昨年末にも同様の声明が出されていたので注目度が低いようだが、歴史学の学会16団体から『「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明』が出されていた。しかし、形式的に問題がある行動になっている。どうも、声明文に関して署名などを集めなかった学会執行部の判断らしい。その結果、日本の大多数の歴史学者の見解なのか分からないことになっている。また、学者は複数の学会に所属しているので、参加人数が6,900人と言いつつ同一人物が何度もカウントされており、計算上もおかしい。こういう場合は、代表者名の個人見解として声明を出すのが妥当だと思うのだが、なぜ学会の総意のように見せかけたのであろうか。
2015年5月26日火曜日
社会福祉の維持のための増税の是非も議論して欲しい『経済政策で人は死ぬか?』
昨年ぐらいから話題の左翼やリベラルを標榜する人が良く読んでいる『経済政策で人は死ぬか?』をようやく拝読してみた。幾つかショートストーリーも挟まれるのだが、似たような悪い経済環境で異なる政策をとった二つの国を自然実験として統計比較する主体としたエビデンス・ベースの議論になっている。緊縮財政として特に公衆衛生や貧困対策などの社会福祉政策に関する歳出削減を強く批判している一方で、増税に関する議論がほとんど無いのが気になった。また、自然実験とされる比較が、必ずしも似た状況の国同士を比較していない気がする*1。
2015年5月16日土曜日
大阪都構想の挫折が示すもの
大阪維新の会、ついては橋下大阪市長の主要政策である大阪都構想の住民投票が明日に迫っているが、新聞各社の世論調査では大きな支持を集めておらず*1、否決される見通しだ。明治末期からの特別市運動なのだが、地方自治の限界を露呈して終焉するようだ。考えてみれば当たり前で、大阪市民、堺市民に予算的に明確な利点が無い制度改正を、大阪市民、堺市民が支持する理由が無い。
権力闘争が良く分かる「韓国現代史」
隣国とは言え、第二次世界大戦後の韓国現代史に興味がある人は少ないと思う。文化的に憧れる対象でも無いであろうし、先進国であっても、軍事的にも経済的にも大国では無いからだ。曽祖父が生まれた頃は日本の一部だったとは思えないぐらい親近感が無いと思う。私も、かなり以前に読んだ「韓国の族閥・軍閥・財閥」と言う本のイメージで見る程度だった。池氏のこの本、細部に日韓両国に対する否定的な予断を感じる所はあるものの、族閥~軍閥~財閥と上手く韓国政治の権力者の変遷を整理していて印象深い。しかし1997年の本なので、もう少し新しい知識が欲しい*1。
2015年5月8日金曜日
アジア研究協会(AAS)定期年次大会で河野談話は抹消されました
風聞では外務省が米国の学者相手に活動を行って反発を受けた結果らしいのだが、「日本の歴史家を支持する声明」と言うのが主に米国のアジア研究者から出ていた。英語と日本語で出ているので、恐らく日本政府と日本国民に向けたメッセージだと思うのだが、ここ二十年の日韓関係を全く踏まえていない文章になっているので、困惑してしまう。河野談話やアジア女性基金についての言及が無い。