アフリカのセネガルでは、水っぽい腐りやすいたまねぎばかりが生産されており、高関税にも関わらず輸入代替が進んでいない。農家の生産技術が低いのが原因ではないかと思う人々が多いであろうが、ランダム化比較実験(RCT)を行なったところ、そうではない事が確認されたと言う話が紹介されていた*1。たまねぎが容量で卸されており、重量や品質が考慮されていなかったのが原因だそうだ。
2018年3月31日土曜日
北朝鮮の核・ミサイル開発問題で置いてきぼりにされる日本
北朝鮮の核・ミサイル開発問題に関する協議が北朝鮮・韓国・米国・中国で進んでおり、日本が外されていると言う記事が出ていた*1。金正恩氏の訪中後、中国は米国と韓国には外交ルートで連絡を入れたが、日本には何も無かったそうだ。また、米韓は金正恩と会談を行なう予定があるが、日本はそうではなく外交活動が低調であると指摘されている。フィンランドで行なわれていると言う米韓朝の非核化協議に、中露もだが、日本は参加しておらず*2、この問題に関する発言力の低さが目立って来ている。
2018年3月27日火曜日
佐川前理財局長の証言で注意しないといけないところ
森友学園問題に関して国会に提出された決裁書が改ざんされていた問題に関して、佐川前理財局長の証人喚問が行なわれた*1。「刑事訴追のおそれがありますので、そこの答弁は控えさせて頂きたいと思います」と議院証言法4条1項を盾にした証言拒否の連発の中、総理や官邸、その他の政治家の指示ではない事を断言する興味深いものとなった。ところで、これで安倍総理の関与が否定されたと喜んでいる人々がいるのだが、そうは簡単にいかない。
奈良の坊さんから見た『応仁の乱』
2016年10月に刊行されてから、歴史の本としては異例のセールスを記録している呉座勇一『応仁の乱』をいまさら読んでみた。これだけ売れていると、中で書かれていることがネット界隈の思想に影響力を持ち出しうるので、読まねばなるまい*1。
呉座氏、テレビ番組では応仁の乱は畠山義就の視点で見ると分かりやすいと言っていた*2が、本書では興福寺のトップ(別当)の経覚と尋尊の日記(経覚私要鈔、尋尊大僧正記)を中心に紐解かれている。お寺と言っても、武士を従えて荘園経営を行なう弱小大名風の立ち位置にあり、藤原氏と関係が深いことから京都との繋がりが強くある存在。
2018年3月26日月曜日
指導者個人に媚を売って親切を期待する安倍外交の成果
安倍総理がトランプ大統領に名指しで腹黒い友人だと非難される事態になっている*1。個人的関係に関わらず通商問題で強硬姿勢をとることは予想されたが、大統領就任前にいち早く会談を申し入れ来日時には盛大に歓待を行なったのに、あえて侮辱されるとは思っていなかったであろう。どうもトランプ氏は安倍氏の媚の売り方が気に入らなかったか、安倍総理をちょろい人物だと理解したようだ*2。
2018年3月23日金曜日
経済学を使うと人間は綺麗な空気で生活したいと言うのも大仕事
自明に思えることでも経済学者にかかると未知の領域になりがちで、その傾向は年々と高まっている。他の条件が同じならば、大気汚染を避けて生活したいと言うのも、大気汚染と転出入率を突き合せないと納得されないようだ。それぐらいの突合せならばと思うかも知れないが、雇用機会など他の要素がある上に、人間の活動が大気汚染に影響するので、大気汚染が内生変数になってしまい、なかなか正しい推定が行なえない。
2018年3月21日水曜日
ギガジンの説明するt検定の良い所がちょっとおかしい件
人気ブログGigazineの『ギネスビールの醸造所が統計学的手法の一つ「t検定」を生み出した』の中のt検定の説明が気になった。学部の統計学の教科書に書いてあるようなことなのだが、メモしておきたい。t分布が発明される前に正規分布があった事を忘れているので、妙になっているところがある。
2018年3月20日火曜日
森友学園問題は財務省の自爆テロ説について
元財務官僚の高橋洋一氏が、森友学園問題は財務省の倒閣運動かも知れないと言い出した。それに感化されたのか、自民党の和田政宗議員は参院予算委員会集中審議で、「増税派だからアベノミクスを潰すために安倍晋三政権をおとしめるため、意図的に変な答弁してるのでないか」と太田充理財局長を問いただすに至った。考えの足りなさを世間にアピールしていて興味深い。
2018年3月19日月曜日
2018年3月18日日曜日
位相幾何学用語に慣れる『トポロジー:やわらかい幾何学』
大学の一般教養で習う数学は解析学と線形代数なので位相幾何学には縁遠い人が多いと思うが、人文系で用語が濫用される数学の分野と言えばトポロジーなので、ネット界隈で現代思想を標榜する論者を陰で笑うのには有用な知識だ。それどころか真面目にホモロジー群まで理解すると、ブラウアーの不動点定理と言う広く応用されている定理まで行き着ける*1。数物系の世界なのでどうやって学ぶかが難点なのだが、『トポロジー:やわらかい幾何学』と言う古めの本を手にとってみた。
2018年3月15日木曜日
極東ブログの政治バイアス:野田中央公園の補助金・交付金への誤認識
事実が明らかになってから半年以上経つのに、安倍政権擁護のためにオルタナティブ・ファクトをばら撒いているブログが・・・とまでは言わないが、極東ブログの中の人の情報がアップデートされていないので指摘したい。リアリストを標榜する人は与党への非難を否定的に捉えがちだが、情報収集を怠るのはリアリストとは言えない。
2018年3月13日火曜日
森友学園問題の事件の構図を断定する前に
