実は消費税だけではなく、所得税と相続税の増税も行われる(*1)はずの「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」だが、そろそろ増税後の施策について議論が展開されても良いと思う(*2)。
実際のところ、消費税を10%にする程度では財政破綻は免れえず、政府支出の切り詰めが必要になるからだ。
1. 政府債務の増加理由は、減税と社会保障費の増大
政府債務が積みあがっている理由は大きく二つある。一つは所得税・法人税・相続税で減税を繰り返したため、税収が低下した事だ(*3)。一つは公的年金や生活保護などの社会保障費の支出が、高齢化で増加した事だ(厚生労働省)。公的年金は保険料を徴収しているが、それで間に合っているわけではない。
2. 増税は行ったが、社会保障費の削減は手付かず
一般会計を圧迫しているのは確かで、社会保障予算を特別会計にして予算キャップを付けろと言う主張もある(経団連タイムス No.3076 (2012年3月1日))。これは財政の硬直化を招くので問題があるが、年金の国庫負担率を下げるなどしないと、増税など焼け石に水で財政破綻する(*4)。
3. 社会保障制度は方針が定まったものも、そうでないものもある
既に年金の給付開始年齢の引き上げや、それに伴う再雇用制度などが厚生労働省から提案されているが、まだ立法されていない。厚生年金基金の予定利率5.5%の問題(*5)や、生活保護費の制度設計上の問題(*6)も改善が必要であろう。増税法案は問題の片方である政府収入を改善するが、政府支出の方はまだ必要な法案が残っている。
4. 選挙を行う必要のある争点もある
社会保障制度は世代間の利害調整の必要性や、家族観の問題もあり、全ての改正を即座に行う事はできないであろう。テクニカルに定める事ができない部分もある。消費税が民主党の公約違反になる事からも、一度、総選挙で各党の姿勢を確認してみるのも良いかも知れない。
追記(2012/06/22 07:00):所得税と相続税に関しては2013年度に先送りになっていた。三党合意文書では、今回の政府案をベースに改正を行うとある。
*1所得税の最高税率の引上げと相続税の基礎控除の引下げなので貧乏人は関係ないためか、盛り上がりに欠けるようだ。
*2まさかの政治ドラマで民主党から大量造反が出るかも知れないので、政治家は言えないであろうが。
*3バブル前の1986年はGDP比税収の税負担率は25.2%となっているが、リーマンショック前の景気の良い2007年は24.5%、2011年は22.0%に過ぎない(総務省 - 国民負担率の推移(対国民所得比))。
*4社会保障関係費は一般会計で29兆円に迫っており、給付全体で見ると100兆円を超えている。
*51999年10月に予定利率の引き下げが可能になったが、大半(581基金中507基金)の厚生年金基金は実現困難な予定利率5.5%を維持している(読売新聞)。
*6血縁者の所得追跡の限界による“不正”受給問題や、受給漏れの問題がある。前者は血縁者の所得などの情報を行政が調査する権限が無い(読売新聞)ためで、後者は市役所の担当者の不誠実な対応(雨宮処凛,藤藪(2007))が原因のようだ。
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