2026年5月7日木曜日

NENENENE@研究さんの「女子枠」批判論文の日下田(2024)の紹介は微妙だが僅かにハルシネーション

NENENENE@研究こと國武くにたけ悠人ゆうと氏の女子枠批判論文Kunitake (2025)の日下田 (2024)*1の紹介が微妙だが僅かにハルシネーションになっているので指摘したい。ついでに日下田(2024)自体にある問題点も説明する。

日下田 (2024)は、計量分析を用いて、一定以下の家計所得の大学進学予定者において、私立大学に自宅外通学する意思のない生徒は理工系進学を希望しないことを示した論文だ。私立大学に自宅外通学する意思がないのは所得制約が厳しいためだと解釈している。計量分析の結果と解釈に乖離があるのに注意して欲しい。

Kunitake (2025)の紹介を読んでみよう。

Based on the National Institute for Educational Policy Research project study “High School Students’ Advancement Trends in Higher Education (FY2020–FY2022),” Higeta (2024) applied causal inference to show that low-income third-year high school students (in Japan, the final year before university) who wish to pursue higher education are influenced by incentives to minimize their educational expenses, even though financial support systems such as low-interest loans and scholarships are available. Specifically, they follow a decision sequence that excludes “attending a private university while living away from home,” choosing from the remaining possible faculties or departments instead. As a result, their options become narrower, which not only lowers their overall advancement rate but also makes it more difficult to choose STEM fields. (拙訳:国立教育政策研究所の令和2年度〜令和4年度プロジェクト研究「高校生の高等教育進学動向に関する調査研究」に基づき、日下田(2024)は次を示すために因果推論を用いた。進学を希望する低所得高校3年生は、低利子の教育ローンや奨学金などの支援制度が利用できるとしても、教育費を最小限化するインセンティブに影響される。具体的には、「自宅外通学で私立大学に通う」という選択肢を排除した上で、残りの可能な学部や学科から選択するという意思決定過程を辿る。その結果、選択肢が狭まり、全体の進学率が低下するだけでなく、理工系分野の選択もより困難になっている。)

日下田 (2024)が分析発見したことと、解釈の前提として採用したことと、発見と前提を用いて解釈したことを全部ひっくりめて因果推論で示そうとした(causal inference to show)と書いている。こういうときはですね、主張している(insist)を使うべき。insistだったら、確かに主張しているから問題ない。

ところで日下田(2024)の計量分析は危ういところがある。紀要論文なので諸般の都合で本気だせなかった*2だけな気もするが、

  1. 予算制約によって私立大学に自宅外通学をする意思が変わるとし、他の要因を考慮せずに解釈しているが、それを直接示す推定を行っていない。つまり、計量分析は5.2節の議論をサポートできていない。

    外生変数に家計所得がない。それに明らかに相関する変数もない。「私立大学に自宅外通学」回避ダミーを所得の代理変数として解釈することはできない。自宅外通学を避けている生徒とそのまま解釈しない場合は、外生変数である地方ダミー、女子ダミー、中3成績を用いて解釈する必要があった。

    地方ダミー、女子ダミー、中3成績は、自宅外通学の意思の説明変数としては悪くない。下宿や一人暮らしを避ける理由は様々だ。やる気がなくて下宿する気力がない生徒もいるであろうし、女子で保護者が自宅外通学を嫌がるケースもある。首都圏にいれば、男子も下宿や一人暮らしを避ける。加えて所得があればと言うところである。

  2. 操作変数法の前提が満たされていない可能性がある。地方で理工系が人気と言うような事はないと仮定されているが、進学状況を見ると地方では理工系が人気である*3。家計所得を操作変数にした方が良かったかも知れない。

解釈が変わるような話ではないが、二値変数に対する操作変数法は、最近は制御関数法(CFM)/二段階残差算入(2SRI)を用いることが流行っている。二段階最小二乗法(TLS)と異なり、ロジットモデルなどと組み合わせることができる。

*1日下田 (2024) 「強い資金制約のもとで回避される理系進路選択 ― 大学進学予定(希望)かつ低所得層のサンプルに操作変数法を適用した因果推論 ―

*2大学から書けと言われるが、他で業績カウントしてもらえないという不都合が起きるときがある。学術論文に投稿を狙っているネタは紀要には載せないのだ。

*3女子生徒等の理工系分野への進路選択における地域性についての調査研究」の図表13大学入学者に占める理工系分野入学者の割合(都道府県別・男女計・令和3年度)を参照した。

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