目を惹く秀逸なタイトルで気になっていた、濱口桂一郎氏の『働く女子の運命』を拝読した。ネット界隈の社会学者などが女性の就業や育児出産などの問題を取り上げる事は多いのだが、歴史的経緯を説明してくれないと言うか考慮していない事が多く、門外漢には彼らの問題意識の妥当性が分からない事が多い。本書は、濱口氏の過去の著作と同様に、戦前からの労働政策をまとめており手軽に経緯を追えると言う意味で、経済学などの抽象化された分野をバックグラウンドに持つ人々には重宝する一冊だと思う。現在の政策的課題も第4章で説明されており、それに対する回答も提案されている。メンバーシップ型とジョブ型の雇用形態の違いで整理されている所は、いつもの通りである。さて、つらつらと感想を書いてみたい。
2016年3月31日木曜日
2016年3月24日木曜日
消費税率引き上げ前後の鉱工業指数
世論調査を見ると、それが何であれアベノミクスを評価しない人は段々と増えてきている*1せいか、安倍総理自身が「消費税を8%に引き上げたら景気が冷え込んだ」と思っているせいか、はたまた財界で景気後退を懸念する声が大きくなってきたせいか*2、官邸は次の景気刺激策として増税延期を画策しているようだ。増税延期の是非はさておき、雇用が良いのに景気が悪いと言うのは不思議である。消費を見ているのだと思うが*3、鉱工業指数あたりも把握しておいた方が良いと思うので、過去3回の消費税率引き上げ前後の鉱工業指数の変化を見てみた。
2016年3月22日火曜日
早生まれによる未成熟さもADHDと診断されてしまう
注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、他の多くの心の病気と同様に、医者がそう診断したらそうなると言った程度の診断方法も確立していない病気だ。かなりのいい加減さがあるわけだが、それが露呈する研究が紹介されていた(Mail Online)。
2016年3月20日日曜日
非リア充につらい『夫婦格差社会』
晩婚化や未婚率の上昇が問題とされている昨今だが、婚姻関係の議論やデータを事細かに追いかけている人は少ないであろう。また、大半の人はせいぜい3回ぐらいしか結婚しないであろうし、耳に入る周囲の結婚事例も職場や同窓のものが多いであろうから偏ってくる。だから、イマドキの結婚像を知っている人はほとんどいない。なお悪い事に問題がジェンダーに関わるために、イデオロギー色の強い論者が根拠不明な事を言い勝ちで、全体像を見誤りそうになる。
2016年3月19日土曜日
スティグリッツの言う事を聞いて、ガソリン価格を5割増しに出来るか?
情報の経済学の開拓者の一人で様々な分野に大きな業績を残す、山ほど論文を書いているので見上げるだけでも骨が折れる経済学の巨人スティグリッツが日本に来て、消費税率引き上げ延期を示唆したと話題になっている。安倍総理が増税延期を正統化するために呼んだのだと思うが、このノーベル賞経済学者は増税自体を否定しているわけではない。所得税、相続税の累進課税強化や、炭素税などの環境税を提唱している*1。
2016年3月17日木曜日
消費税率引き上げの消費抑制効果は言われているほどでは無い
ネット界隈では強く信じられている説に、消費税が消費を抑制して景気を悪くすると言うものがある。増税すれば誰かの可処分所得は減るので景気悪化要因にはなると思うが、特に消費税にその効果が大きいと思うようだ。1997年の消費税率引き上げ後に急激に景気悪化したと言うイメージがあるかららしい。一方で、欧州では頻繁に税率は引き上げられてきた気がするが、それで景気悪化したとは聞かない。そこで1989年の消費税導入、1997年の消費税率引き上げと合わせて、2014年の消費増税前後の消費を商業販売統計で比較してみた*1。
2016年3月14日月曜日
保育所を拡充すると子持ち女性の就業率は上がるが、出生率は変わらないかも知れない
インターネットで匿名で書かれた愚痴が国会で取り上げられて話題になっているが、以前も待機児童問題が話題にもなっていたし、国が設置基準を定めて公的援助を行っている認可保育所が不足していると言われて久しい。経済学者や社会学者が色々な分析をしているのだが、その中で保育所を拡充すると女性の就業率は上がらなかったと言う論文が、今年に入ってよく参照されている。
2016年3月9日水曜日
アメリカ統計学会「P値至上主義による統計的仮説検定を超えて行こう」
最近は帰無仮説を棄却して対立仮説を採用する教科書的なP値至上主義による、何かを発見したと主張する論文だけが公刊される風潮はだいぶ弱まってきたのだが、何かがあると言う方が作文が楽なのか、まだまだP値至上主義は幅を利かせている。そして、このP値至上主義と言うかP値偏重主義にはかなりの弊害がある事が知られている*1。
2016年3月8日火曜日
財務省ガガガガ・・・と言いがちな人が読むべき本
ネット界隈で財政健全化を嫌う人は、何かと財務省が諸悪の根源のように言いがちだ。政治家を何らかの方法で制御できるらしい。ここまで累積債務がたまっている時点で、財務省の持つ権力などたかが知れている気もしなくもないが、どうして支配力があるように思われているのか気になる所だ。財務省が政治にどう関わって来たかを説明する本が無いものかと思っていたのだが、『財務省と政治 - 「最強官庁」の虚像と実像』と言う本が出ていたので拝読してみた。週刊誌が好きそうな裏話になると思うのだが、その都度々の財政問題に対して個々の財務官僚や政治家がどう関わってきて、どのような結果になったかが年代を追って説明されている。メディアを通じて見聞きする名前に詳しくなれると言う意味で、財政学の教科書などとは一味違って新鮮に感じる。