2012年12月25日火曜日

「日本国債」の本当の問題

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『NHKスペシャル「日本国債」の本当の問題』の感想文で、政府債務は問題ないと主張しているエントリーを見かけた。元の番組の構成が悪いのだろうが、無限に国債を発行できそうな論調になっている。以下の事ぐらいは認識して欲しい。

  1. 今の公債残高の増加ペースでは、遅かれ早かれ破綻する可能性がある*1
  2. 破綻とは、高インフレ(e.g.年率10%以上)を誘発すること*2
  3. 高インフレは決済機能や資本蓄積を阻害するため、経済活動を阻害する*3
  4. 少子高齢化の影響で経常収支が赤字になれば、破綻リスクは高まる*4
  5. 1997年の消費税引き上げ後の税収減は、同時期に行われた所得・法人減税の影響が大きい*5
  6. 純債務で見ると累積債務が少ないように主張しているが、政府資産に収益を生む、民間で言う資産はほとんど無い*6

最後は政府が増税してでも通貨価値を守る、つまりインフレを抑制すると言う安心感があれば破綻しないので、破綻するまで無税国家を訴えるブログが出てくるのは不自然では無いのだが。

*1日本政府は、かなり長い間、ドーマー条件を満たしていない。社会保障費の増加で、今後も満たす見通しは立っていない(日本の財政関係資料)。Arai and Ueda(2012)は世代重複モデルを用いたカリブレーションで維持可能な基礎的財政収支の赤字と経済成長率を分析している。Imrohoroglu and Nao Sudo(2011)はOLGでは無いが実質3%成長、消費税15%でも破綻するとしている。

*2ユーロやドルなどの外国通貨建ての場合はデフォルトしやすいが、内国債の場合は日銀が国債引受を行い、インフレを引き起こす事で会計上の破綻を免れることはできる。ケーガン・モデルやFTPLを参照。

*3数%のマイルドなインフレが経済成長率を落とすわけではない(関連記事:緩やかなインフレは財政負担?)。ただし、番組でインタビューされていたロゴフは超低金利でも財政赤字は低成長をもたらすと指摘している。

*4ライフサイクル仮説に立てば、高齢者は貯蓄を消費に回す。貯蓄と投資の差になる経常収支は、減少する。ただし年金世代の消費は抑制的で、遺産を少なからず残すので、ライフサイクル仮説が成立しているかは疑問がある。相続財産は毎年50兆円を超えていると思われ(宮本(2010) 図表1)、平成22年度年次経済財政報告の記述では「70歳以上では・・・消費性向は100%前後であり、貯蓄は取り崩していない」とある。

*5鈴木(2010)は「所得税額を計算する基準となる課税ベースが消費税率引き上げとともに実施された所得税減税によって縮小している」と指摘している(関連記事:消費税率引き上げの影響試算に抜けている視点)。

*6公的年金の積立金は少子高齢化で急激に減少すると思われており、ダムや道路などは収益を生むものではないし、国際機関等への出資金も売却はできない(政府の負債と資産 : 財務省)。

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