批評家のクリッツァー氏のエッセイにある一節に、文筆家の白饅頭こと御田寺圭氏がクリッツァー氏の議論の方が非生産的だと非難している。
クリッツァー氏の文で非難されている一節は以下だ。白饅頭氏を念頭に置いている気もするが、白饅頭氏だとは言及していないので、そんなに気にしなければ良いと思うのはさておき、ネット界隈で人気の反リベラルでアンフェのアカウントの皆さんが、往々にして非難や揶揄に留まった議論をしているのは確かだ*1。藁人形論法などの誤謬推理になっていることも多々ある*2。
インターネット上で話題になっている事件を、理論とデータをもとに社会科学的に分析。
批評家のクリッツァー氏のエッセイにある一節に、文筆家の白饅頭こと御田寺圭氏がクリッツァー氏の議論の方が非生産的だと非難している。
クリッツァー氏の文で非難されている一節は以下だ。白饅頭氏を念頭に置いている気もするが、白饅頭氏だとは言及していないので、そんなに気にしなければ良いと思うのはさておき、ネット界隈で人気の反リベラルでアンフェのアカウントの皆さんが、往々にして非難や揶揄に留まった議論をしているのは確かだ*1。藁人形論法などの誤謬推理になっていることも多々ある*2。
一般公開されていた『「社会正義」はいつも正しい: 人種、ジェンダー、アイデンティティにまつわる捏造のすべて』の巻末訳者解説が、出版社から「本文とあわせて読まれることを前提に書かれ(ていたので)本文と切り離した形でウェブ公開すること自体が不適切」*1編集者から「テキストが持ちうる具体的な個人への加害性にあまりに無自覚」だったとコメントが出されて、公開が停止された。
2022 FIFAワールドカップでは日本代表が3試合とも下馬評を覆し、優勝経験のある強豪国を2つ破って決勝トーナメントへの進出を決めた。日本の1位通過を予想した人は少数派ではないであろうか。オクスフォード大学の数学科有志?の数理モデルは、1位スペイン、2位ドイツ、3位日本、4位コスタリカで予想しており、まんまと外している*1。
2月24日のロシアのウクライナ全面侵攻開始から262日が経過したが、ロシア軍は
と言った戦略的目標(と想像される事項)の達成を次々と諦めているようだ。当然だが、目標変更は戦況を反映しており、今後のロシアの動向も戦況によって変わってくる。情勢を把握するためにロシア軍の被害状況の推移を確認してみたい。
戦争終結が遠のいた。
10月上旬には戦況から憶測が飛び、10月19日にはロシア軍司令官が可能性に言及していたヘルソン州ドニエプル川の右岸からの撤退だが、本当はどうしたいのかなと思っていたら、11月9日になってロシアのショイグ国防相が命令したと言及した*1。
統計解析で用いられるR言語から定型処理でHTMLやPDFのレポートを作成するツールR Markdownがぼちぼちと一部界隈で流行っている。
データセットの更新や追加、パラメーターの変更で数値や図表が変化することはよくあるのだが、レポートの関連箇所を手作業で書き替えていくのは、手間のかかる上に見落としなどが入りやすい雑用だ。
R Markdownでレポートを適切に書いておけば、データ更新をしたら一つの命令でレポートの再作成が可能になり、効率がぐっと良くなる*1。
人気マンガ『ゴールデンカムイ』の実写映画化のキャスティングで、アイヌ役を大和民族の俳優が演じることへの批判に対してネット界隈の表現の自由戦士の皆さんが反論をしているが、社会的な支配層が被差別集団の役を演じてはいけないと言う表面的なルールとして捉えるだけで、そのルールが予防しようとしている問題に目を向けていない。
データサイエンスブームもひと段落しつつあるこの頃であるが、統計解析や機械学習を行なうために、どのプログラミング言語を学習すべきかと言う質問はずっと頻出の質問だ。候補や推奨を見るとPython、R、Matlab、Juliaあたりが人気の候補だが、なぜかRは学習困難な言語と言う話がされることがあり*1、醜悪と言っている人もいる。しかし、人気のプログラミング言語の中ではシンプルな文法を持っているのがRなので、これは違和感のある主張だ。
「データサイエンティストになるのにRとPythonのどちらを勉強したら良いですか?」と言う御題が出されて、伝統的な統計解析だとRのライブラリが充実しているが、機械学習だとPythonが充実しており、システム開発ではPythonの一択だが、同僚や共同研究者にあわせないといけないから両方覚えることになると言うような指針が示された上で、それぐらい自分で考えられない人は何者にもなれないと言うような話になっていた*1。
