ある政治学者が「保育と政治」と言うエントリーを書いていたので拝読した。
都市部での待機児童の問題は、二つの理由に起因する。
- 低年齢の幼児の保育コストがとても高く、現在の低価格の保育所は補助金無しでは成り立た無い。
- 都市部で従来は専業主婦だった層が外部労働に従事するようになった。
ここで政治的に、
- 都市部で補助金の増額を正当化できるのか
- 保育所の利用者と待機者の間で対立が生まれるのでは無いか
と指摘されている。しかし、論点で公平性を重視しているのだが、もっと効率性に注視し、社会的余剰の最大化に議論を絞った方が分かりやすいと思う。
1. キャリアパスまで考えた補助金の正当化を
補助金の是非は、キャリアパスまで考えれば効率性で議論できる。長期間の労働市場からの離脱は、労働生産性と賃金を落とすことになる。子どもが1歳のときに20万円/月を払って赤字になっても、就業した方が母親*1の生涯所得が向上するかも知れない。しかし母親は生活費も要るであろうし、金融機関から安易にお金を借りられない*2。すると政府が保育に補助金を出す一方で、人生の全期間から広く薄く徴税すれば、社会的厚生が改善する*3。
2. 市場メカニズムで料金を決める
(b)の保育園の入所枠の割当は、料金が需給を反映するようにした方が、効率的になるであろうし、不透明性が無くなる。例えば入札を採用してもいい。入所希望者全員に払っても良いと思われる料金を申請させ、申請料金が高い順に入所させていく。実際の料金は個々の申請料金に関わらず、入所できた人の申請料金の中で最も低い金額にすれば良い。所得や資産の追跡も不要だ。
3. 劣悪な保育サービスの提供
ブログのエントリーでは触れられていなかったが、認可保育所の基準が必要以上に厳しすぎると言う議論もあり、補助金の額以外にも議論すべき点もあるであろう。基準自体の妥当性もさることながら、貧富に関係なく子どもの安全性を一律の基準で確保しようとする必要はあるであろうか。
4. 公平性をどこで担保すべきか?
効率性を重視したら、まずは専業主婦、次に低賃金の労働者は離脱していくであろう*4から、夫婦ともに稼ぎの良い「パワーカップル」が保育園を利用しやすくなるのは確かだが、所得税もあるし保育所への入所で格差を是正しなければいけない理由も無い。「保育という再分配的なイメージの強い政策」と言うのは理解できるが、そのイメージに従う必要は無いであろう。
*1厳密には性別に関わらず保護者と言う事になる。母親に限らず、独身の子持ち男性なども同様の問題を抱えているはずだ。
*2経済学的に言えば、母親は消費平準化したいが金融制約にさらされている。
*3「児童労働について経済学的に考える」とほぼ同様の構造で、数理的に説明できると思われる。ただし非モテの男性には厳しい制度になり、パレート改善にはならないであろう。
*4低賃金労働市場の方が流動性は高く、キャリアの穴が問題になりづらいであろう。
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