2023年2月27日月曜日

買春客だけを罰し売春婦は罰さない方式に変えた後のスウェーデンのセックスワーク事情

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スウェーデンは、1999年に買春規制を、買春客に刑罰を与える一方で、売春婦は罰さない方式に変えた。東欧などから組織的に売春婦が流入するようになり、その中に人身売買取引の犠牲者が含まれていると危惧されるようになったのが、政策変更の一つの大きな要因だ*1。犯罪組織を潰すのは切りがないが、売春需要をなくせば人身売買取引を行なう誘因もなくなると言う発想。同様の問題が危惧されている欧州を中心に、国際的な広がりを見せている。

2023年2月25日土曜日

買春客だけを罰し売春婦は罰さないスウェーデン方式でも、売春婦が問題顧客を警察に通報しない理由

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日本の現行法では、売春は罰則のある違法行為で、買春は罰則のない違法行為なのだが、NPO法人ぱっぷす理事長が「買春した側を犯罪にし、性を売る側を非犯罪化にしてほしい」と言い出し、スウェーデン方式の是非が議論されている。しかし、想像力を欠いたオモシロ議論が展開されてしまっている。

ネット論客手嶋海嶺氏の以下の議論*1を見てみよう。

2023年2月23日木曜日

産経新聞とネトウヨの皆さん、論文が撤回されなかったことは、論文の主張が認められたことを意味しないから!

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産経新聞のコラムが、従軍慰安婦問題に関するラムザイヤー論文が撤回されなかったことに関して、「厳正な審査の結果、真実と認められた」と主張し*1、ネトウヨの皆さんがそれを請け売りして沸き立っている。しかし撤回に値するような瑕疵(i.e. 捏造や剽窃)などが無かったと言うだけで、論文の主張の真実性が認められたわけではない*2

2023年2月19日日曜日

憲法解釈から同性婚の是非を考える必要は無いよ

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内閣総理大臣前秘書官の暴言をきっかけに、当事者間では双方に扶養義務を負い資産を共有する性行為の独占契約で、税制上の優遇措置が与えられる婚姻を、同性愛者間にも認めるべきかが議論されている。

世論調査では有権者の多くは容認すべきと考えている*1が、保守的な考えの人々も少なくない。憲法学者の石埼学氏が、憲法や関連法は生殖や育児を保護する目的で男女に婚姻に保護を与えており、同性婚に国家が保護すべき利益が見当たらないと主張し*2、生殖が問題であれば妊娠してから結婚を認めるように制度改正すべき*3だがそうなっていない、同性愛者の夫婦も養子をとって育児には貢献できる、生殖保護ではなく明治憲法の家父長制を否定するのが憲法条文の意図*4、生命科学の発展で同性愛者の夫婦も実子をつくれる可能性が出てきていると批判されている。

2023年2月15日水曜日

理工系ラボの皆さんにお勧めしたい統計手法

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理工系のラボの統計解析では実験計画をどうするかの方が成果を大きく左右するためか、出てきたデータの統計解析はよく考えずに慣習に沿っている面がある。国内外の理工系ラボの向けの実践ガイドラインチートペーパーを見ると、古臭く問題含みの方法を説明していることもある。

2023年2月14日火曜日

信頼区間を説明する前に知っておくべき変態的な例

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推定された信頼区間を母集団のパラメーターが95%の確率で入っている区間と説明するなんちゃって解説はよくされており、昨日も中堅私大のマーケティング分野の大学教員がウェブ媒体でそのような説明をしていた。しかし、観測値から実際に計算された信頼区間は、母集団のパラメーターがある確率で含まれる区間ではない。

ややこしいので世界中で勘違いされている信頼区間だが*1、理解を深めるための変態的な例であるWasserman (2010)の6.14 Exampleを紹介したい。Berger and Wolpert (1984)が元ネタと書いてあるので、恐らく語り継がれている有名な例。

2023年2月9日木曜日

マン=ホイットニーのU検定(ウィルコクソンの順位和検定)と中央値

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t検定やF検定を使う事が多いので、マン=ホイットニーのU検定(ウィルコクソンの順位和検定)を使った事は無かったのだが、心理学や生物学方面ではよく使われているようだ。しかしこの検定、世界的に定義や性質が誤解されながら運用されてきている。

昨日も、あるU検定の説明は誤りだと言う指摘に続けて、不正確な説明がされるのを見てしまった*1

2023年2月1日水曜日

あなたの中にあるペドフィリア蔑視

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ロリ絵好きではなくて、二次性徴前の児童と性行為がしたくて仕方が無い精神医学用語のさすペドフィリアという属性は、犯罪因子だから蔑視しておいた方がよいと主張すると*1、罪を犯す前に差別するのはよくないと言う批判をよくされる*2。しかし、批判者の皆さんもペドフィリアを蔑視している可能性は高い。

手嶋海嶺さん、Levenson, Grady and Morin (2019)は、まだ児童性的虐待をおこしていないペドフィリアがセラピストにケアを受けるのを邪魔するな論文ですよ

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「誰がペドフィリアか分からなければ、(幾らペドフィリア蔑視をしても)ペドフィリアである人に社会的スティグマはつけられない」と言っていたら、手嶋海嶺氏がLevenson, Grady and Morin (2019)を参照しつつ「イントロで大体の知見まとめてくれてるけど、ペドフィリアの社会的スティグマは個人特定されなくても作用するから、まあイントロだけでも読んでよ」と反論してきたので、拝読してみたのだが、少なくともイントロにはそんな事は書いていなかった*1。後の方に関連しそうな議論はあったので、論文の概要を紹介してから、考察してみたい。