ネット界隈のリフレ派は、2012年末までの民主党政権に景気が底をうっていたのを認めると心の中の何かが壊れるのか、最近は景気遅行指数の就業者数をもって第2次安倍政権になってから景気が良くなったと主張している。マネーストック、期待インフレ率、インフレ率はどうでもよくなったのか、景気一致指数の有効求人倍率を見なくて良いのかも気になるが、就業率ではなく就業者数をみると色々と奇妙な事が起きるのを指摘しておきたい。
1. 金融危機よりもバブルの頃が不況になる
就業者数で景気評価すると、バブルの1991年12月(就業者数6417万人,完全失業率2.1%)よりも、金融危機の頃2000年12月(6462万人,4.8%)の方が景気が良くなる。アベノミクスが進んだ2016年12月(6499万人,3.1%)は、金融危機のときより景気が悪いが、バブルの頃よりも景気が良くなる。2017年まで考えれば、金融危機の頃よりも就業者数は増えるだろうが、そう強弁する場合も生産年齢における就業者数が議論を難しくする。
2. アベノミクスが高齢者の為だけのものになる
65歳以上の高齢者を含む15歳以上の就業者数と、15歳から64歳までの生産年齢の就業者数の推移を見てみよう。どちらも下落傾向から底をうっているが、生産年齢の方は弱弱しい。ネット界隈のリフレ派が言うように、就業率ではなく就業者数で評価してしまうと、アベノミクスは高齢者の雇用に貢献するだけで、64歳以下の労働者のためにはなっていないと言うことになる。リフレ派はこれを受け入れられるであろうか。
3. 問題は生産年齢人口の減少による
問題は人口動態にある。就業率自体の回復は生産年齢の方が早いのだが、生産年齢人口の減少があるので生産年齢就業者は増加していない。一方、65歳以上の人口は緩やかに増加しているので、それに生産年齢人口を加えた15歳以上の人口は2010年まで増加傾向にあり、その後は微減に留まっている。
15歳以上と生産年齢の就業率をみると、2011年と2010年に底をうっている。人口×就業率=就業者数になるわけだが、生産年齢の方の人口が減ってしまっているので、就業者数では景気回復の効果が見えなくなっているわけだ。
公的年金の支給開始年齢は65歳へ引き上げだし、高齢者雇用安定法も65歳までの再雇用しか義務付けていないので、ちょっと謎な動きである。リーマンショックもあったし、日本経済も安泰とは言えないし、勤務先も人手が足りないというし、働けるだけ働こうか・・・と言う高齢者が増えているのであろうか。
4. それでも就業者数で景気判断をする?
ネット界隈のリフレ派の皆様は、民主党政権時に景気回復が始まっていた事を認めたくないから就業率ではなく就業者数と言う指標が正しいと言い張っているわけだが、就業者数と言う指標を用いると、アベノミクスは高齢者の雇用に貢献するだけで、64歳以下の労働者のためにはなっていないと言うことになる。
最後にリフレ派の皆様に問い直したい。就業者数と就業率、どちらが適切な景気指標であろうか?
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