2012年7月6日金曜日

デフレからインフレになったら名目金利はあがるのか?

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慶応大学の小幡績氏が「日本は円安、脱デフレで崩壊する」と主張している。名目金利が上がるからだそうだ。フィッシャー方程式から考えると一見自然だが、今が流動性の罠、つまり名目金利の下限にある事を考えると、実際にそう言えるかは良く分らない。

フィッシャー方程式は、実質金利、名目金利、インフレ率の関係を表し、変形気味に書くと、以下のようになる。

名目金利 = 実質金利 + 予想インフレ率

実質金利が定まっており、それと予想インフレ率の関係で名目金利が定まると言う経験則だ。実質金利は、需給が均衡する自然利子率に定まると考えられる。

実質金利を自然利子率と置くと、需給が均衡する名目金利が定まるが、流動性の罠は考慮されていない。考慮するとこうなる。

名目金利 = max(自然利子率 + 予想インフレ率, 金利下限)

現在の1年物国債の金利から考えて、金利下限は0.1%ぐらいであろう(国債金利情報(平成24年7月4日))。ここで問題になるのが自然利子率で、マイナスのときが少なく無いと考えられている(渡辺(2012)図3:日米の自然利子率)。

仮に自然利子率が-1%だとすれば、1%インフレ率までは名目金利は0.1%のままになるわけだ。2%インフレ率になったとしても、名目金利は1%で収まるし、インフレと景気回復による増収効果が、財政再建の助けになる事になる。

日本以外で自然利子率が負になっている経済があるのかは疑問なのだが、G7でインフレ率と実質経済成長率を見ると正の相関があるし、名目GDP上昇効果も金利上昇幅より大きいので、経験的にもおかしい話ではない。

資本逃避が起きるのでは無いかと言う話も展開されているが、日米金利スプレッドが大きかった2007年までの時期に問題が大きくなった事も無く、テクニカルには国債に関しては、外債と異なり、自己資本比率の計算時にリスク・ゼロとする事ができるので金融機関には常に魅力的だ。また、インフレは長期的には為替レートに反映されるが、FRBやECBが2%のインフレ目標を立てているので、2%までは円安をもたらすとも思えない。

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