コンテナに積み込んだドローンを民間人に複数のロシア軍基地付近まで運搬させ、コンテナまではモバイル網でコンテナからは光ファイバーでドローンに接続して制御し、コンテナから一斉に発進させ、ロシアの戦略爆撃機と早期警戒管制機を狙い撃ちにした、ウクライナ保安庁の「蜘蛛の巣作戦」は衝撃をもって報じられた。
衛星写真で確認されただけでもオレニヤ、ベラヤ、イヴァノヴォ・セヴェルヌイの三箇所で14機から15機が損傷を受け、うち10機から13機が大破したと目されている。作戦は完全な成功とは言えず、ウクライーンカではコンテナから発進に失敗してコンテナが炎上爆発、ジェギレヴォでは目標に命中しなかったそうだが。
目標の選定も概ねはっきりした方針が感じられる。空中発射型弾道ミサイルを搭載してきた長距離爆撃機(Tu-95)と中距離爆撃機(Tu-22M3)が主目標と考えられる。早期警戒管制機(A-50)も攻撃されていたが、ロシア空軍の作戦の柔軟性を削る御利益がある。万年駐機中の機材ではなく、稼働率が高い機材を選んでもいる。ただし、輸送機(A-12)を攻撃した意図は明確ではない。
これらの戦果は小さくはない。ロシア空軍は航空機の被害を避けるためにウクライナ上空での運用を避けており、ウクライナ軍は迎撃不可能であった。手が届いたのは大きい。ロシア空軍機は実際に稼働させられる機材が限られているとも言われ、その何割かを喪失させた可能性もある。。ロシア国内のコンテナ流通を滞らせたり、ロシア空軍に掩体壕の設置や、さらに遠距離の基地からの作戦行動を強いることができるかも知れない。
しかし、戦局を左右するほどの損害を与えたわけではない。ロシア空軍にはまだまだ弾道ミサイルを運用できる機材がある。Tu-160が任務を代替したようだ。前線では弾道ミサイルよりも、衛星測位システム(GLONASS)で誘導される滑空爆弾(e.g. FAB-1500)の方が存在感があるが、その発射はSu-34やSu-35といった攻撃機が担っている。そして、これで二度目とは言え、特殊作戦による滑走路上の航空機への攻撃は、ロシア側の油断もないと成立しないため、繰り返し行うことは困難だ。仮に行えたとしても、間隔は空く。「蜘蛛の巣作戦」が準備に一年半を要した。
スウェーデンから提供された警戒管制機ASC890型の支援を受けたF-16がSu-35Sを撃墜したという話が本当であれば、ここ一週間で他に他に2機、撃墜されているし、こちらの方が戦況を大きく変える可能性が高い。
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