2016年3月19日土曜日

スティグリッツの言う事を聞いて、ガソリン価格を5割増しに出来るか?

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情報の経済学の開拓者の一人で様々な分野に大きな業績を残す、山ほど論文を書いているので見上げるだけでも骨が折れる経済学の巨人スティグリッツが日本に来て、消費税率引き上げ延期を示唆したと話題になっている。安倍総理が増税延期を正統化するために呼んだのだと思うが、このノーベル賞経済学者は増税自体を否定しているわけではない。所得税、相続税の累進課税強化や、炭素税などの環境税を提唱している*1

現行の枠組みで炭素税に近いものと言えば、石油石炭税やガソリン税などの石油関連諸税であろう。2015年度予算で、4兆3850億円ある*2。だいたい消費税が1%で2兆円の税収と言われるので、消費税率2%引き上げに相当する税収を得るには、1.91倍にする必要がある。ここ一週間ぐらいはレギュラー・ガソリン価格が100円ぐらいで、うちガソリン税は53.8円。税金以外が46.2円。46.2+53.8*1.91≒149.07円。大雑把に5割増しと言って良いであろう。

家計負担はガソリン税だけに留まらない。灯油や軽油の価格も上がる事になるし、スティグリッツの意図からすれば、鉄道事業者などへの石油石炭税に係る免税・還付措置*3なども抑制する必要があるので、運送料の上昇から他の物価も上がる事になる。スティグリッツ曰く、省エネ投資が促進される事になるわけだが、確かに二重窓にしたりする住宅が増えそうだ。しかし、自動車通勤をしている家計は消費税率引き上げよりも多く負担する事になるであろう。安部政権の方針と合致している話であろうか。

国際金融経済分析会合に呼んだことを取り上げて、著名学者の政治利用云々と言って批判している人々は多いし、呼んだ人々は上手く政治利用できたと喜んでいるかも知れない。しかし、消費税率引き上げ延期以外の意見が広く伝わると、良かれ悪しかれ政策を縛ってくる可能性はある。スティグリッツは、インフレ目標政策に反対*4していて、量的緩和の効果に否定的でもある*5し、どうも原子力政策にも否定的なようだ*6。TPPにも反対している。日本共産党にとって政治利用しやすいキャラクターと言う話も見かけたが、そう安倍内閣が政治利用しやすい事を言って来たわけではない。

*1経済分析会合:累進課税強化など指示 世界経済「大低迷」 - 毎日新聞

*2経済産業省『第48表 石油関係諸税の税収と使途(2015年度予算)

*3環境省『地球温暖化対策のための税の導入』の「7. 地球温暖化対策税に関連した配慮措置」を参照。

*4関連記事:インフレ目標政策は失敗だった!

*52013年のESRI国際コンファレンスのワークショップで、米国のQEの結果としてのドル安を評価する一方で、「インフレによる実質金利の低下はそれほど重要ではない。米国では実質金利がマイナス2%であるが、投資には影響していない」としている。なお、ここでは「安倍政権が政策を打ち出す前から日本の実績が良好」とも言っているし、安倍政権に迎合的ではなく、going my wayである。

*6原発事故と金融危機に共通するギャンブル性|スティグリッツ教授の真説・グローバル経済|ダイヤモンド・オンライン

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