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2026年5月22日金曜日

アイヌは北海道の先住民族だよ

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愛国「右派」の動画配信者や政党政治家が、アイヌが北海道の先住民族であるのか疑いを表明している。しかしアイヌがヤマト(和人)から見て北海道の先住民族であることに、疑問を抱く余地は無い。

ヤマト王権の北海道進出は南部に限っても13世紀以降で、北海道全域に広げたのは19世紀だ*1。アイヌの人々はその前から北海道に住んでいた。言語と宗教などでアイヌはヤマトと異なる文化持ち、アイヌにはヤマトと異なる集団であるという自認があるので、独自の民族として認められる。日本政府はヤマト王権から継続した統治機構と言うことになっているので、日本政府から見てアイヌは北海道の先住民族だ。

2026年4月18日土曜日

IPv6は地味に普及している一方、IPv4は段々と機能しなくなっている

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IPv4と完全下位互換の「IPv8」ドラフト公開。IPv6は事実上失敗」という記事が話題になっていた。「IPv6は事実上失敗」は「IPv6の課題を克服」に書き直されたわけだが、IPv6に対する漠然とした失敗感を世間は感じているようだ。

実際にはIPv6はハードウェアとソフトウェアの面でほとんど準備完了しているし、既に多くのサービスで利用されていて、一般消費者の皆様も実際に使っている。IPv8が出てきたとしても、拡張されたネットワークアドレスを使うにはハードウェア(もしくはファームウェア)と(その他の)ソフトウェアの対応が必要で、IPv6が積み上げてきた30年間の普及の差を、急いで詰めないといけない。

2025年8月18日月曜日

日本人は一年に一度は、1928年6月の張作霖爆殺事件から1941年12月の真珠湾攻撃、あるいは1945年8月のポツダム宣言受諾までの歴史を振り返るべき

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石破総理が戦没者追悼の式辞で反省という言葉を使ったことで「保守」界隈が怒っているのだが、どうも国語的に問題がある。反省は、罪を認めて償うというよりは、過去の過ちから学ぶという意味に近い。日本保守党の百田尚樹代表が「今を生きる日本人がその罪を背負う必要はありません」と非難していたのだが、過去に学ぶと言う事は、罪を背負うと言うことではない。

2025年8月3日日曜日

NENENENE@研究さんにも知って欲しい日本のDEI政策の原点 — 労働基準法(1947年–),障害者雇用促進法(1960年–),勤労婦人福祉法(1972年)

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NENENENE@研究こと國武くにたけ悠人ゆうと氏の女子枠批判論文Kunitake (2025)が、日本の歴史に疎い外国の人々を日本のDEI政策についてミスリードする内容になっているので指摘したい。

"affirmative action measures adopted as DEI initiatives in Japan are disproportionately focused on gender, primarily on supporting women(拙訳:日本のDEIイニシアティブとして採用されたアファーマティブアクションは、主に女性を支援することで、過度にジェンダー格差を重視している)"と言うNENENENE@研究氏の主張はそうかも知れないが、他のDEI政策への言及が無い。"2.1. The origin and scope of "DEI" in Japan(日本の"DEI"の原点と範囲)"の節は、2006年の女性研究者支援や女性研究者増加策からはじまり、2015年の女性活躍推進法で終わる。

2025年4月24日木曜日

奴隷制には大昔から強い批判がありまして

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反リベラル界隈から「奴隷制はある時代まで当然視されていたが、しかし現代では悪だとされている。」と言う主張が流れてきたのだが、問題があるので指摘したい。古来から奴隷制度は存在しているが、道徳的な正当性については古くから疑念の目で見られていた。

奴隷制度に対する明確な批判は、1世紀には、初期のキリスト教指導者たちから発せられていた。神の下に平等であれば自由民と奴隷という区別はおかしいわけで、理屈は明快で強固だ。長い間、奴隷制廃止ではなく奴隷解放を目指したり、異端や異教徒は例外にしていたりと御都合主義な面もあったが*1、キリスト教の指導者たちは、原則として奴隷制に批判的で、その声を徐々に強めてきた。1680年頃からはじまったアメリカの奴隷制度にも、カトリックと北部のプロテスタントは反対していた。

2025年4月20日日曜日

安土桃山時代に日本にいた黒人の英雄化は、DEIともポリコレともウォークとも関係ないよ

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弥助は安土桃山時代に日本にいた黒人で、宣教師の従者もしくは奴隷から織田信長の郎党になった人物だ。史料は乏しく、詳しいことはほとんど分かっていない。

1990年代からNHK大河ドラマやマンガなどのキャラクターとして登場することがあり、歴史ファンには地味に人気だ。2010年頃から欧米での知名度もあがり、2019年にはロックリー本でデタラメに紹介された*1

