完全失業率の改善を示されても、雇用環境が余りに悪いと職探しをしても仕事が見つからないので、失業者が求職を止めてしまう就業意欲喪失効果や、パートタイマーへの不本意就業による妥協による低下であって、雇用環境は実は悪化していると主張する人々は少なくない。ネット界隈のリフレ派が2012年までの民主党政権時の、反安倍政権の左派が最近の完全失業率の低下に対して、このように主張するのを見かけたことがある人は多いであろう。しかし、求職意欲喪失者や縁辺労働者や不本意なパートタイマーを考慮した失業率を作っても、完全失業率とよく連動する。完全失業率を見ていれば、だいたい間違いは無い。
「ユースフル労働統計 2016」(P.91--93)の図7-11を見てみよう。グラフ中のU-3が、所謂、完全失業率である。U-4aは、失業者に求職意欲喪失者を加えて、失業率を出したものである。U-5,U-6で使われている縁辺労働者は求職意欲喪失者に、「出産・育児のため」及び「介護・看護のため」に就業意欲はあるが求職してこなかった人々を加えている。U-6は、「経済情勢のためにパートタイムで就業している者」も含んでいる。
完全失業率(U-3)と、広義の失業率(U-4aからU-6)の趨勢が乖離する事はほとんど無い。特に、U-3とU-4aの違いはほとんど無く、求職意欲喪失者は誤差の程度しかいないことが分かる。なお、求職意欲喪失者など縁辺労働者に“過去1年間に求職活動を行ったことがある”と言う条件がつくのが気になるかも知れないが、過去1年間に限らない別の統計からも「日本の就業意欲喪失効果はとても小さい」と言える。性別・年齢階層ごとの就業率と求人対未就業者率の相関はほとんど観測されない。
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