2012年7月2日月曜日

扇動のための不当表示としての「リフレ派」?

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タイトルはブログ「今日の雑談」のあるエントリーから。さて、「リフレ派」は不当表示なのであろうか?

通貨膨張政策(リフレーション政策)を主張する人々を、リフレ派と呼ぶのは自然に思える。中身はまともな経済学者から、理論的な背景が不明確な人々まで色々いるし、インフレ・ターゲティングや財政政策の是非への見解が分かれるので、統一した何かと言うわけでは無い。

妄信的な人々がいて気に障ると言う意見もあるが、主張で分類するのが妥当だと思う。

1. リフレ派とインタゲ派を分類

そうは言いつつも、量的緩和が全てを解決するとしているリフレ派と、インフレ期待の形成が重要だと考えるインタゲ派に分けた方が良いとは思う。量的緩和だけの効果には限界がある事は分かっている*1一方で、高い目標インフレ率にはある種の投資促進効果が期待出来る事は理屈的に分かりやすいからだ。

追記(2012/07/02 19:50):「インフレ期待の形成が重要だと考えるのがリフレ派」と言う指摘があり、クルッグマンらを含めるとそういう事になるが、高橋洋一氏の以下の主張を見ていると、日銀B/Sの拡大が予想インフレ率の上昇をもたらすので、日銀B/Sの拡大のみで有効な政策だと主張している。

追記(2012/07/02 20:00):「その前にリフレ派なんてはてな界隈とtwitterの一部(大抵はてな民と被ってる)でしか知られてないと思うんだがww」と言うコメントがあったのだが、確かに2年前には知らなかった。Krugman(1998)やHayashi and Prescott(2003)の存在は知っていましたよ、もちろん。

追記(2012/07/02 21:30):修正ソロス・チャートについて言及が無いと指摘があったが、そこで指標に用いられる通過は(現金+法定準備額)となっているため、量的緩和の結果で日銀当座預金が増えた場合は指標に影響を及ぼさない。

2. インフレ目標の引き上げは有効

長期投資を行う企業を考えよう。長期の景気やインフレ率は予測がつかない。ここで中央銀行が、(1)インフレ率1%でも金利を引き上げ景気を減速させるとする可能性と、(2)インフレ率3%ぐらいまでゼロ金利を維持する可能性があると考えて欲しい。(1)を信じるか、(2)を信じるかで投資判断が変わってくる。そして、(2)を信じた場合は投資が行われ、インフレ圧力が高まる。緩やかなインフレは、価格調整速度の改善や企業負債の軽減から、国民所得の向上をもたらすので、連鎖的な景気改善効果をもたらすと考えられる。

3. インフレ目標の引き上げに弊害は少ない

ここで重要なポイントは、既に十分に量的緩和がされている状況ならば、インフレ目標を宣言するだけで良いと言うことだ。日銀が恐れる見合い資産不足のリスク*2が量的に高まる事はない。自然利子率がマイナスと言われている状況*3であれば、インフレ率が多少上がっても名目金利は低いままで、財政悪化をもたらす事も無いであろう。日銀人事が変更になれば、インフレ目標の引き上げは期待できる。

4. 効果は限定的だと考えられる

ただし、デフレが経済に与えている影響は限定的と言う話もある*4し、インフレ目標の引き上げが為替レートに即効性の影響が出るとも思わない*5。政策的な効果は限定的だと思う方が妥当に思える。費用対効果と言う面では興味深いと思うのだが、万能ツールのように考えるわけにはいかない。

*12001年から2006年の量的緩和のときの計量分析は多数行われているが、統計的に有意にインフレ率や為替レートに作用した形跡は確認されていないように思える(関連記事:何だか怪しい量的緩和の計量分析)。

*2大雑把には日銀が保有する国債の価値は、額面/(1+金利)となる。このためインフレ等で金利が上昇すると、国債の価値が下がり、国債の売却で市中にある日銀券を十分回収できなくなる。

*3生産年齢人口の減少を反映して日本の自然利子率は低いと考えられるので、そこに何らかの大きな資本減耗が発生すれば負の自然利子率がもたらされる可能性がある(平田(2012))。1998年~2002年ぐらいまで実際に負であったと言う報告もある(小田・村永(2003))。

*4日本は、2001年から2010年の一人当たりGDP成長率で見ると、EUや米国よりもよい(The Economist)。生産年齢人口の減少も大きい(関連記事:「人口減少デフレ論」を考察する)。

*5一般には、短期的には名目金利差、長期的にはインフレ率の差で変化すると考えられる(翁邦雄「金融政策と為替レート -為替レート決定理論とソロス・チャート」経済セミナー,2011年10・11月号 (No.662))。2月に物価安定の目処で為替レートが動いたように見えたのは、米雇用統計が良好であった事が原因であろう(関連記事:日銀の量的緩和は円安を誘導できるか?)。

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