開発途上国で貧困層への公共サービスが小さいのは、その政治的影響力が小さいためだと言われている。選挙のある民主国家で、貧困層が少なくない数を占めている場合も同様であると言う研究もあり、影響力を増すような制度改善の方法も色々と提案されている。しかし、実現可能性の低い提案をするよりも、投票用紙を電子機器に変えた方が手っ取り早いようだ*1。
ブラジルでは従来、日本のような記名式の投票用紙を用いていたのだが、約4分の1の成人が文盲のブラジル人では上手く投票が出来ない事が多かった。そこでガイダンス機能付の電子投票を導入したところ、無効票が激減した。
音声ガイドが無いので文字が読めないと同じ気もするのだが、投票したい立候補者の番号を入れると、顔写真付で政党・候補者名が表示され、正しく入力できたか確認できるのが良いようで、無効票は約20%から約10%に激減した。どうやって無効票を入れれば良いのかは謎なのだが、きっと白票も選択できるのであろう。
1998年に登録有権者数40,500人以上の市に導入をはじめ、2002年に全土に展開したので、分断回帰で導入自治体とそうでない自治体の差を比較する事ができる。最近、一般化した政策効果の測定だ。有効投票率が劇的に向上し、左派政治家の当選が増えて貧困層向けのサービスが拡充し、特に、学校に通った事の無い母親が医療サービスにアクセスしやすくなった。ただし、小学校を卒業した母親については、特に変化は無い。
識字率を上げたら不要な気もするが、大人に文字を教えるのは大変なのであろう。ブラジルはこういうのに熱心らしく、生体認証による投票者確認も導入されつつあるようだ。投票用紙に線やアートを描く不正投票が一定数あるようだし、ボルダルールなどの複雑な投票も容易になるので、日本でもそろそろ電子投票を検討しても良いかも知れない。
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