思想家の内田樹氏が大阪市長の橋下徹氏をポピュリストと批判している(内田樹の研究室)。
その長い文章の中で気になる所があった。民間バス会社と比較して大阪市交通局のバス運転手の給与が高いので、給与水準を引き下げようとしている点を批判している所だ。
常識的には、以下の理由で橋下氏の主張は当然に近い。
- 行政は低コストで高サービスを提供することが求められている。無駄に高い税金は誰も払いたくない。コスト削減の試みは、評価すべきである。
- 労働市場で定まる賃金が、多くの市民が得ている賃金だ。同じ業務で同じ能力が求められる職業ならば、同じような賃金になるのは当然だ*1。
- 労働市場で定まる賃金は、効率的である。市場価格よりも高い賃金だと、労働需要(=職場)が減るか、事業主が赤字になりかねない。現在の大阪市営バスも赤字事業だ。
法的には賃下げを組合側が飲むかは問題であるものの、在阪大手5社での最低水準を目指すと言うのはおかしい話では無い。近鉄と南海はそれで人員調達ができるのだから、大阪市バスが出来ない理由も無いように思える。バス運転手の調達に困るのであれば、賃金水準を上げるか、路線の統廃合を行えば良い。
逆に高い賃金を払い続けると言う事は、大阪市民の税負担を大きくすると言う事で、それなりの理由を求められる事になる。橋下大阪市長は理由が無いと判断したようだが、内田樹氏には高い賃金を正当化する理由があるのであろうか?
*1内田氏は以下のように主張しているが、摩擦の無い労働市場とは結局、内田氏の言う最低賃金(見方を変えると、それは均衡賃金でしかないので、最高賃金でもある)に定まるようになっている。
このルールに大阪の有権者たちが同意した以上、これから後、彼らはすべての賃金交渉において、「同じ労働をもっと低い賃金で引き受けるものがいる」事例を雇用者側が示し得た場合には、最低賃金を呑む他ないのである。
実際には、その職場に置いて重要な技能を身につけたり、労働法を盾に賃下げに応じない等の行為が行われている。バス運転手は代替が効かないわけでも無いであろうから、法的な問題しか残らない。
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