AV新法の施行を受けて、6月くらいからネット界隈でAV女優と表現の自由戦士からアダルトビデオの撮影がまるで不可能になったかのような主張が声高にされている。
AV女優は当時者だし、業務への影響が大きいと困惑する業界の声も報じられている*1ので無根拠とは言えないが、一部界隈が言うようにAV女優失業法とまで言えるか量的側面からの評価がされていない。
某巨大掲示板で知られるひろゆき氏が、普天間基地の移設先として知られる辺野古キャンプ・シュワブのゲート前での座り込み抗議を揶揄して論争になっている*1。
小学生のような素朴な感想も大事と言えば大事なのだが、オトナとして読み取るべき情報を理解していないのが興味深い。工事を強行しても、何日経っても、基地移設計画反対なのは変わらないことを伝える運動であることを抑えて話をしないと、座り込みの意味を理解していない頭が悪い感想だと非難されてしまう。
ロシアのウクライナ全面侵攻は2022年2月24日に開始されたが、ロシアとウクライナを結ぶ鉄道拠点であるクピャンスク(Kupiansk)は2月27日に、北部からドネツィク州に侵攻する起点となるイジューム(Izyum)州は3月17日、主要都市セベロドネツク攻略の足がかりになるリマン(Lyman)は4月30日にロシア軍に制圧され、その後のドンバス地域でのロシア軍の攻勢を可能にしてきた。
エーザイの内藤晴夫代表執行役CEOが、アルツハイマー病治療薬の治験で「主要評価項目に据えた「投与開始から18か月時点のCDR-SB」は、p値が「0.00005」となり、「私も長い間この仕事に携わっているが、このようなp値を見たのは初めて。非常に高い統計学的有意性と言えると思う」と有用性を強調した」事で*1、SNSの統計学クラスターがざわついている。
安倍元総理をはじめとする多数の自民党議員が統一教会と関わっていたために、各社の世論調査で賛成多数から反対多数に変化した故安倍晋三国葬儀が終了した。武道館周辺ではデモも行なわれていたが、そう規模は大きなものではなく、弔問者の長い列の方が目立つもので、概ね平穏に済んだと言える。
2023年公開予定のディズニー実写版『リトル・マーメイド』で黒人のハリー・ベイリーが人魚姫役に抜擢されたのはファンに対する裏切りでがっかり、白人が非白人の役を演じるwhitewashingを批判する者は、非白人が白人の役を演じることも批判すべきだと言う主張を見かけた*1のだが、whitewashingの批判者の問題意識を勘違いしている。
「イチローの安打数がポアソン分布にならず正規分布になる理由を考察してみた」が流れてきた。曰く、1994年のイチロー選手は打率が高く好不調の波が小さいので、その試合ごとのヒット数はポアソン分布では無く正規分布に従っていると主張されている。分析と解釈に色々と問題があるので指摘したい。
安倍元総理の暗殺後、徐々に犯行動機となった安倍元総理など自民党を中心とする政治家と世界平和統一家庭連合(以下、統一教会)の関係が報じられ、気づくと統一教会が熱心に非難されるようになっている。そして、この世情を何かの理由で気に入らない反リベラル*1などの人々が「統一教会叩き」を非難しているのだが、問題への無関心さから主張が雑なところがあるので指摘したい。
性化/ポルノ化が悪影響をもたらす説*1への批判において、メタアナリシス論文Ferguson (2013)*2が言及されていたのだが、要旨部分だけを見て影響が無かった証拠のように持ち出す人が出てきそうなので、その内容を簡単に紹介しておきたい。影響の存在の否定にはなっていないと言うか、むしろ影響の存在自体は確認している。
性的魅力を強調した女性表現が少年・少女に悪影響がある説があって*1、特に少女への悪影響が危惧されている。
心理学者は実験や観察からこの説の是非を検討しているのだが、数ある研究の中でゲームの登場人物のセクシー化(sexualization)は影響がとても小さいと言う研究が、人気ブログのギガジンで間接的に紹介されたこともあり、ネット界隈の表現の自由戦士の間で広まっている。
東京大学の清水晶子氏がシンポジウム「フェミ科研と学問の自由」で行なったプレゼンテーション*1で紹介したサラ・アーメッドの主張での「特定の討議や対話を拒絶」を、主張への批判に応答しない事だと解釈しているアンチ・フェミニストのネット論客がいる*2のだが、端的に言って誤読になっているので指摘したい。