昨年末の会計検査院の報告と、ここ一週間の決裁文書改竄の顕在化で、理財局の官僚が森友学園に国有地を根拠の弱い価格で売却し、しかも関連文書を積極的に廃棄するばかりではなく、文書改竄でその事実を誤魔化そうとしていた事が明らかになった。麻生財務相の責任を問う声や、安倍総理などの関与を疑う声が上がっているのだが、事件の構図を描くにはまだ早いことに注意しよう。
2018年3月11日日曜日
北朝鮮の態度軟化における日本だけが蚊帳の外、安倍外交は失敗した論の問題点
北朝鮮が非核化を含めた譲歩を韓国経由で米国に示した事に関して、北朝鮮の態度軟化における日本だけが蚊帳の外、安倍外交は失敗した論を唱える人が多い。外交について安倍政権が過剰にアピールしている反動なのか、アンチの人から安倍晋三の人から唱えられるのだが、はぶにもされていないし、強硬路線から北朝鮮に情報を迫ると言う外交シナリオに沿っているから問題がある。
2018年3月10日土曜日
メディアと野党が近畿財務局職員を自殺に追い込んだわけではない
不幸にもノンキャリアの近畿財務局職員が首を吊って亡くなった。この報道を受けて、元官僚の宇佐美典也氏が、ジャーナリストや野党政治家が根拠薄弱なスキャンダルもどきの森友学園問題で財務官僚を追求したので、同職員が自殺に追い込まれたと主張し*1、追求側はこれで満足なのかと怒っている*2。元官僚だからか情が入るようだが、色々と話が飛躍しているので指摘したい。
2018年3月9日金曜日
森友学園問題の決裁文書騒動からすぐに得られる教訓
行政文書は管理番号を振って、独立組織が保存しよう。
朝日新聞が森友学園問題の決裁文書が書き換えられた可能性があると報じて国会が空転している*1。別の決済文書と誤認しているのではないかと言う指摘もある*2ので最終的にどうなるかは分からないが、財務省の歯切れの悪さは文書管理技術として問題だ。
2018年3月8日木曜日
北朝鮮の融和姿勢で、対北朝鮮国連制裁の実効力強化が難しくなる
北朝鮮が核放棄を含めた対話姿勢を打ち出したことで、ある種の安堵感が広がっている一方、時間稼ぎのための方便だと非難する声も多い。信憑性の是非もそうなのだが、これによって主要国は急いで方針の修正を迫られることになった。前回の対北朝鮮国連追加制裁決議は2017年12月22日。90日間の観察期間を置いて今月、効果が薄いとされれば、さらなる追加制裁が行なわれることになる。
2018年3月6日火曜日
副作用があったぐらいでは、HPVワクチン接種は否定されない
ネット界隈のHPVワクチン接種推奨派と否定派で、副作用があったか否かでHPVワクチンの是非を決めようと言い争っている。これ、誤まった論点だから。
副作用は少なく小さいほうが望ましいが、ゼロで無ければいけない事もない。病気を防ぐことの利益がずっと大きければ、副作用があってもワクチン接種は肯定される。古いタイプの天然痘ワクチンは低い確率だが重い副作用が生じることが知られていたが、天然痘の感染力・罹患率・致命率そして、美容面の後遺障害などからワクチン接種は肯定されていた。
2018年3月5日月曜日
Fedの量的緩和は長期金利を1%ポイントも引き下げていない
ジェームズ・ハミルトン御大*1を含む経済学者が、従来研究だとFedの量的緩和(QE)は長期金利を1%ポイントほど引き下げたと言われていたのだが、イベントの範囲を広げ、分析期間を長く取って、ビジネス誌の解釈から市場期待との一致程度を考慮してイベント・スタディをやり直したところ、Fedの声明には持続的な効果がなく、市場期待を裏切る場合でも長期金利に大きな影響はなかったと主張している*2。中央銀行の景気対策としては、大規模資産購入(LSAPs)ではなく、やはり政策金利の操作の方が効果的だそうだ。
2018年3月4日日曜日
たばこの有害物質の量と心疾患
喫煙の害と言うと肺がんを思い浮かべる人が多いと思うが、心疾患の発症率を引き上げる事も知られている。喫煙者本人だけではなく、受動喫煙でもリスクは増える*1。
疫学研究では研究ごとに統計的有意性があったりなかったりする*2のだが、前向きコホートで喫煙者の配偶者を持つ非喫煙者の男女の心疾患が統計的に有意だと示した研究があり(Helsing et al. (1988))、有意性が無い研究よりも識別がしっかり出来ていそうだ。
2018年3月2日金曜日
ある医学雑誌で報告された加熱式たばこが排出するニコチンの量のイカサマ感
加熱式たばこ/電子式たばこの害悪については、有害性がよく研究されている燃焼式たばことの比較が手っ取り早い方法だ。たばこ会社は、有害物質の排出量が圧倒的に小さいとアピールしている*1。もちろん、利害関係者の出して来た数字をそのまま信じる必要はなく、有害性を訴える側の数字と付き合わせるべきであろう。権威のある医学雑誌に掲載されたある報告が、規制強化支持者に紹介されていたので中身を見たのだが、統計的にはトンデモであった。
2018年3月1日木曜日
子宮頸がん/HPVワクチン副作用に関する名古屋スタディの統計分析の問題点
速報が名古屋市のウェブサイトから消された事で話題になった子宮頸がん/HPVワクチン副作用に関する名古屋スタディの統計分析が、Papillomavirus Researchと言う学術雑誌に掲載された(Suzuki and Hosono (2018))。
論文掲載だけでは確定とは言えず、論文の粗を探し出し、他の研究とつき合わせて初めて科学的な結論が出てくるのだが、副作用が無いことが明らかにされたと調子にのっている人がそこそこいるので、この論文の粗を指摘しておきたい。