参院予算委員会で民主党の小西議員が安倍総理に憲法クイズを仕掛けたことが話題になっている。
安倍総理は著名憲法学者の芦部信喜を知らないと答えたのだが、これによって熱心な憲法改正論者である安倍総理が憲法解釈を理解していない懸念が出てきた。
これは安倍総理の改憲論の妥当性に疑問を抱かせるものだ。憲法解釈が分からなければ、現在の日本国憲法の問題点も理解していない事になるからだ。
1. 憲法は憲法解釈無しでは意味不明
日本国憲法は事細かに書かれた文章ではないので、実際には憲法解釈とともに機能している。例えば、「公共の福祉」と言う表現は、通常は一元的内在制約説により、人々の権利と権利が衝突するときの調整を図るための概念として理解されている。
2. 現行憲法を理解しないで改正を訴えている?
芦部信喜と言う憲法学者を知らないことが問題なのでは無く、憲法を理解するための憲法解釈を知らないまま、憲法改正を訴えている可能性がある事が問題になる。つまり、安倍総理は現行憲法の問題点を知らないけれども、憲法改正を行いたいと主張していると考えられるわけだ。
3. 安倍総理の憲法改正論は内容は二の次
安倍総理は前文がみっともないと言っていた事はあるが、現行憲法の内容に触れることは少ない。2012年10月7日放送のTV番組「たかじんのそこまで言って委員会」では、安倍氏は以下のように理由を述べている。
- 今の憲法は当時のGHQ進駐軍の手によって作られた憲法である
- 憲法が出来て60年以上・・・時代にそぐわないものがある
- 自分たちの憲法を自分たちの手で書いていく。それによって真の独立を勝ち取ることができる
(1)と(3)が同じことを言っているのが気になるが、条文の内容よりも、誰がどういう経緯で書いたかを問題にしているようだ。
4. 憲法改正のための憲法改正は改悪になりかねない
小西議員の憲法クイズには違和感もあるのだが、安倍総理が日本国憲法を理解しないままに憲法改正を訴えていると言う小西議員の指摘は無視できないものがある。良く考えずに大日本帝国憲法に似せれば、当然、戦前に発生した様々な問題が出てくる可能性がある。
国会審議では「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に置き換えることで、「人権とは全く違う価値によって、この世の中をコントロールすることが可能になる」と小西議員は主張しているが、憲法解釈に関心の無い人々には小西議員の主張すら理解できないと思われる。
5. 自民党そのものが混乱している
実は安倍総理だけの問題ではない。自民党憲法改正草案Q&Aを見ていくと、現行憲法にある問題が憲法改正草案でどう解決されるのかが良く分からない部分がある。
例えば「公共の福祉」の部分は、「憲法によって保障される基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らか」にすると明記されている一方で、「個人が人権を主張する場合に、他人に迷惑を掛けてはいけないのは、当然のことです。そのことをより明示的に規定しただけ」ともあり、説明に一貫性が無く、どうしたいのかが分からない。
1 コメント:
この件(平成25年3月29日参議院予算委員会 民主党・小西ひろゆき)の動画は
youtube.com/watch?v=wckT-xF0v8w
26:35~で確認できます。
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