気づかないうちにネトウヨの皆様の間で、太平洋戦争は自衛戦争だった論が展開されているらしい。米国の対日経済制裁によって苦境に立たされたので、対米開戦をせざるをえなかったと言うのが、その理屈だ。1941年12月8日以前の国際情勢に関する知識が欠落しているのだが、日本の拡張的領土政策に対する制裁であったことが欠落した議論になっている。1937年の盧溝橋事件以後のシナ事変が、1941年の全面石油禁輸措置が理由で始まったわけではない。
日本が軍事的に中国での利権獲得を目指していたのは教科書に載っているはずなのだが、おさらいをすると張作霖爆殺事件(1928年)、柳条湖事件(1931年)、盧溝橋事件(1937年)と、1920年代後半から長期間、戦争行為を断続的に行なっていた。柳条湖事件の後のリットン調査団(1932年)と、それを受けた国際連盟での勧告決議と日本の国際連盟脱退(1933年)は教科書に載っているはずであるし、ネット界隈でも有名な事件だ。「我が代表堂々退場す」は愛されているフレーズである。
1939年7月の日米通商航海条約破棄から、1941年8月の対日全面石油禁輸措置まで、段階的に引き上げられた経済制裁は、日本の対中侵略行為を止めるためのものだった。米国が何の理由もなしに1941年8月から突然、全面的な経済制裁を行なえば自衛戦争になるかも知れないが、支那事変/日中戦争(1937年~)から、あるいはもっと以前からの国際情勢を考えれば自衛戦争とはとても言えない*2。ネトウヨの皆様も、南京事件(1937年12月)は正当な軍事行動だったと言っているはず。日本の戦争は、パール・ハーバーより前に始まっていた。
米議会でマッカーサーが「(日本が)戦争を始めた目的は、主として安全保障上の必要に迫られてのことだった」と証言した*1ことを理由に、自衛戦争だったとしているネトウヨさんもいるのだが、中国共産党に対するマッカーサーが提案している戦略が、太平洋戦争前の対日戦略と同じかと聞かれたもので、日本の太平洋戦争開戦を正当性についてではない。文意が取りづらい発言なのだが、日本に経済封鎖は有効であったから、中国共産党にも有効であると言う以上の意味は無いと解釈するのが穏当であろう。
*2日本が中国に侵攻するのに米国は関係ないのだから、そもそも米国の経済制裁に正当性が無いと感じるかも知れないが、日本がどこを侵略しようが勝手と言うのであれば、米国がどこに経済制裁をかけようが勝手と言う議論も成立するであろう。
0 コメント:
コメントを投稿