非伝統的な金融政策と拡張的な財政出動のポリシーミックスがアベノミクスと考えられており、内閣官房参与にもイェール大学の浜田宏一氏と、京都大学の藤井聡氏、静岡県立大学の本田悦朗氏とその推奨者が名前を並べている(NHK)。しかし、選挙前の喧伝ほど、革新的な動きは無いかも知れない。
1. 財政政策は尻すぼみ中
麻生太郎副総理・財務相の記者会見によると、安倍総理から「国債に対する信頼・信認を確保するため公債発行額をできるだけ抑制」と指示が出ているそうだ(日経)。消費税率引き上げの延期も示唆されているが、雇用情勢自体はリーマン・ショック前まで改善している*1と言われており、延期を実行できるように思えない。プライマリー・バランス目標*2も取り下げていない。
2. 日銀法の改正は条件付
やはり焦点は日銀法の改正の是非と言うことになるのであろう。浜田氏のインタビューなどから考えるに、政府がインフレ目標値を定めて、日銀総裁が説明責任を負うイングランド銀行風の形態としたいようだ(Reuters)。しかし、インフレ目標の設定が無ければ日銀法改正と、安倍総理はまだ日銀法の改正を決断しているように見えない(SankeiBiz)。
3. 日銀法の改正は政治的なハードルが高い
白川日銀総裁がインフレ目標の導入を拒否したとしても、日銀人事が3月・4月にあるので日銀法の改正は必要ない。また、日銀法改正は安倍総裁にとって骨の折れる仕事になる。連立を組む公明党が日銀法改正に否定的であり、自民党は参議院では絶対多数を取っていないことから、みんなの党や日本維新の会の協力を取り付け、衆議院で再可決を強行する必要があるからだ。そして自民党内部でも懐疑派は多い。
4. 円高対策は必要性が無くなりつつある
円高対策なども、為替操作をする能力に疑いがある一方で、その必要性も無くなりそうだ。為替に目標値を設定して市場介入を行えば為替操作国認定を受けかねない上に、ゼロ金利状態の日本では円安誘導を行う余地は少ない。そもそも米国経済が上向いており、ユーロ圏も状況が安定的になっているので、国際情勢から自然に円安に向かっている。
5. 大山鳴動して鼠一匹
ここまでの情勢を見る限り、大山鳴動して鼠一匹と言うことになりそうだ。鼠一匹と言うのが日銀総裁の交替と言うことになるのであろうが、実際のところ、それは民主党時代からの規定路線でもある*3。
*12012年10月時点で失業率は4.2%まで改善しており、2012年の大卒内定率は93.6%と2005年の水準まで回復している。特に中小企業の人手不足は、リーマン・ショック前の高水準となっている。構造的失業率がどの程度には見解の相違があるであろう。OECDで4%、内閣府で3%程度と見ているようだ。しかし、雇用情勢が回復基調にある事は変わらない。
*2自民党は2010年に財政責任法案で2020年までにプライマリーバランス黒字化を目標に掲げている。
1 コメント:
>大山鳴動して鼠一匹
たぶん、鼠はプロパガンダのネタ、あるいは俗論が増えるって事な気がします。
金融緩和で円安にできるんやー。とか。
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