2026年6月22日月曜日

最近のアメリカのトランスジェンダー排除目的のトイレ法案の(少なくとも幾つか)は、性分化疾患(DSDs)の人にも影響するよ

Twitterの性分化疾患(DSDs)当事者の日本人で、性スペクトラム説などのジェンダーイデオロギー(もしくはトランスジェンダー)を嫌う人々が*1、近年成立しているアメリカのトランスジェンダー排除目的のトイレ法案(bathroom bills)はDSDsは例外と言っている気がするのだが、条文を読む限りは巻き添えを受けているので指摘しておきたい。

議論で例にあげられているのは、サウスダコタ州のトイレ法案だ。2016年に廃案になったバージョン(HB 1008)と、2025年に成立したバージョン(HB 1259)があるのだが、どちらも条文上はDSDsは巻き添えを受けている。

知事が署名しなかったので廃案になった2016年のHB 1008の最終バージョン(ENROLLED)では女性を以下のように定義している。

The term, biological sex, as used in this Act, means the physical condition of being male or female as determined by a person's chromosomes and anatomy as identified at birth.

DSDsは性染色体と表現型が一致しないことが多いし、出生時に男女どちらか判定が保留されたり、保護者の判断で決めることもある。

知事が署名して施行された2025年のHB 1259の最終バージョン(ENROLLED)は以下のようになっている。

(2) "Female," an individual who naturally has, had, will have, or would have, but for a congenital anomaly or intentional or unintentional disruption, the reproductive system that produces, transports, and utilizes eggs for fertilization;

(3) "Male," an individual who naturally has, had, will have, or would have, but for a congenital anomaly or intentional or unintentional disruption, the reproductive system that produces, transports, and utilizes sperm for fertilization;

原案は生物学的性別定義をそのまま書いていたのだが、修正されて生殖機能の未成熟や喪失について考慮した定義となった。しかし、DSDsは遺伝子異常がなければ生物学的なオス(or メス)に育つはずだった女性(or 男性)なので、この法案の定義だとDSDsは外見的特徴と異なる性別ということになってしまう。

DSDsのことはカケラも考えていなさそうだし、アメリカの州法では運用されずに放置されている刑法もあるそうで、DSDsが運用で困ることになるかは分からないが、最近はスポーツで5α-還元酵素欠損症(5-ARD)の女性への非難が強くなっているので、安泰とも限らない。

サウスダコタのbathroom billはまだ穏健な方で、フロリダ州のCS/HB 1521の最終バージョン(ENROLLED)は性染色体と内性器について言及している。

103 (k) "Sex" means the classification of a person as either
104 female or male based on the organization of the body of such
105 person for a specific reproductive role, as indicated by the
106 person’s sex chromosomes, naturally occurring sex hormones, and
107 internal and external genitalia present at birth.

DSDsの人々も影響されるという危惧は実際に表明されている*2

アイダホも似たようなことをやって、施行前にどうすんねんこれ?となっているらしい*3

トイレ法案はアーカンソー州、カンザス州、ミシシッピ州、オクラホマ州、ユタ州*4にもあるそうだ。

最近のアメリカのトランスジェンダー排除目的のトイレ法案は、性分化疾患(DSDs)の人にも影響しうる。

日本のDSDsの人々は、自分たちの性別は生得的なので関係ないと主張しているが、大きな誤解だ。生物学的性別は生成する配偶子で雌雄を定めるし、拡張するときも生殖腺の種類を用いる。生殖を説明するための分類だからだ。乳房の有無などはもちろん、外性器などを含めた表現型では分類しない。そもそも出生時の外性器では分類できない事例もある。

DSDs当事者が議論の余地なく男性もしくは女性と認定されたいと思っているのは想像できるのだが、生物学的性別と社会的性別にギャップがあって、そのギャップにDSDsはいる。生物学、つまり生殖での役割に関連する特徴を、従来よりも社会的性別において重視する方針は、DSDsの人々の利益に反する蓋然性が高い。従来は、外性器に基づく雑な分類と、思春期を迎えた後の任意の性別変更で、社会的性別は運用されていた。

DSDsの人々が生物学や解剖学を重視しすぎる立場をとると、自らの利益に反することになる。社会的摩擦が少ない、例えば「男湯に(その世界では見た目は)女が入ってきた!」と驚くことにならない社会的性別の必要性を強調した方が、DSDsの人々にはよいはずだ。なお、この立場をとっても、トランスジェンダーの権利を擁護することにはならない。

*12001年にDSDsの団体が性スペクトラム説を唱えていたことがあるので、DSDsの人々の一般的な傾向かは分からない。

*2Intersex Youth Poised to Complicate School Bathroom Battle

*3TWIBS: Idaho Solicitor General Suggests DNA Testing Over Bathroom Ban - Assigned Media

*4ウタ州のトイレ法案は出生時に割り当てられた性別(assigned at birth)に基づく法律で、かつ性別適合手術を受けたインターセックスとトランスジェンダーは例外となる(Controversial trans bathroom bill passes through Utah Senate committee | Utah Public Radio)。

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