2014年11月26日水曜日

職業訓練の前に読み書き算数

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大学改革に関連して、「OECDの職業大学論」で濱口氏が経済協力開発機構の職業訓練のレポートを紹介している。職業大学と言うより、専門学校と表現した方が日本人にはイメージしやすい気がするが、欧米の教育事情が垣間見れて、ある意味興味深い。

レポートの内容は、必要とされる技能が高度化しており、職業訓練で得られる技能が時代遅れで労働市場で通用しないときもあるので、教育現場、実業界、労働組合が協力して職業訓練制度を改善していくべきと言うものだ。期待される政策効果は明確には書いていないのだが、労働生産性の向上による待遇の向上と就業率の向上が狙いのようだ*1

2014年11月25日火曜日

あらゆる政権の経済運営を批判する前に

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嫌いな人から見ると、安倍政権でも、野田政権でも、小泉政権でも、最低な経済政策をしていた言う事になりがちだ。政党間で言い合うのは仕方が無いのかも知れないが、関係の無い人は数字を確認した方が良いと思う。

1995年からの就業者一人あたり実質GDPと完全失業率をプロットし、政権ごとに区切りをつけてみた。少し見づらいかも知れないが、クリックすると拡大ができる。皆さんでこれを加味しつつ実績評価をして欲しい。

2014年11月19日水曜日

雇用はどの程度の遅れてくる指標?

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インターネット界隈では雇用は景気変動から遅れて変化すると言われている。確かに内閣府でも完全失業率は遅行指標に分類している*1。しかし、早い遅いは比較の問題で、ここ数日話題になっていた四半期GDPと比較して早いかは、比較してみる必要があるだろう。過去の四半期GDPと完全失業率のデータをかき集めてきて、時系列分析的にどちらがどちらに影響しているかを分析してみた。その結果からは、四半期GDPが動くと、すぐに雇用に影響が出てきて、1年以内に収束することが分かった。四半期GDPは速報値でも、四半期の最初からは4ヶ月、最後からは1ヶ月のラグがあるため、四半期GDPが公開されたときには、雇用への影響は既に出ていることになる。

2014年11月18日火曜日

2014年7-9月期GDP速報値は大きな景気後退を示していない

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各所で話題になっている2014年第3四半期GDP速報値だが、中身を見ていくとそんなに悪い数字ではなかったようだ。

二期連続のマイナス成長は良い数字では無いのだが、民間在庫品増加の寄与度-0.6が大きいため、在庫調整が進んだ結果だと言えるからだ。4-6月期にGDP比で1.2%ほど民間在庫品増加が記録されていたのだが、増税前の在庫圧縮と7-9月期の在庫処分で調整が完了していれば、10-12月期はプラス成長に戻ることになる。そもそも全体の-0.4と言う数字は2013年10-12月期と同じであり、大きな景気後退ではない。

2014年11月14日金曜日

あるマルクス経済学者のプロパガンダ(12)

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マルクス経済学者の松尾匡氏の連載『リスク・責任・決定、そして自由!』の新記事『旧リベラル派の「社会契約」という「ゴマカシ」』が出ていた。本題は著作の宣伝な気もするが、社会保障を正当化する哲学的議論も紹介している。小うるさい哲学者と厚生経済学者が待ち構えている倫理の問題に踏み込んでいるのだが、幾つか大丈夫なのか疑問に思う所がある。ロールズの議論が理解されているのか疑問だし、規範的な議論を実証的に批判してしまっているし、「社会契約」と言う単語に固執しすぎているように思える*1。この辺の議論は平成24年版 厚生労働白書の第1部第2章に分かりやすい解説が書いてあるのだが、それを参考にしつつ問題点を説明したい。

景気悪化で消費増税を延期しますが、景気回復で法人税が増えます

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景気の悪化を受けて、消費税率10%への引き上げを1年半ほど延期することが政府内部で検討されていると報道されている(Reuters)。一方で、景気の回復を受けて、法人税が大幅に増えると報道されている(Reuters)。政策を議論する前提である景気判断が、どうなっているのか良く分からない。景気は悪化しているのであろうか、回復しているのであろうか。

2014年11月12日水曜日

「世界の経営学者はいま何を考えているのか」でイマドキの経営学の雰囲気を掴む

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気づくと早稲田大学に移籍していた経営学者でついったらー*1の入山章栄氏の「世界の経営学者はいま何を考えているのか」を拝読した。最近の経営学のトレンドを紹介して、ドラッカーあたりの居酒屋談義を真に受ける人を減らそう、もしくは経営学者が真面目に仕事をしている事を世に示そうと言う気概に溢れており、最近の研究成果も色々と紹介している良書だ。日本語も平易だし経営学に興味がある高校生や大学生が読むのに適していると思うが、関連分野の経済学徒も面白く読めると思う。特に産業組織論などに興味がある院生は、短時間で大きなインプットが期待できる。

2014年11月10日月曜日

クローニー・キャピタリズムと言う用語は適切に使いましょう

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NPO法人代表・駒崎弘樹氏の「子育て支援の財源が消費税に紐づいているため、増税に賛成」と言う発言に対して、稲葉振一郎氏がクローニーキャピタリズムと批評したところ、その言い方は侮蔑表現でケシカランと濱口氏が怒っている。しかし態度云々以前に、この縁故資本主義と言う言葉はもっと慎重に扱う必要がある。ある団体の代表者が、ある政策の支持や不支持を表明しても、全くクローニー・キャピタリズムにならないから。

2014年11月9日日曜日

終身雇用制度の発生時期と、専業主婦というロールモデルについて

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労働問題の専門家の濱口氏がツッコミそうな内容ではあるけれども、人事コンサルタントの城繁幸氏が「専業主婦も終身雇用も割と最近の流行りもの」と言うエッセイで終身雇用というシステムの発生について説明しているのだが、問題点を指摘したい。タイトルの部分はともかく、本文の細部に問題がある。城氏がいた頃の大学はレジャーランドで、何かを調べてから議論することを教わらなかったのであろうか。

2014年11月8日土曜日

日本銀行から見たマクロ金融政策を語る本

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第2次安倍内閣の経済政策“アベノミクス”の第一弾として黒田日銀総裁が誕生し、黒田バズーカこと異次元緩和が行なわれて世間の注目を浴びているマクロ金融政策だが、各所から論評されてはいるものの、中央銀行の視点を良く説明している一般書はほとんど無いと思う。そのため少なく無い誤解が過去の、そして現在の日本銀行に向けられており、中には憤慨している人すらいるようだ。そういう人は、日銀出身で京大で教鞭をとる翁邦雄氏の『日本銀行』を読むべきだと思う。日銀も無責任にマクロ金融政策を展開しているわけではなく、長い金融史で培われた心配事があるわけで、この本を読めばそう世の中単純ではないと分かるはずだ。

2014年11月5日水曜日

安易に民族やナショナリズムを語るのがまずい事が分かる本

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政治学や社会学の単語で濫用されているものと言えば、民族とナショナリズムだと思う。

民族は何をもって定義すべきかが明確でなく、血縁、言語、宗教、習慣などのエスニシティで分類するわけだが、時と場合によってどのエスニシティを用いるかは変わっていくし、そもそもエスニシティも時代とともに変化し形成されていく側面がある。

ナショナリズムも、複数の民族を包容したネイションの国民のものなのか、一つの民族の利害を代弁したネイションの国民のものかで性質が異なるし、歴史的にその位置づけも変化してきた。だからナショナリズムとリベラルを対立軸として捉えたりすると、おかしい事になる。