その結果、国外で熱心な弥助ファンが登場し、弥助は英雄的な働きをした侍だと信じており、(具体例を確認できていないのだが)そうではないと否定されると黒人蔑視だと罵ってくるそうだ。弥助ファンの暴走。

2025年4月14日月曜日

アメリカの製造業者の雇用が激減したのは共和党ブッシュ・ジュニア政権のときで、北米自由貿易協定に調印したのは共和党ブッシュ・シニア政権だよ

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アメリカの共和党支持者や民主党左派の間では、民主党主流派がウォーキズムに傾斜して製造業労働者を省みなくなったという物語が人気だ。

バイデン政権は製造業雇用の促進や労働争議の仲介などに熱心であったので事実に即しているとは言いがたいのだが、民主党から製造業労働者を引き剥がしたり、ウォーキズムを牽制したりするのに便利なナラティブなので繰り返されている。

2025年3月26日水曜日

家父長と共同体の対立事例 — 共同体主義の理解のために覚えておくべきこと

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リバタリアンであったはずのネット論客が、共同体主義を掲げて家父長制を推している。どちらも保守思想ではあるのだが、大きな相違があるので同時に推すのはやめて頂きたい。両立するとは限らない。歴史的には共同体と家父長が対立することもある。

日本の鎌倉後期から明治までの農村は*1、惣村と言う共同体が中心の社会であった。鎌倉後期からの土地の所有/支配構造の変化、治安悪化や灌漑など共同作業の拡大などにより、地縁による結合が促進され、狭い地域に密集して住居する惣村が形成された。経済・社会活動は村共同で行われるため、村の価値観が重要となり、村に貢献することが重視される、共同体主義の時代*2

2025年3月15日土曜日

コンテナ化技術(Docker, Kubernetes)の時代

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ウェブやデータサイエンス方面のソフトウェア構築では、気づくとコンテナ化ソフトウェアのDockerが必須技術のように言われており、コンテナオーケストレーションツールのKubernetesクバネテスがデータセンターの新たな基盤になったような話を見かけるようになった。コンテナ化技術の時代。

コンテナ化技術は、データセンターのクラウド化(IaaS)を可能にした仮想マシン技術とよく対比される。技術的には随分と異なる。仮想マシンはオペレーティング・システム(OS)にまるでハードウェアがあるかのように見せる技術だが、コンテナ化はOSの名前空間とプロセス管理をつかったアプリケーションの隔離である。しかし、コンテナ向きの仕事を、仮想マシンがしばらく担ってきた。

2025年2月9日日曜日

クリスマスは神への冒涜なので、祝ったら罰金

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トランプ大統領が反キリスト教的偏見を根絶すると言い出した*1ことに関連して、Merry Christmasはポリコレ違反の禁語、タブーだと言い出した自称在米アカウントがいた。キリスト教保守派の流しているあからさまなデマに引っかかっている。バイデン政権のときにホワイトハウスがMerry Christmas from the Biden-Harris Administration!とツイートしており、それに強い非難が起きたりもしていない。

2024年7月24日水曜日

アメリカの歴史学者によるロックリー本の書評

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めでたく制作会社に「アサシン クリード シャドウズ」の安土桃山時代の日本描写が歴史的に問題があることを認めさせることに成功した炎上騒動だが、その一因になったと黙される日本大学のトーマス・ロックリー氏の解雇を求める署名が起きるなど騒ぎは収まっていない。キャンセルカルチャーなのでやめるべき…と言うのはさておき、ロックリー本は欧米社会でどのような評価になっているのであろうか。

2024年7月12日金曜日

社会的強者はボイコットなどしなくても目的を達せられるので

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ボイコットで犠牲になるのは社会的弱者と言うような主張が𝕏/Twitterで反リベラル/アンフェのアカウントから流れていた。多数派が協力しないとボイコットは機能しないので、社会的弱者のための武器にはならないと言う考えのようだ。そんなことは全く無くないので指摘したい。

歴史的にはボイコットは弱者が強者に反抗する方法として生まれている。不在領主が派遣した横暴な土地差配人チャールズ・ボイコット大尉を、使用人と地元民が罷業と取引停止で抵抗して追い出した1880年の事件から取られた名称だ。現在では主に不買運動を指す言葉になっている。

2023年11月23日木曜日

縄文稲作は根拠となる土器の年代に疑念があるよ

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縄文時代後期にイネがあった傍証が見つかっていることから、日本の稲作は縄文時代にははじまっており、しかも華南の長江下流域から東シナ海を渡って北九州に伝来したという江南(直接ルート)説が、日韓問題に強い関心がある一方、考古学に関心が薄そうな人々の間で人気だ。最近は、稲作が日本から朝鮮半島に伝播したとまで言っている。

2023年2月23日木曜日

産経新聞とネトウヨの皆さん、論文が撤回されなかったことは、論文の主張が認められたことを意味しないから!

