インサイダー取引が利益を産む状態であれば一般投資家が市場から排除されてしまうので、資本取引規制が資本市場を発展させると理解されており、実証的にもそう分析されている*1。しかし、ノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマンはインサイダー取引を擁護しているようだ(telegraph)。
この主張は、資本市場がいかに迅速に情報を取り込めるかと言う効率性に依存しており、むしろ効率性に限界がある株式・社債市場を規制し、為替や国債市場を規制しない妥当性を説明しているように思える。
1. インサイダー取引でインサイダー取引を制す
フリードマンは企業が情報を隠したがるので、インサイダー取引を増やさないと、株や債券価格が適性にならないと主張している。つまり、価格に内部情報が反映される仕組みとして、インサイダー取引が重要だと言う事だ。
経営者が自社株を売却するとしよう。経営者は当然、企業の将来性を良く知っているはずだが、一般投資家はそうではない。もし、高値で売り抜けたい場合は、悪い見通しを情報公開せず、一般投資家を騙す可能性がある*2。つまりインサイダー取引だ。
ここで、同じように企業の将来性を良く知っている従業員が、取引に参加しているとする。経営者の売却希望価格>適性価格であれば、それらの間の価格で株を売却しようとするはずだ。経営者は、従業員の売却希望価格よりも低い価格を提示しなおす必要が出てくる。経営者と従業員が競争をするため、株価は常に適性価格になる。
2. 企業の内部者が競争的であるかは疑わしい
インサイダー取引の利潤をインサイダー取引で潰せと言うこの主張は、一理ある。しかし、経営者と従業員が談合するケースや、経営者ほど従業員が情報を知らないケース、経営者ほど従業員が資金力が無いケースを考えると、現実的ではない。ただしインサイダー同士が十分に競争的になりうる資本市場、例えば外国為替や国債市場はインサイダー取引を規制する意味が少ない事が分る。
3. 規制の妥当性は、資本市場の効率性に依存する
インサイダー同士が競争関係にある強度に効率的な資本市場では、インサイダー取引を規制する意味が無い。外国為替や国債では取引している人は膨大で価格が取り込む情報も多く、決定的なインサイダー情報を得る事も難しい*1であろう。しかし、株式・社債市場では、インサイダー取引で検挙された人間が多額の利益を得ている事からしても、そうではない。不動産投信(REIT)も、そのような問題があるようだ(産経ニュース)。
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