2025年6月25日水曜日

NENENENE@研究さんが女子枠批判で参照した論文2報が女子枠を正当化している気がする件

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アファーマティブアクションなどDEI施策批判者で、英文雑誌に論文を載せてしまうNENENENE@研究さんが、再生医療を専門とするイリノイ大学の研究者、山田かおり氏の主張を批判する文脈で出した論文の要約が、よく読むと女子枠を女子枠を(牽強付会すれば)正当化しているので指摘したい。

女子の数が少ない理工学部は女子は居心地が悪いのだが、女子枠を設ければそれが改善されて大学の理工系が女子に避けられなくなる説に反論する文脈で、NENENENE氏はAnelli and Peri (2019)Brenøe and Zölitz (2020)を参照している。

Anelli and Peri (2019)は、イタリアの男子ばかりの高校の男子は経済・ビジネス・工学分野に進学しがちだが、一般に高校の男女比は進路に影響しないよと言う話。大学の男女比の話ではないから、山田説は否定しない。また、ピア効果による男子のSTEM系進学は、高い退学率で労働市場に影響しなかったとある。男子のSTEM系進学率、下げたほうがよくない?

Brenøe and Zölitz (2020)は、デンマークの女子生徒が多い高校の女子生徒はSTEMを避け、子沢山になると言う話。大学 の男女比の話ではない。だが、友達と進路をあわせてしまうピア効果と解釈できるので、STEM進学女子が増えればSTEM志望女子も増えるであろうと言う話にもなる。

どちらも大規模コホートを用いた手堅い研究で、Anelli and Peri (2019)の方はさらにランダム割当になる自然実験を利用している。Brenøe and Zölitz (2020)は(要約を見る限り)ランダム割当になっていないようなので、伝統的な女性の役割を好む女性が、女性が多い環境に進学したがるピア効果の逆を拾ってしまっているかも知れないが。どちらも良い学術雑誌に掲載だ。ダメ研究とは言い難い。男の子だからって無理に数学や科学を勉強しても無駄なんや(´・ω・`)ショボーン

女子枠が正当化できるとは思えない。女子生徒が大学の男女比を重視しているとは言い難いからだ。内閣府男女共同参画局「女子生徒等の理系の進路選択にかかる意識について」を見ると、女子生徒は将来利益や興味関心から進路を選択しており、保護者もそれを支持している。実際、ここ30年間、高賃金が約束される医学部は、女子枠などなくても女子率はどんどん上がってきている。一方、妊娠出産を考えるとライフワークバランスを取りづらい理工系の利益は薄い。ジェンダー平等パラドックスとして知られるが、先進国ほど女子生徒はSTEM進学を避けると言われている。女子に理工系に無理に誘導することが、女子の利益に適うか怪しい。男子生徒の不公平感も増す。

しかし、NENENENE@研究さんが引っ張ってきた論文2報は、女子がピア効果で進路などを選んでいる可能性と、底辺男子に理工系進学をさせない利益を示唆しており、女子枠をある意味正当化している。

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