8月末からのウクライナ軍の反攻で劣勢が伝えられているロシア軍だが、防衛線を後退させてそこを死守する動きを見せている。塹壕を掘って動員した予備役*1を配置する事で、ウクライナ軍の反攻を凌ぐ算段のようだ。
東部では主要幹線沿いにプーチン線と呼ばれる長い防衛陣地を構築しているし*2、ロシア民間軍事会社ワグネルの経営者プリゴジンは、200Km超の防衛線「ワグネル線」をウクライナ東部に構築する計画を議論したと伝えられている*3。倉庫から40年前の戦車を持ち出している状況で*4、攻勢に出るには武器が不足している*5。
ヘルソン州ドニエプル川右岸(西北岸)からの撤退も噂されるようになった。ロシア軍の補給線はドニエプル川を横切る必要があるのだが、ウクライナ軍は橋を攻撃して補給戦を細くしている。結果として、ロシア軍は火砲の利用を抑制するようになっており*6、徐々に北から戦線を後退させてきた。継戦が困難なのであれば退却が合理的で、新たに任命されたスロビキン総司令官が、南部ヘルソン州の戦況について非常に困難な状況にあるとあると指摘し、難しい決断を排除しないと述べている*7。
ところがここに来て州都ヘルソンで市街戦の準備を進め、新たに動員された予備役が配備されていると報じられている。ドニエプル川右岸に配置されているかは分からないが、ヘルソン州には4万人規模の戦力が集結しているそうだ。これはロシア軍の投入戦力の1/5から1/3に達している。撤退するにしろ追撃を避けるためにもギリギリまでSnihurivka–Beryslav–Khersonの防衛線は維持したいであろうし、撤退作戦の最中に市街戦になることを想定していてもおかしくないが、死守しようとする動きにも見えなくもない。
ウクライナとしては、補給線の問題でロシアが不利でウクライナが有利なドニエプル川右岸で戦えることは朗報だ。ロシアはドニエプル川に阻まれて退却も困難なので、装備と訓練に優れるロシアの精鋭部隊を、効率よく殲滅する機会になる。逆に考えれば、ロシア軍は早々に撤退すべきとなる。素人には見えない軍事的都合があるのかも知れないが、ここまでロシア軍は政治主導で戦ってきたと言われている。この戦争、意外に早期に終了するかも知れない。
*1ロシア、予備兵30万人の動員完了 ウクライナに8万人超派遣 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
*2リマン(Lyman)から撤退したロシア軍はルート66沿いに塹壕を掘削中 - Togetter
*3Russian invasion of Ukraine: UK government response - GOV.UK
*4ヘルソン州のドニエプル川の右岸(西岸)でロシア軍のT-62Mが大漁 - Togetter
*5東部のバフムート周辺ではロシア軍が(結果に関わらず)攻勢に出続けている。
*6ウクライナで使用中の高機動ロケット砲、秘密の配備地点を取材 - CNN.co.jp(動画でロシア軍の砲撃が激減したという前線兵士の証言がある)
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