2012年7月11日水曜日

消費税アップは15年後でよい ─ 社会保障の削減ができれば by 原田泰

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タイトルは『文藝春秋』2009年1月号のエコノミスト原田泰氏のエッセイから。

少子高齢化にともなう社会保障費の拡大に対して、増税と年金給付額や医療費の削減を行うべきだと言うのが、一般的、もしくは代表的な経済学者の主張だ(DIAMOND ONLINE, nippon.com)。対立する主張として、原田泰氏らの増税不要論がある。ただし、原田主張には強い条件がついている。

鈴木・原田(2010)を見れば分るが、社会保障費の大きな抑制を前提としている。現行制度のままだと年金給付額や医療費は、マクロ経済スライド*1の程度でしか抑制されない為、受給者一人あたりの社会保障支出を削減する制度改正を行わないと、原田氏の増税不要シナリオの条件は満たされない。

消費税増税反対論者が、同時に年金給付額や医療費の大幅削減を謳っている事はあまり無いので、原田氏の主張は誠実ではある*2。しかし、原田主張から消費税アップは15年後でよいと言う人は、それは年金給付額や医療費の大幅削減を意味する事には留意する必要がある*3

*1所得・賃金の伸び、労働人口の減少、平均余命の伸びから、年金給付額の増加を調整する方式。なお減少方向では調整されない為にデフレでは機能しない。また、名目成長に比例して、年金給付額が増大する。

*2原田氏もグロス債務残高ではなく、将来の大幅減少が予想される公的年金積立額を引いた純債務残高を図表に用いるなど、政治的な振る舞いが無いわけではない。

*3もっとも「日本の財政関係資料」の数字を把握した上で議論している増税反対者がどの程度要るのかは分らない。

1 コメント:

crossroad1984 さんのコメント...

いつも質の高い記事をありがとうございます。
正直言って消費税増税反対論者のほとんどは反対のための反対という感じで、個人的には真面目に論戦吹っかけても仕方がないかなと感じています・・

医療費の削減については小泉-竹中路線で機械的に削減していました(正確に言うと給付の自然増分を機械的に削減していました)が、結局は「医療崩壊」の一因となってしまい頓挫しました。(因みにあの政策は失敗だったという意見もあると思いますが、僕としては「機械的な社会保障費削減は上手くいかない」という点が明確になっただけでもある意味成功だったと考えています。”失敗は成功の元”とも言いますし。)
ですので社会保障費の内の医療支出の部分については少なくとも今後は機械的な削減は不可能でしょうね。

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