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産経新聞のコラムが、従軍慰安婦問題に関するラムザイヤー論文が撤回されなかったことに関して、「厳正な審査の結果、真実と認められた」と主張し*1、ネトウヨの皆さんがそれを請け売りして沸き立っている。しかし撤回に値するような瑕疵(i.e. 捏造や剽窃)などが無かったと言うだけで、論文の主張の真実性が認められたわけではない*2

2022年7月7日木曜日

第1次世界大戦中のドイツの飢餓「カブラの冬」は、低い食料自給率で起きたわけではない

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第1次世界大戦でドイツが飢餓に陥り、英国が食料確保に苦しんだことから、「第二次大戦後、ヨーロッパの国々は…作っても儲からない、安くて仕方ない小麦などの穀物をワンサカ作るようになった。」と言う話が枕になっている、「先進国の安い穀物が飢餓の素地をつくる」と言うエントリーが流れていた。誤った情報からおかしな議論が展開されている気がするので、気になったところを指摘していきたい。

2022年6月26日日曜日

レトロゲーム好きは読んでおきたい『一揆の原理』

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一揆はゲームのタイトルにもなるぐらいの人気の日本史用語だが、漠然と暴動ぐらいに捉えている人は多いと思う。マルクス史観に沿えば、階級闘争の一形態。しかし、それは誤解らしい。

呉座勇一『一揆の原理』によると、一揆は、仏ではなく神に訴える起請文で明文化することが多い、目的を共有する(身分制社会を前提とした)武士や僧侶も行う一味同心の契約で、デモ(強訴)やストライキ(逃散)と言った団体交渉に近く*1、体制転覆を狙った暴動ではなかったし、序列を定めない義兄弟の契りのような場合もあった。

2021年12月24日金曜日

古代から中世の日本史がよく分かるようになる『荘園 — 墾田永年私財法から応仁の乱まで』

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日本史の教科書は経済構造の説明が薄いので、ずっと奈良~平安~院政~鎌倉~室町時代の社会の変遷と言うか繋がりが謎だった。奈良時代までいたはずの豪族の皆様は平安時代以後、音沙汰がなく霧散してしまった気がするし、皇室や貴族の皆様は鎌倉時代以後は霞を食べて生きていた気がしてくる。支配層や合戦の記述は切り口が悪く、当時の社会が見えてこない。

2021年12月2日木曜日

平安時代の貴族が自力救済社会に生きていたことが分かる『殴り合う貴族たち』

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ぼちぼち話題だった『殴り合う貴族たち』をぼちぼち拝読した。

賢人右府の二つ名を持つ藤原実資さねすけさんの日記の記述などを元に藤原道長の頃の平安時代の貴族たちの乱暴狼藉を紹介する本で、貴族の名前が覚えられないので読み進まないことを除けば面白い。

日本史の教科書では平安時代の雰囲気が良く分からないのだが、政府設備だった羅城門跡の礎石を藤原道長さんがくすねたとか、強盗に服を奪われて放置された女官が凍死して犬の餌になってしまった(と言うことになった事件)などの逸話が補完してくれる。

2021年10月31日日曜日

租税貨幣論は古代日本の貨幣をよく説明しない

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税で貨幣を回収することが、貨幣価値を維持し、貨幣の流通を促進しており、何かの実物資産の本位制である必要も、支払手段の強制も必要がないと言う租税貨幣論*1が、古代日本の貨幣によく当てはまると言う話を見かけた。しかし、検討してみたのだが当てはまりは悪い。税と無関係に流通していた私鋳銭もあり、政府貨幣も絹布けんぷ麻布あさふとの納税時公定交換レートが通貨価値を定めており、支払手段の強制もされていた。

2021年10月14日木曜日

明治維新のドタバタ感が面白い『氏名の誕生 — 江戸時代の名前はなぜ消えたのか』

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尾脇秀和氏の『氏名の誕生 — 江戸時代の名前はなぜ消えたのか』が評判だったので拝読したみたのだが、中盤からツボにはまる面白さがあったので紹介したい。

本書は現在の日本人の名前(氏名)の構造がいつどのように定まったかを、江戸時代からの変遷を追いかけて説明する本だ。こう書くと歴史マニア向けっぽい感じがするのだが、一般の日本史学習者にとって本当は重要な教養であると同時に、開発途上国の行政改革の理解という意味でも重要な逸話の紹介になっている。