岸田内閣の支持率が急落している。メディアを賑わす世界平和統一家庭連合(統一教会)と政治との関係への対処が影響している可能性は高い。両者の関係を問題視する報道が多いが、安倍元総理の強い支持者層、統一教会が反社会的な団体と認識できない人々、安倍元総理の暗殺犯の政治的意図に従うことが面白くない人々などが、統一教会叩きだと反発している。
ネット界隈では、フェミニストはルッキズムを声高に非難してきたのに、実際は論敵の容姿をあげつらっている、同性の異性の容貌を気にしており、性的パートナーを容姿で選ぶことを非難していないと言うような批判をぼちぼち見かける。一見それらしいのだが、藁人形論法に近いので指摘したい。
感染症専門医の忽那賢志氏がメタアナリシス分析のTalic, Shah, Wild, Gasevic, Maharaj, Ademi et al. (2021)などを参照して、マスク着用率の高い日本でSARS-CoV-2感染拡大が続いているにしろ、やはりマスクに感染予防効果があると主張している*1。
日本のジェンダー論界隈で、武蔵大学の千田有紀氏のトランスジェンダー政策に関する主張を、東京大学の清水晶子氏と東北学院大学の小宮友根氏をトランス排除的な差別主義だと批判し、千田氏が批判がキャンセルカルチャーになると非難している。傍から見ている限り、本題から逸れている上に、ダメな議論を展開しているので指摘したい。
てらっけー白饅頭こと御田寺圭氏がエッセイ*1で、保護者の経済力以外に「貧しい暮らしのなかに根深く共有されている習慣や文化や価値観こそが、そこで暮らす子供たちが得られる教育の質的・量的な乏しさをつくりだしている」が、それを指摘すると現代社会では差別主義者として非難されると主張しているのだが、教育格差の研究や、教育格差対策の政策では常識的な話となっている。
東京大学の清水晶子氏がシンポジウム「フェミ科研と学問の自由」で行なったプレゼン「学問の自由とキャンセル・カルチャー」がキャンセルカルチャーを正当化していると主張されていた*1。シンポジウムの動画が公開されていたので該当部分を拝見したのだが、確かに正当化している。
定期的に発生する三角関数不要論にかこつけて、岩波書店が露骨に宣伝していた志賀浩二『無限のなかの数学』を宣伝していたので拝読してみた。学習教材ではないと言うか、ちょっと中高生だと知識的につらいかも知れないが、大学生以上だと、そうそうこういう話もあった…と言う具合に、知識の確認に使える。
塩野義製薬の新型コロナ治療薬候補・ゾコーバ錠の緊急承認手続き継続審議に対して日経新聞の社説が「何のための薬の「緊急承認制度」なのか」と錯乱している。この世には製薬メーカーが数多くあると言うのに、経済新聞が治験に対して十分な知識を持たないのが残念だ。
岸田総理が暗殺された安倍元総理を国葬で弔うと決定したために*1、ネット界隈では賛否を巡って意見が交わされている。しかし、国葬が何であるか誤解があるようだ。
国語辞書的に定義されているわけではないのだが、慣例から考えれば、国葬は国民全体が喪に服する儀式に他ならない。戦前の国葬は、国葬令に基づいて実施され、国民全体が喪に服することが法律で定められていた。戦後の国葬儀は、行政措置として実施され、一般国民は哀悼の意を表するように協力を要望された*2。
安倍元総理が演説中に凶弾に倒れたあと犯人の動機に興味関心が注がれているのだが、安倍総理と統一教会の関係から論じるのを非難する安倍元総理の支持者をぼちぼちと見かける。彼らはテロリストを礼賛し、暗殺が自業自得であったと考えることになると主張しているのだが、テロリストが凶行に及んだ理由を推察するのもテロリズムと言って弾圧しそうな考え方だ。
奈良県西大寺駅前ロータリーで演説中の安倍元総理が手製の銃で暗殺された事が驚きをもって受け止められている。確かに驚いたのだが、要素分解すると日本では前代未聞の珍事ではない。安倍元総理が殺害されたことをもって、日本が危険になったと言う話をちらほら見かけるのだが、早計だ。
第1次世界大戦でドイツが飢餓に陥り、英国が食料確保に苦しんだことから、「第二次大戦後、ヨーロッパの国々は…作っても儲からない、安くて仕方ない小麦などの穀物をワンサカ作るようになった。」と言う話が枕になっている、「先進国の安い穀物が飢餓の素地をつくる」と言うエントリーが流れていた。誤った情報からおかしな議論が展開されている気がするので、気になったところを指摘していきたい。
