ネット界隈のリフレ派が好む用語に、デッド・キャット・バウンス(Dead Cat Bounce)と言うのがある。死んだ猫でも高い所から落とせば跳ねるように、急落している最中に一時的に回復傾向になる株価の動きを指す。今では株価以外の経済指標にも使われるようになったが、これで資本市場以外の説明をするのはやめた方がよい。そのような現象が頻繁に見られるわけではないし、理屈が全くつかないからだ。
1. 元は株式投資用語
株式市場では、デッド・キャット・バウンスはよく見られる。理屈は色々と考えられるが、例えば、悪いニュースが流れて先物で売りが大量に入り株価が暴落、その後、底値を探るような動きの中で利益確定で買いが大量に入るようなことがあれば、デッド・キャット・バウンスと言える動きをするであろう。常にデッド・キャット・バウンスが見られるわけではないが、そのような現象が生起させるかも知れないメカニズムが存在することは、株価であれば否定できないはずだ。為替や原油など相場で取引されるものにもあるであろう。
2. 経済指標ではほとんど観測されない
雇用や生産など取引価格ではない経済統計はどうであろうか。季節変動や統計誤差で値が細かく上下するが、それらをスムージングしたあとに、デッド・キャット・バウンスと言える動きはほとんど無い。失業率を見ると上昇中に何ヶ月か瞬間的に下がることもあるが、一年と言う期間でそれが起きる事は無い。「家計調査」の示す消費税増税前後の家計消費であれば、耐久消費財の前倒し買い替えや、溜め買いが出来なくも無いせいか、増税直後に急落したあとに半年をかけてちょっと戻り、1年半をかけて増税直後の水準に戻ったりしているが、そのぐらいであろう。
3. 使う前に明確な過去事例を探そう
2009年から2012年の民主党政権時の経済指標の回復を、リーマンショックからのデッド・キャット・バウンスと切り捨てる人々をよく見かけるが、二番底が見られずそのまま上昇しているのに、どうやってデッド・キャット・バウンスだったのか判別しているのであろうか。そもそも、その経済指標が他の国や地域のものでも明確にデッド・キャット・バウンスしているのを見たことはあるのであろうか。過去にそれなりの頻度、デッド・キャット・バウンスが観察された事もない経済指標なのに、民主党政権時代だけデッド・キャット・バウンスが生じていたのは当然と言うのは、おかしな議論になる。
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