元官僚の高橋洋一氏が、マンデル=フレミングの法則に触れつつ、90年代の公共投資の無効を主張している(ZAKZAK)。ちょっと如何わしい理論になっているので、指摘をしておきたい。
高橋氏は実質金利で為替レートが裁定されると主張しているが、名目金利で裁定されると考える方が自然だ。マンデル=フレミング・モデルでは実質と名目の区分けが無いが、明らかにモデルでの為替レートは金利平価になっている。
金利平価では、投資家は投資先は世界中のどこでも良いが、消費は自国で行わないといけない。消費時に使う将来の為替レートは所与のインフレ率によって先に決定されており、両国の通貨価値を名目金利で割り引くことで、現在の為替レートが決定される。このモデルでは名目金利だけを考えて、投資をする事になる*1。マンデル=フレミング・モデルが機能するには、名目金利*2が上昇する余地が無いといけない。
ここで日銀はゼロ金利政策で、しかも現在は量的緩和を行っている事に気付いて欲しい。金利が上昇する余地が無い。マンデル=フレミング・モデルでは、公共投資の前後で金利が同一になる事はあるが、名目金利の上昇の余地が無い場合はモデルの前提が満たされないのだ。高橋洋一氏も「金融政策が一定の下で」と注釈をつけているが。
高橋氏は90年代後半の公共投資と純輸出の相関から同モデルが成立していると主張しているが、それ以上に為替レートとの相関を見る必要があるであろう。ゼロ金利下の公共投資は1999年~2008年はGDP比でどんどん下落しているが、その間の為替レートは円高のときも円安のときもある(図録▽円の対ドル・対ユーロ為替レートの推移, 図録▽公共事業の動向(日本と主要国))。
1 コメント:
福田 慎一教授の論文(P.198)
http://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk032/zk032l.pdf
------------------引用開始-----------------------------
したがって、財政支出の拡大が為替レートや経常収支、それに国民所得に今後どのような効果を与えていくかは、今後、ゼロ金利の状態がどれだけ持続していくかに依存することになる。すなわち、ゼロ金利制約が有効な限り、財政政策はマンデル・フレミング・モデルとは大きく異なり、為替レートや経常収支には小さな効果しか与えない一方、乗数効果を通じて総生産量に大きな効果を与え、少なくとも景気の下支えには寄与することになる。
----------------------引用終わり-----------------------
福田論文にもある通り、ゼロ金利下では影響は小さいみたいですね。
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