中の人が大学教員と言う墨東公安委員会氏が、表現の自由に対する自身の立場を長々と宣言した後、表現の自由戦士がアニメやマンガの擁護ではなく、同士との連帯感や承認欲求を求めて表現規制派フェミニストを非難していると主張している*1。
マンガ家で参院選候補者の赤松健氏の昔のツイートの「自民党に頭を下げて、話を聞いてもらわなくては」が気に入らなかったようだ。しかし、オタクの皆さんの危惧を矮小化しすぎだし、議会制民主主義を甘く見すぎである。
国外の女性表現の是非の議論では、男子にではなく女子の振る舞いへの影響が危惧されていて、ちょっと昔のアメリカ心理学会(APA)のセクシー化された女子に関するタスクフォースのレポート*1では、女子の学業への悪影響が挙げられている。
APAのレポートは多岐な議論が紹介されているのだが、女は容姿と愛嬌と理解して熱心に勉強しなくなると言う話の他、真似をしてエロ可愛い格好をするようになると勉強に集中できなくなる説が紹介されている。ネット界隈の議論では女性心理への悪影響を見落としがちだし、特に認識力への悪影響は無視されがちなので紹介しておきたい。
マンガ家の参院選候補者の赤松健氏が「外圧や行き過ぎたジェンダー論など議論の中心に当事者がいないのはおかしい。」とツイートして、ジェンダー社会学者やフェミニストから学問の自由の観点から非難されている。
ジェンダー論(gender studies)に基づくマンガに関わる表現規制の議論に、マンガ家が参加していないのはおかしいと言っているだけだし、学問としてジェンダー論を学んだり研究したりすることを非難しているわけではないので批判の多くは失当だが、「行き過ぎたジェンダー論」と言う表現は確かに奇妙だ。何を基準に行き過ぎと言うのであろうか?
一揆はゲームのタイトルにもなるぐらいの人気の日本史用語だが、漠然と暴動ぐらいに捉えている人は多いと思う。マルクス史観に沿えば、階級闘争の一形態。しかし、それは誤解らしい。
呉座勇一『一揆の原理』によると、一揆は、仏ではなく神に訴える起請文で明文化することが多い、目的を共有する(身分制社会を前提とした)武士や僧侶も行う一味同心の契約で、デモ(強訴)やストライキ(逃散)と言った団体交渉に近く*1、体制転覆を狙った暴動ではなかったし、序列を定めない義兄弟の契りのような場合もあった。
兵庫県尼崎市の外部委託業者の社員が、USBメモリーを用いた住民情報データ移管作業後に、データが入ったUSBメモリーを持ったまま居酒屋に行き泥酒、路上で寝込んだ上にUSBメモリーが入ったかばんを紛失する事件は、かばんと一緒に無事発見された*1。かばんの発見状況からデータ漏洩のリスクは小さく、このまま話は終息すると思われる。
表現物が若者に悪影響である*1として、教育が悪影響を相殺するように若者の行動に変化を与えられるとしたら、表現物を規制する必要は無くなる*2。エロ可愛い格好の女性表現が危険な性行動を誘発する論を政策的に考える前に、性教育の効果を評価しておきたい。査読論文として出版はされていないが、なぜかぼちぼち引用されているし、分析は概ね手堅く行なわれているBass (2016)*3を見てみよう。
ウクライナのドンバス地方では、榴弾砲とロケット砲の火力に勝るロシア軍がウクライナ軍を押し込みつつある*1。一ヶ月ぐらい前まで、ロシア軍の脆弱さを語っていた動画配信勢の皆様に反省して欲しいのはさておき、相互の対空ミサイルと対戦車ミサイルが有効なためか、無限に広がるかのような青空の下、地平線の先まで続く農地の中で、遠距離から大砲の弾を打ち合う戦闘が行なわれている。
メタアナリシスと言う言葉をご存知であろうか。同一内容の複数の研究の統計解析の結果をつなぎ合わせて、個々の研究よりも確かな推定量を得ようとする手法を指す。研究室でのランダム化比較実験のように、ほとんど同じ実験が追試で多数行なわれるような場合には、事実上、大サンプルからの推定量が得られる便利な方法だ。ポルノ視聴と性暴力の影響に関して、このメタアナリシスをかける冒険的な論文Ferguson and Hartley (2022)*1を紹介したい*2。
