「民主党議員の消費税への態度の変遷」と言うブログのエントリーで、増税反対から賛成に変化した民主党の主要議員をリストしている。これは面白いのだが、冒頭部分の京都大学の藤井聡氏が国会で示した「消費税増税が日本経済に与える影響の予測」を疑いも無く引用しているのが興味深い。
1. 産業連関表による予測
藤井聡氏のプレゼン資料では、内閣府、日経NEEDS、電力経済研究所、DEMIOSと予測モデルが並べられているが、これらは産業連関分析のモデルになっている。これは、短期的な経済の影響分析に向いた手法で、例えば歯ブラシの需要が2倍になったら、ナイロンや樹脂の需要が何倍になるかが計算できる。日韓ワールドカップでの経済効果が3兆円などなどの予測がこれによる計算だ。
追記(2012/07/15 19:00):コメントで内閣府のモデルは推定パラメータ型計量モデルで、産業連関分析ではないと指摘を受けた。
2. 需要予測の想定が重要だが、それは明示されていない
これで増税の効果を分析するときに注意をしないといけないのは、民間需要がどの程度減少する想定になっているのか、政府支出の増減をどう想定しているのかだ。しかし、これらのポイントは明示されていない。
デフレの価格低下で需要が伸びないのに、消費税アップの価格上昇で需要が下がるのかは問題になりそうだ。増税にあわせて支出を丁度5%減らすのは生活に全く余裕が無い人だけに思える。また、増税しないと政府支出の減少を余儀無くされるが、そちらの効果は入れられていないようだ。
3. 予測モデルの信頼性は高く無い
その中でも、異様さが際立っているモデルがある。人口やTFPも内生化されている*1、筑波大学の宍戸駿太郎氏のDEMIOSだ。宍戸氏はこれを用いて、拡張的な政府支出の増加で、実質GDP成長率が5%に上昇した後に、最終的に3%になると主張している(宍戸(2008))。興味深い事に人口すら増加していて、2020年には1億3186万人になる予測のようだ。なお既に減少基調が明白な、高齢化や生産年齢人口などが考慮されているようには見えない。
グラフは『日本の将来推計人口(平成24年1月推計)』からの引用だ。
4.冷静に見るとねずみ講モデル
ねずみ講モデルになっている事は指摘しよう。政府が赤字を出せば、それ以上に増収する事になっている*2。このモデルが正しいのであれば、財政赤字の拡大は起きなかったはずなのだが、モデルを複雑にしすぎて全体像が見えなくなっているようだ。オイルショック以降に財政赤字は拡大しており、GDP比の累積債務も増加しているのは、明らかな事実なのだが(日本の財政関係資料)。
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