以前のエントリー「増税すれば総需要管理政策は維持可能」に関連して、タイトル通りの質問が「擬似科学ニュース」から来たので、説明してみたい。モデルに依存するわけだが、大抵は生産関数の上方シフトになる。
これだけ言われてもピンと来ないであろうから、図示する。モデルは以前と同じもので、ケインジアン的に需給ギャップがある世界を想定する。ノーテーションは、均衡はE、消費最大点はEmaxに変更しておく。技術革新で生産技術や付加価値が改善したら、F1(I)がF2(I)に上方シフトする。
均衡はE1からE2に改善した。需要も供給も投資も増えている。しかし、相変わらず消費最大化(≒GDP最大化)はされていない。E2maxが実現されていないからだ*1。つまり需給ギャップ*2は存在する。技術革新は歓迎すべきことだが、ここでの需給ギャップは解消しないわけだ。
消費性向cが調整されて赤破線の傾きが変化するか、公共投資の拡大が無いと、需給ギャップは埋まらない*2。逆に言うと、景気対策に技術革新は必要ではないと言うことになる。
補足1. 某経済評論家の問題点
実力以上の経済にはならないと言う主張は恐らく正しいのだが、それはマクロの生産関数(S=F(I))に制約されると言うだけで、マクロの需要関数(D=I/(1-c))に問題があると言う指摘とは噛み合わない。むしろ需給ギャップなど無いと言う方が適切に思える。
また、公共投資が肯定されるのは、複数均衡があり高水準均衡に移れるときと言う話は、少なくとも教科書的なケインズ政策の文脈ではない。開発経済学のビッグプッシュモデルとの混乱が見られる。
補足2. 公共投資による技術革新
技術革新をもたらすような、ここではF(I)を変化させるような経済政策があれば、需給ギャップの解消以上の効果をもたらすわけで、それを否定する人はいないと考えられる。少子化対策などは可能性がある*4かも知れない。
補足3. リフレーション政策との関係
リフレーション政策は投資促進政策になるので、あえてこのモデルに当てはめると投資性向(=1-c)が改善される事になる。
補足4. モデルに欠けているモノ
このモデルは、入門マクロ経済学の教科書にあるような総需要管理政策に、供給サイドの制約をつけ加えるとどうなるかを示している。技術革新の効果も議論できるが、金利*5や資本ストックは考慮していない事に注意して欲しい。また、ケインジアン的な家計行動の想定には疑義があり、現実には財政政策が有効に機能するとも限らない。
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