塩野義製薬の新型コロナ治療薬候補・ゾコーバ錠の緊急承認手続き継続審議に対して日経新聞の社説が「何のための薬の「緊急承認制度」なのか」と錯乱している。この世には製薬メーカーが数多くあると言うのに、経済新聞が治験に対して十分な知識を持たないのが残念だ。
「感染症のまん延による健康被害を防ぐため治療薬やワクチンの有効性を限られたデータから「推定」すればいいはず」とあるが、もうちょっと具体的に制度を把握して欲しい。
緊急承認制度は、第1相*1から第4相*2まである治験の第2相*3終了時点で臨時に医薬品として承認する制度だ。大きめのサンプルで多様な被験者に投与して安全性と有効性をさらに確認する治験の第3相を省略できる*4。
第3相を省略する条件として、他に治療法がない/他の治療法を凌駕した安全性や有効性/他の治療法が使えない状況で使える可能性があるか、他の治療薬の安定供給が見込めないことが条件にされている。
ゾコーバ錠に関しては、第2相での有効性が認められなかった上に、代替となる治療薬(i.e.パキロビッドパック)と比較して安全性と有効性で勝るとは見做されなかった上に、作用機序が同じと考えられている*5。つまり、緊急承認制度の前提条件をどれも満たさない。さらに、統計処理の不適切さも指摘されている。
社説の言葉を借りれば、「「承認せず」とするのが筋だろう」と言う案件。
*1安全性を確認する。
*2均質な患者の小さめのサンプルで有効性を確認する。
*3発売後の臨床報告を分析する。
*4厚生労働省の「緊急承認制度における承認審査の考え方について」には、「探索的な臨床試験において・・・一定の有効性が示され・・・原則として、いわゆる後期第II相試験程度の臨床試験が該当する」とある。
*5塩野義製薬の新型コロナ治療薬候補・ゾコーバ錠は「継続審議」 第3相パートの成績で再審議 薬食審・合同会議 | ニュース | ミクスOnline
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