2012年7月31日火曜日

高齢者の資産は消えるお金と言う“見込み”

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みんな高齢者が消費する金は消えてなくなると思ってるんじゃ?」と言うエントリーの、高齢者の資産の見解に対して、少し違う見方を指摘したい。

つまり、高齢者の資産は消えると見込まれている。お金は循環するので誰かの資産として代わりに蓄積されそうに思えるが、実際は消費されれば消えてしまう。

1. 所得の無い消費 → 貯蓄減少 → 投資減少

消える理屈は簡単で、銀行は貯金までしか融資できないから、老人が貯蓄を減らして消費すると、企業への融資量、つまり企業の投資量も減ってしまう。老人が使ったお金は、企業の銀行への返済になるわけだ。銀行から見ると、消費と投資が相殺される。こう書くと、経済に貯金も投資も存在しない気がするが、若者は労働で賃金を得ると同時に消費を行い貯金を増やすが、老人は貯金を減らして消費を行うだけの事に注意して欲しい。

2. 問題は、社会保障で政府赤字が増えていること

問題は、貯蓄が減る事ではない。人口が減っていくので、食い扶持が減れば、投資量も減らして問題ない。困るのは、貯蓄の減少ペースにあわせて政府赤字が減らない場合だ。経常収支を無視すれば、貯蓄=民間投資+政府赤字になる。つまり、最終的には政府赤字が民間投資を圧迫する事になりかねない。

政府が歳出削減をすればいいのだが、赤字の原因が複雑だ。公的年金や介護費用、医療費に多額の税金が投じられていて、それが年々増えており、H23年度で26兆円を超えている。若者から老人への所得移転が起きており、赤字を将来世代が払う事を考えると、世代間の不平等を拡大する制度になっているわけだ。

3. 消費税も世代間の公平性を考えた結果

だから消費税の導入なども、所得の無い高齢者にも社会保障費を負担してもらおうと言う意図がある。同一世代内では逆進性が問題になるが、所得税率を引き上げても、引退した高齢者の負担は多くはならない。富裕税の話が出てきたのも、恐らくは同じ目的があるのだと思う。

4. 高齢者の資産は消えるお金と言う“見込み”

もっとも高齢者は遺産を残して死ぬので、貯金が減るとは限らない。だから“見込み”。相続財産は毎年50兆円を超えていると思われ*1平成22年度年次経済財政報告の記述では「70歳以上では・・・消費性向は100%前後であり、貯蓄は取り崩していない」とある。

A. マイナーな部分あれこれ

「擬似科学ニュース」の関連エントリーの内容で幾つか気になった点に関して。

  1. 共産党などが問題にしている内部保留は資本金の一部なので、資産ではなく負債の仲間と言う事になる。株主から見れば内部保留は資産になるわけだが、企業には純貯蓄など無い。
  2. 所得格差は公平性と言う観点からだけではなく、経済成長や社会不安の点からも問題になる(関連記事:所得再配分は経済成長につながる)。
  3. 銀行に預金が大量にあっても、預金金利がほぼゼロならば銀行の負担は少なくなる。海外に投資をしたり、国債を購入したりして、国内民間企業に融資を行わない方法もある。

追記(2012/08/01 10:40):コメントで国民経済計算の可処分所得の使用勘定に貯蓄(純)があり、そこでの貯蓄はストックではなくフローになると指摘を受けた。口語的にストックを意図して貯蓄と記述したが、経営者が自由にできる余った金銭ではないと言う意味で捉えて頂きたい。

*1宮本(2010)「近年のわが国の相続動向とその示唆」の「図表1 相続市場の推移」を参照。

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