2014年11月18日火曜日

2014年7-9月期GDP速報値は大きな景気後退を示していない

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各所で話題になっている2014年第3四半期GDP速報値だが、中身を見ていくとそんなに悪い数字ではなかったようだ。

二期連続のマイナス成長は良い数字では無いのだが、民間在庫品増加の寄与度-0.6が大きいため、在庫調整が進んだ結果だと言えるからだ。4-6月期にGDP比で1.2%ほど民間在庫品増加が記録されていたのだが、増税前の在庫圧縮と7-9月期の在庫処分で調整が完了していれば、10-12月期はプラス成長に戻ることになる。そもそも全体の-0.4と言う数字は2013年10-12月期と同じであり、大きな景気後退ではない。

良いニュースもあって、『[2]雇用者報酬の動向』を見ると概ね増加傾向になっている。これは雇用者数が順調に増加している事を反映しているのだと思う。なお、雇用者数を見ると1997年は上下しているのだが、2014年は今までは順調に増加している*1ので、増税ショックが人々の予想外と言うほどでも無いようだ。

悪いニュースもあって、民間住宅投資が意外な動きをしており、二期連続の大幅なマイナス成長となった。1997年7-9月期は横ばい(+0.04)だったので、今回の増税ショックの特徴になると思う。もっとも1997年10-12月期からは3期連続で大幅に減少した(-7.71、-5.99、-0.72)。消費支出と企業設備投資の回復も強いものではない。

消費税有識者会合が来年秋の税率10%化に関して『消費増税、マイナス成長でも「予定通りに」多数』だったのは概ね妥当に思える。しかし、附則18条の「経済状況を好転させることを条件」とする景気弾力条項を考えると、増税延期で誰かが公約違反として責任を問われることは無いであろう。

ところで欧州では段階的に消費税にあたる付加価値税(VAT)の税率は引き上げられて来ている*2のだが、それで長期の不況になったと言う報道は聞かない。日本でも社会保険料の上昇の方が額は大きいはずだが、消費税率ほど論議も呼ばない。数ポイントの引き上げで右往左往する必要は無いと思う。実は最終的には税率30%超が必要と言われているのだが、本当に消費税に依存した財政構造にしていいかの方を議論すべきでは無いであろうか。

*1失業率は3.5%前後で同じ水準だが、雇用者数を見ると1997年は横ばいである一方、2014年は増加している。

*2国立国会図書館調査及び立法考査局の『諸外国の付加価値税 諸外国の付加価値税(2008年版)』に諸外国の税率変化などの記述がある。

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