序にこだわる教え方”に関して意見表明をしろとツイッターで呼びかけていた*1ので、微力ながら“掛算の順序にこだわる教え方”への反対意見を表明をしてみたい。
“掛算の順序にこだわる教え方”と言われても理解できない人が多いと思うが、小学校の算数で問題文と数式の構造を強く結びつける教え方だ。例えば1個100円のリンゴが5個ありその総計金額を求める場合、100×5=500と立式するのが正解になり、5×100=500が不正解になる。わけが分からない? ─ 私も良く分からない。
2013年11月18日月曜日
SPAMが増えてCAPTCHAが消える予兆
画像表示された文字列を入力させることで機械的な投稿やアカウント作成を防ぐインターネット上のシステム、つまりCAPTCHAが煩わしいと思っている人は多いと思う。既に広く報じられているが、このCAPTCHA入力をベンチャー企業Vicariousが人工知能で可能にしたと宣言をした(DVICE)。
通名の問題は制度改正で解決を
前のエントリーで、通名*1は日本社会に馴染まない名前を持つ外国人の社会生活上の利便性を考慮した制度で、在日韓国・朝鮮人の特権ではないと書いたところ、特権であるか否かが問題なのではなく、(1)氏名の漢字表記が出来る在日韓国・朝鮮人には不必要である一方、(2)在日韓国・朝鮮人が通名を頻繁に変更する事で犯罪利用するケースがあると言う指摘が多数あった。この二つを検討してみたい。
2013年11月16日土曜日
通名は在日特権と言えるのか?
在日韓国・朝鮮人の特権(通称、在日特権)の存在を巡って、慶應大学の竹田恒泰氏と経済評論家の池田信夫氏の間で議論がされている*1。
こういう議論は議論の中心である特権が、誰が持つ誰に対して持つどのような優越した権利なのか明確にして欲しいのだが、政治の領域なのか曖昧なまま言い合っている。特に在日特権の場合は、日本人に対して優越するのか、他の外国人に対して優越するのか整理を行う必要があるであろう。
2013年11月14日木曜日
薬のインターネット販売について知っておくべき三つのこと
薬のインターネット販売が規制緩和され、原則として市販薬(OTC医薬品)は解禁される事になったのだが、処方箋が規制されたままであることを批判している経済評論家がいる(ニューズウィーク)。市販薬は約6,000億円、処方箋は約9兆円と市場規模が違う*1ことから、薬剤師の既得権保護が行われていると主張したいようだ。薬剤師は「医師の処方箋のとおり薬を出すだけだ。昔のように調合するわけではない」とまで言っている。
理性と冷静さを求める、非理性的で感情的な朝鮮日報の社説
朝鮮日報が社説『【コラム】日本を見る目、世界が馬鹿なのか』で、一見冷静だが、よく考えると奇妙な主張を展開している。
社説では、韓国人の興奮しやすく感情的な非理性的かつ内輪で完結してしまう態度によって韓国が国際社会に信頼されていない一方で、日本が国際社会で高い評価を得ているため、日韓の間の問題が解決できないと指摘する。韓国人は態度を変える必要があるそうだ。
2013年11月12日火曜日
何故mixiは整理解雇をしないのか?
老舗SNSのmixiの事業会社ミクシィが実質的なリストラを敢行していると噂されている。売上が3割以上低下し、営業赤字に低下したことから、一部の社員を『追い出し部屋』に追い込んだのでは無いかと言う疑惑だ*1。同じく不振の競合のGREEが希望退職を募った*2のに対して、手法が乱暴では無いかと批判されている(東洋経済)。
文科省の言う「道徳教育」がスカスカな件
政府は道徳教育の拡充をはかる方向で進んでいるようだ(毎日jp)。子供の睡眠時間の拡充になるだけな気もするが、(本当かは怪しいが)社会風潮の退廃に対応するために賛成と言う人々と、価値観の刷り込みだと否定する人々で賛否が分かれているようだ。
具体的に何を教える気なのかが分からなかったが、当面のテキストは「心のノート」の改訂版を用いるそうだ。今の「心のノート」と内容はそうは変わらないであろうと思い、ざっと見てみた。
2013年11月10日日曜日
世界史をつくった海賊
「世界史をつくった海賊」は、大航海時代のイングランド(1707年にスコットランドと合併してイギリス)の海賊の活動とその後を記述した本だ。映画の元になりそうな逸話が色々と書いてある。時系列で整理していないのでマルクス経済史観に染まった読み手で混乱する人もいたようだが、読み物として面白い。
16世紀のイングランドは海洋国家としての基盤が無かったため、有利な条件で貿易を行う事ができなかった。ポルトガルとスペインが貿易港や航路を抑えており独占販売権を持っていたためだ。スペインやポルトガルに対抗するために富国強兵を計っていたが、貿易で国家収入の拡大を行うのは難しかった。
2013年11月6日水曜日
あるマルクス経済学者の動学最適化に関する議論をラムゼー・モデルと比較してみる
前のエントリーのコメント部分でのマクロ経済モデルの安定性に関しての議論で、マルクス経済学者の松尾匡氏が「成長論モデルの基本構造──恒常成長への収束性と市場調整の安定性が別問題であることについて」と言う反論を寄せられた。
ウェブでも松尾氏は「経済成長論の数学モデルで、時間を通じて運動する変数が一定の値に落ち着いていくことと、そのモデルで、売れ残りや品不足、失業や人手不足といった市場の不均衡が、自動的に解消される仕組みになっているかどうかということは、別の問題」と主張を説明している。
2013年11月1日金曜日
人生にある罠としての「線形代数と群の表現Ⅰ」
文系から見て謎な理系単語は幾つもあるが、その一つに「群」があると思う。歴史はガロアにまで遡るので浅くは無いが、社会科学分野では広く利用されているとは言えないので、大半の文系には縁が薄い。しかしSNSで定期的に目にする単語でもある。NHKの「オックスフォード白熱教室 第2回 シンメトリーのモンスターを追え」も群論の話だった。概要ぐらい知りたいところだ。