2026年7月13日月曜日

小学校英語にフォニックスを導入しようと言う主張には、根拠にできるエビデンスがあるよ

ある社会学者が、小学校英語にフォニックス(synthetic phonics)を導入しようと言う主張に対して、小学校英語でのフォニクスの効果にエビデンスはあるのか、非英語圏の小学校英語について研究しているのに聞いたことがないと指摘していた。

フォニックスは、英単語の音節ごとの綴りの発音の規則性を中心にした英語学習方法だ。英語圏の児童に対して(それまでの教育方法よりも)高い教育効果があると、2000年頃までには教育学界隈で言われるようになった。『ライオンとイングリッシュ(Between the lions)』と言う幼児番組を見ると、どういうものか分かる。

従来の教育方法(whole language)よりも教育効果が高いとする実証研究が多々ある(Ehri (2020))。読書困難児への効果、長期効果、(相対的に研究が少ない)他の指導方法への優位性に懐疑がある(Bowers (2020))が、以前の英語教育よりはマシと言うのは揺るがないようだ。

さて本題の非英語圏の小学校英語におけるフォニックスの有用性だが、検索するとワラワラと実証研究出てくる。サーベイ/メタアナリシス論文もある(Huo and Wang (2017))。そこでリストされているのは15報。フォニックスは従来型の教育法と比較して、音韻的な基礎の習得に優れていることはよく示されている一方で、語彙や読解力の向上効果はばらつきが見られたそうだ。また、従来研究の手法の細部に難が無いわけではなく、この傾向が絶対と言うわけではないと釘が刺されていた。

相対的に厳密な手法に思えるのがインドの貧困層の7歳ぐらいの児童を対象とした研究Dixon et al. (2011)で、読解およびスペリングにも効果があったと報告している。フォニックスを教える介入群と従来型学習のコントロール群は特定地域の英語塾(private unaided English medium school)からランダムに学校ごとに選択しており、サンプルサイズも500名超で、成績不良児や読書困難児だけに絞られない。貧困層が通っているので、他での英語教育の機会は乏しいと推測され、フォニックスの効果を検出しやすい。

論文に明記されていないため、処置群の割り当てが無作為抽出なのか疑念があるのが残念なところではあるが、マレーシアの英語ができない地方の学校の小学校1年生(処置群862人対照群168人)を対象にした研究Johnson and Tweedie (2010)でも、リーディングとライティングにも効果が示されている。小学校高学年を対象にした、サンプルサイズを40名に絞って半構造化インタビューによる質的調査もつけたJamaludin et al. (2015)でも、リーディングに効果が認められている。香港の幼稚園児に対する実験では読解力向上は認められなかったようだが、さすがに幼稚園児である。数年の差ではあるが、この年齢の子供の変化は大きい。

外的整合性の問題もあるので、日本でも大規模なランダム化比較実験を実施しても良さそうではあるが(日本で実施された研究もある)、フォニックスは教育手法としてはかなり根拠がついている部類である。信頼のおけそうな論文では、発声や音読だけではなく、リーディングやスクリプティングの効果も報告しており、英語学習全般に寄与することを期待しても良さそうだ。導入を支持しないエビデンスが無いと批判するのは難しい。

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