NPO法人代表・駒崎弘樹氏の「子育て支援の財源が消費税に紐づいているため、増税に賛成」と言う発言に対して、稲葉振一郎氏がクローニーキャピタリズムと批評したところ、その言い方は侮蔑表現でケシカランと濱口氏が怒っている。しかし態度云々以前に、この縁故資本主義と言う言葉はもっと慎重に扱う必要がある。ある団体の代表者が、ある政策の支持や不支持を表明しても、全くクローニー・キャピタリズムにならないから。
もともとはアジア危機で注目された用語なのだが、主に政府権力者と企業の結託を批判する目的で使われてきた。フィリピンのマルコス政権が華人系企業を優遇していた事や、インドネシアのスハルト大統領の息子が大企業の重役になっていたりした事をイメージすればいい。また、上場企業などにおいて、企業統治が不透明で創業者家族の影響力が強く、外部投資家が企業経営から疎外されたり*1、縁故が無いと商談や就職や出世ができない事も入る。そう整理された単語でもないが、縁故が理由で組織の目的と合致しない行動や人事が観察されれば、クローニー・キャピタリズムと批判できる。
子育て支援が拡充されれば、駒崎氏のNPO団体の活動にプラスなのは間違い無い。しかし、代表する団体の目的と照らし合わせて、特定の政策に関して支持や不支持を表明するのは、自然な行為だ。関税や補助金の撤廃に反対する生産者団体を見て、縁故資本主義だと批判する人はいないであろう*2。元財務官僚やその家族が駒崎氏のNPO団体に多数在籍していて、それが理由で駒崎氏のNPO団体に有利な政府政策が取られれば話は別であろうが、そんな事があるのであろうか?
だから用語の問題で、駒崎氏のケースに関してはクローニー・キャピタリズムではなくて、ステークホルダー民主主義と形容するほうが適切に思う。マクロ経済政策の議論で野崎氏の認識を批判することも、特定団体の利益だけを代弁するようなステークホルダー民主主義は抑制すべきと言う議論もできるが、クローニー・キャピタリズムだと形容するのは、今までのこの用語の使われ方を考えるに無理がある。なおクローニーをOxford dictionariesで引くと、よく軽蔑的(derogatory)な表現として使われると注釈にあるので、上品な感じの単語ではないことも知っておいた方が良い。
*2もちろん生産者団体に日常業務の役に立たない多数の元官僚や国会議員の親類が存在していて、政府が生産者団体に利益がある施策を打てば、クローニー・キャピタリズムと批判されうる。
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