定期的に発生する三角関数不要論にかこつけて、岩波書店が露骨に宣伝していた志賀浩二『無限のなかの数学』を宣伝していたので拝読してみた。学習教材ではないと言うか、ちょっと中高生だと知識的につらいかも知れないが、大学生以上だと、そうそうこういう話もあった…と言う具合に、知識の確認に使える。
数学で無限がどのように扱われてきたかについてのエッセイで、どちらかと言うと無限に続く級数展開が主題な気もするが、弦と円弧の比からフーリエ級数まで三角関数に関わる話の分量が厚い。文系のせいかtan⁻¹やsin⁻¹に縁が薄いので、単位円からtan⁻¹(y)=∫dt/(1+t²) (t∈[0,y])やsin⁻¹(y)=∫dt/sqrt(1-t^2) (t∈[0,y])を導入する話は面白かった。ニュートンさんがsin⁻¹の級数展開に用いた一般化二項定理*1は、学習した記憶が無かったし。
なお、歴史的な変遷の話をしているので、教科書的な話とはちょっと違う。オイラーの公式は、テイラー展開を使って導入されないし*2、ε-δ論法を説明したりはしない。後半になってくると、ルベーグ積分や関数解析の話になり、文章でつづられた著者の気持ちを掴むのに伊藤(1963)『ルベーグ積分』の知識が役立った*3。最後に出てくる抽象代数は、エミー・ネーターの武勇伝なので予備知識は要らなかったが。
カントールの対角線論法あたりをどれぐらい正確に思い出せるか挑戦しながら読んでいくと、非数学徒は忘れていた事を思い出せて良い。何年かおきに盛り上がるが話がまったく進展しない三角関数不要論だが、自分の知識のリフレッシュには使える…と信じたい(´・ω・`)ショボーン
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