某氏がKendall (2007)を不用意に紹介して強く非難される中で、インターネットのブロードバンド接続の普及により、ノルウェーではポルノ視聴が性犯罪を増やしたことを主張する論文Bhuller, Havnes, Leuven and Mogstad (2013)が言及された流れで、Bhuller et al. (2013)と同様の分析をドイツで行った論文Diegmann (2019)*1が紹介されていたので拝読してみた。Kendall (2007)が主張し、Bhuller et al. (2013)が否定した、ポルノと性犯罪の代替効果が部分的にしろ観測されている。
ポルノ視聴の悪影響は心理学の実験から社会統計の解析まで幅広く行われているが、手堅く分析しているものは少ないし、手堅く分析するほど観察される影響が小さくなる傾向がある*1。しかし、手堅く分析している分析でも、ポルノ視聴の悪影響を示唆するものもある。
Bhuller, Havnes, Leuven and Mogstad (2013)*2は、ノルウェーでのブロードバンドのインターネット接続普及が性犯罪を悪化させ、さらにそれがポルノ視聴を通じての効果であったことを主張する研究だ。この手の論文の多くは相関を見ているだけで因果効果の測定まで行かないことがあるが、因果効果の測定をしている。
ポルノ利用が性犯罪を減らす可能性はそこそこ高い。ここ何十年間で世界中でポルノ視聴は容易になり、ポルノの製作数も飛躍的に増えている一方、性犯罪は劇的に減っている。しかし、時系列のデータなので、ポルノ視聴が影響したのか、他の要素が影響したのか統計的に判別することは容易ではない。相関を示すことができても、因果を示すのは大変だ。相関を示すことすら、上手くできないこともある。
統計学者や統計分析者でなくても、統計解説の結果を間接的にでも見ることは少なくない。しかし、統計解析を正しく行うのも、分析結果を正しく解釈するのも、実際のところは容易ではない。オモシロ統計が世に広がり、誤解が世間に定着しかねない世の中だ。
所謂統計リテラシーの問題なのだが、ダメな分析や解釈についての一般書でこれと言うものは私が知る限り無かった。類書で『統計でウソをつく法 — 数式を使わない統計学入門』が連想されるが、同書は書かれてから時間が半世紀以上経ち、内容もサンプリング・バイアスや記述統計量(というか平均)の性質、グラフの見せ方の話などがある一方、回帰分析が引き起こす誤謬や、社会や制度が統計分析者に与える影響についての記述は無い。
職業差別が不徳とされる日本社会なので、ポルノ女優や性的サービス従業者などのセックスワーカーの人格を蔑視してはいけないことに異論を唱えられる人は少ないはずだ。ここから、セックスワーカーにも職業人としての誇りがある、セックスワークは女性の尊厳を損なわないと言うような主張がされているのだが、論理の飛躍があるので指摘したい。
また三角関数に関する政治化の放言*1かと思うわけだが、藤巻健太衆院議員が三角関数は専門性が強い知識なので、高校数学からは除外して代わりに金融経済を学ぶべきだと主張したことが多くの反論を呼んでいる。藤巻氏は万人が恩恵を受けている技術に三角関数が利用されている事を認めつつも、その技術の利用に三角関数の知識は不要と指摘しているのだが、主張のこの部分は正しい。
統計学にはアヤメ(Iris)の有名なデータセットがあって、よく統計手法の説明に使われている。これが政治的に正しくないので、他のデータセット(i.e. パルマーペンギンのデータセット)を使うようにしようと言う呼びかけがあるのだが、理屈がほとんど立っていない。だから、アヤメでもパルマーペンギンでも好きな方を使えばよい。
成人年齢の引き下げによって、18歳と19歳のポルノ出演契約に未成年者取消権が適用されなくなることが問題視され、与野党が協調してAV出演強要防止法を急いで取りまとめているのだが、ポルノや性風俗に関連して被害を受けた女性の支援を行っているNPO法人ぱっぷすが法案に難癖をつけている。
フォロワーが4万を超えていたネット論客の青識亜論氏のTwitterアカウントが突然凍結された理由が訝しまれている。侮辱や名誉毀損や猥褻物頒布などいかにも規制されそうな行為はしてこなかったからだ。しかし、Twitterポリシーを眺めると、一つ引っかかりそうな項目がある。このポリシーで凍結されてしまった著名アカウントは他にも思い当たるので、リスクを周知する意味で、青識亜論氏の言動を検討しておきたい。