2026年5月30日土曜日

戦車と火砲の地位が低下し、ドローンが必須兵器になっている件

2025年はウクライナとロシアの戦争における死傷者の8割はドローンによるものになったと言われている。2022年は1割未満であった。戦車などの装甲車両は前線から姿を消し、悪天候や市街戦などのときのみ使われるようになった*1。何十Kmの遠方から攻撃ができる火砲はなお驚異ではあるが、その重い弾薬の運搬車両がドローンに狙われるようになり、運用が困難になりつつある*2

電波妨害に強い光ファイバーによる有線FPV*3ドローンが普及し、それに有効な対抗手段が無いためだ。小型のドローンは小火器で撃墜できるほど脆弱なものではあるが、それではオペレーターに被害が及ばず、製造コストが低いドローンはすぐ代わりの機体がやってくる。有線ドローンは標準的なもので20Km程度、長距離型で50Kmの射程がある。無線型は100Km超の射程があり、前線からかなり後方の補給路を走る無防備なトラックへの攻撃にも使われるようになった。

ロシアもウクライナもドローンを利用してきており、相互の状況は似たようなものであるはずだが、ウクライナの方が上手くドローンを運用している。高価な兵器を持たざる者であったためか、将兵の損害を抑制するNATO方針を取り入れたためか。結果として、ウクライナ軍の死傷者数はロシア軍の半分以下に抑制できている*4可能性が高い。2023年後半以後は全体としてはロシアが占領地域を広げてきたのだが、そのペースもかなり落ちてきており、一部の前線でロシア軍の後退が報告されるようになってきた。

死傷者数の増加は、ロシアの重荷になっている。現在ウクライナに駐留している兵と死傷者数を足すと180万人ぐらいに達していると考えられるが、これはロシア男性の生産年齢人口の6%程度となる。経済への悪影響は目に見えている。死傷率が高いために志願兵の集まりが悪いことも指摘されており、兵員充足が困難になっているようだ。火砲の集中運用による目標破壊と、犠牲を厭わない人海戦術による支配地域拡大がロシア軍の基本戦術だが、方針を維持できるのか疑われはじた。

戦争の行方が定まったわけではない。ロシアもFPVドローンを運用している。技術的にウクライナと同様の戦術が取れないわけではない。しかし、これまでの主力兵器の運用に大きな変化が生じたのは確たる事実で、ロシアとウクライナの戦争はドロー戦争の様相を呈している。

1 コメント:

さんのコメント...

火砲は部分的にですが地位が向上した面もあるかと。
長距離砲撃の際、民製レベルのドローンであっても正確な弾着観測が容易になったからで、革命的と言われています。
何だかんだドローンとは打撃力の格が違いますし、砲弾は迎撃され得ないものなので。
ウクライナ軍とロシア軍は互いにドローンを駆使して猛烈な砲撃戦を演じた段階があったのですが、単純な火力で優るロシア軍が一時優勢だったのも、火砲の有用性が向上したためです。

ただ、今は戦線が膠着しているので、ウクライナ軍がロシア軍の火砲や輜重兵を執拗に潰しまわって火力を削いでいるという感じですかね。
一番ヤバいのは高価な地対空ミサイルで、今までは後方で隠れていれば良かったのですが、ドローンで簡単に見つかって破壊されるので、使い方が難しくなっています。

記事の通り、戦車も難儀な存在になってしまいました。ロシア軍やウクライナ軍の動きを見ていると、ドローンに狙われないようにやや後方で動き回りつつ、こちらもドローンを飛ばして観測しながら戦車砲で砲撃するという使い方のようです。
歩兵と一緒に最前線を突破するという本来の華々しい姿ではありませんね。

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