2018年3月6日火曜日

副作用があったぐらいでは、HPVワクチン接種は否定されない

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ネット界隈のHPVワクチン接種推奨派と否定派で、副作用があったか否かでHPVワクチンの是非を決めようと言い争っている。これ、誤まった論点だから。

副作用は少なく小さいほうが望ましいが、ゼロで無ければいけない事もない。病気を防ぐことの利益がずっと大きければ、副作用があってもワクチン接種は肯定される。古いタイプの天然痘ワクチンは低い確率だが重い副作用が生じることが知られていたが、天然痘の感染力・罹患率・致命率そして、美容面の後遺障害などからワクチン接種は肯定されていた。

HPVワクチンも副作用を認めても肯定できる*1。子宮頸がんの生涯罹患リスクは1%、累積死亡リスクは0.3%、HPVワクチンはこれらの確率を約1/3にしてくれると考えられる*2。過大見積もりになる報告ベースでのHPVワクチンの重篤な副作用は0.0069%*3だそうなので、よほど近視眼的でない限りは、損得勘定をしたらHPVワクチン接種の方が期待値で得になる。

疫学的にHPVワクチンの副作用の大きさを調べる論文は、だいたい過大見積もりを修正しようと言うものになる*4が、その結果はHPVワクチン接種の是非に影響しない*5。厚生労働省が積極的なワクチン接種を推奨するのに*5、HPVワクチンの副作用はありません宣言は要らない状況だし、粗雑な計量分析でHPVワクチンの副作用を否定しようとする作業はもっと要らない。

*1HPVワクチン接種推進をしている村中璃子氏は「接種後3か月時点でのギランバレー症候群の発症をのぞくすべての症状の発症率に有意差無し」「有意差のあったギランバレー症候群の発症率上昇リスクも10万例に1例程度と大変小さい」と、副作用の存在の可能性を認めた上で、効果量からHPVワクチン接種を肯定している(WEDGE Infinity)。

*2最新がん統計:[国立がん研究センター がん登録・統計],参照時は2013年の数字

*3鈴木(2017)「HPVワクチンに関する最近の動向」平成29年2月日本産婦人科医会記者懇談会 P.9「HPVワクチン(2剤合計)副反応報告の状況(医療機関・製造販売業者からの報告)」を参照。

*4報告されていないタイプの副作用を分析しだせば、話は変わってくる。

*5関連記事:国民に適切な情報提供ができるまでが長い子宮頸がんワクチン副作用問題

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