2012年7月29日日曜日

三橋貴明が“ブラック・エゴイズム”な人の件

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経済評論家の三橋貴明氏のブログが某所で紹介されていたので、そこのエントリーを読んでしまったのだが、ノーガード戦法を取っているらしくツッコミどころ満載だったので、ツッコミたい。

TPPで国家主権が犯されるとか言っている人らしく、それに相応しい主張になっていた。前半部分でノーベル賞経済学者のクルッグマンを紹介しつつ、後半で独自の主張を展開するのはいかがなものであろうか。

上から順番に、目に付いた問題点を指摘していこう。

三年ほど前にクルーグマンを読んだときは「インフレ・ターゲット」を中心に書いていましたが、今回は明確に「財政出動の必要性」を訴えています

三橋貴明氏が、クルッグマンのIt's Baaack!論文を読んでいない事が判明。1998年か、それ以前から財政政策が不必要なんて言っていないし、どちらかと言えばポリシー・ミックスを主張している。

追記(2012/07/29 08:15):コメントでツッコミがあったのだが、以下は「さて、本日後半はお久しぶりのTN(西)様からのご投稿です」と言う事らしいヽ(´д`)ノ

世代間格差がこれだけ深刻化しているにもかかわらず、企業は新規採用を減らし、正規雇用を減らし、派遣採用を増やして、若年世代を破滅に追いやってまで利益を追求するのか

世代間格差は政府の所得再配分政策の問題。企業が利潤最大化行動を取るのは当然。労働者も賃金や待遇を最大化し、均衡賃金が定まる。中小企業診断士は、企業側の人材確保の苦労話は聞かないのであろうか?

また、データ認識がおかしいかも知れない。卒業するまでの内定率で見ると大きな変化は無い(図録▽就職内定率の推移(大卒))ので、新規採用が過度に減っているとも言えない。内定が出る時期が遅くなっているだけですよ。

他にも正社員を無くせば利益が上がるとも限らないし、雇用が無いより派遣でもある方がマシだとか、ツッコミ所が多すぎる。

日本の社会は過去50年、一貫して雇用者、サラリーマンが増え、自営業が減り、そして、出生数も減り続けています

見せかけの相関。つまり時代的に同時にサラリーマンの比率が増えると同時に、少子化が進んだように思える。サラリーマンと自営業の子どもの数比較が必要。

現状の内閣府調査でさえも女性の望む子供の数が2.3人に対し、実際は1.2人と乖離があり、子供を産めない理由においても金銭面だったり出産後の職場環境が無かったりと、産みたくとも産めない女性が大勢います

どの内閣府調査か出所を明記するべき。なお、(1)所得が少ない都道府県別の方が特殊出生率が高く*1、(2)国民所得が低い時代の方が特殊出生率が高く、(3)所得と二人目以降の子どもの数に相関が見られ無い*2ので、経済的事由で出産ができない事が主要因かは分からない。

企業は国民という国の資産を使って利益を得ているにもかかわらず、それを国にも労働者である国民にも還元しない

企業は従業員に賃金を払っているし、法人税も払っている。

最後の方で企業は『破滅的利己主義、ブラック・エゴイズム』に陥るので、格付けしろと言っている。中小企業診断士の仕事が増えるから三橋貴明氏には良いのであろうけど、政策的には労働法を守らせる方が手っ取り早いであろう。監査の仕事を増やせと主張するのは、ブラック・エゴイズムでは無いのであろうか?

企業格付けに関しては、中高年ニート対策としてある一定程度の中高年中途採用をお願いしたり、若年者未婚率が問題ならば、格付け企業同士で若い社員のお見合いをセッティングしてもいいでしょう

どこの村社会、もしくは共産主義国家なんだ、これ。

*1賃金よりも、養育コストの上昇が原因なのでは無いかと考えられる(関連記事:2007年のデータで見る出生率決定要因)。

*2平成17年版国民生活白書を参照

4 コメント:

ぶらっくば~ど さんのコメント...

根本的な所を一つ指摘すると、一番上を除いてご指摘の部分は【読者からの投稿】ですよ。

脳環境 さんのコメント...

三橋氏をノーガード戦法と書いてるこのブログこそノーガード戦法でしょう。
突っ込みどころ満載ですが、軽く突っ込んでおきます。

>(1)所得が少ない都道府県別の方が特殊出生率が高く*1、
>(2)国民所得が低い時代の方が特殊出生率が高く、
>(3)所得と二人目以降の子どもの数に相関が見られ無い*2ので、経済的事由で出産ができない事が主要因かは分からない。

所得が少ない都道府県は「元から特殊出生率が高い」ので関連性が薄過ぎでしょう。背景が違う地域を単純比較する手法はアホらしすぎます。
そもそも、このブログエントリがソースに挙げた国民生活白書にも「一定の経済力を下回ると子どもを持つ経済的負担感が高まり、子どもを持ちにくくなると考えられる。」と明記されているのは無視ですか?


そもそも、本人たちが
明確に経済的事由で出産しない・できないと明言しています。


予定子ども数が理想子ども数を下回る理由:「お金がかかりすぎる」が最多の6割
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou14/doukou14.asp

結婚しない理由:「金銭的に余裕が無いから」が3割
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h15/honbun/html/15321030.html


これでも、経済的事由で出産ができない事が主要因でないと言えるとしたら、かなり頭がおかしな人だと思います。

Unknown さんのコメント...

>>三年ほど前にクルーグマンを読んだときは「インフレ・ターゲット」を中心に書いていましたが

これ、普通に読めばインフレ・ターゲットがメインだったと書いてるだけでは?

>クルッグマンのIt's Baaack!論文を読んでいない事が判明。1998年か、それ以前から財政政策が不必要なんて言っていない

そもそも元のエントリーで財政政策が不必要なんて書いてないですし・・・
寄稿に気づかなかったりと冷静に読めていないのではないでしょうか?

uncorrelated さんのコメント...

>> 脳環境 さん
> 都道府県は「元から特殊出生率が高い」ので関連性が薄過ぎ

その「元から」の説明部分が重要だという指摘です。都道府県や時系列データがそれを示しています。日本の特殊出生率はオイルショック後の1970年代後半から低下傾向が始まりますし、所得水準が上がるほど、特殊出生率は下がっています。
フォーマルには、戸田(2007)が雇用環境の改善が出生率を向上させる効果が僅かだと指摘しています。

http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/07j007.pdf

アンケート結果と統計上の数字が異なるのに違和感があるかも知れませんが、相反する場合は、統計上の数字から解釈すべきでしょうね。

>> 斉藤和義 さん
> 寄稿に気づかなかったりと冷静に読めていないのではないでしょうか?

ざっと読んで、ざっと書いてしまいました(><)

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