片山さつき参院議員が、吉本芸人の河本準一氏の母親の生活保護の受給を問題視し始めてから一ヶ月が経過した(片山さつき Official Blog)。生活保護は近年増加が問題になっている事もあり、法的問題、倫理的問題、制度的問題と色々な面から議論がされている。しかし、それぞれの論点を整理しても、河本氏個人のケースを取り上げる必要は無いように感じる。片山氏の最近の行動は、実は政治キャンペーンの問題なのかも知れない。
1.【法的問題】河本氏の母親は不正受給を行った?
片山さつき氏の問題喚起は法的問題であったが、釈明会見によると河本氏は市役所と連絡を取り合っており、その上で氏の母親は生活保護を受けているので問題は無かったようだ(絵文録ことのは)。これ以上は、市役所側が異議を申し立てないと分からない。
2.【倫理的問題】河本氏の母親は生活保護に相応しくない?
現行法規では家族がなるべくサポートする事を求めているので、売れっ子芸人の母親は生活保護に相応しくないと言う主張もある。ただし、子が親をサポートすべきかは状況によるし、近年は経済的に子が親を支援する事に対する理解は減少している(第4回全国家庭動向調査-図8)。
河本氏の妻がお水で収入があったのだから、母親をサポートできたと主張する人々もいるのだが、不安定な職業でもあるし、河本氏と妻自身の家計を支える必要もあるのだから、それは無理があるように思われる。妻側の親も生活が苦しかったようだ。また、経済評論家の板垣英憲氏は吉本芸人より暴力団の方が問題では無いかと指摘している。
3.【行政的問題】生活保護の認定方法が甘い?
制度的問題として生活保護の審査が甘すぎると言う批判もあるようだが、今年の1月に生活保護を希望していた姉妹が病死及び凍死状態で発見されたと言うニュースがあるぐらいで、実際には生活保護申請は容易ではないと言われている(雨宮処凛、Everyone says I love you !)。
また生活保護者の近い血縁者の収入を完璧にトレースし受給資格の審査を厳密に行うには、社会保障番号に連動したデータベースの利用なども必要であろうし、インフラ面の充実を待つ必要がある。札幌市の事例では、『(三親等内の親族で)月収などの生活状況を伝えない人もおり、同市の担当者は「権限もなく、追及しようがない」』と言うことだそうだ(読売新聞)。どちらにしろ、河本氏の個別事例だけでは判断しづらい問題だ。
4.【制度的問題】生活保護の内容が不適切?
現物支給にすべきだとか、生活保護の給付金額を引き下げるべきだとか言う指摘もある。モラルハザードの問題もあるので社会保障の制度設計は常に問題になっているが、これらの指摘が的を得ているかは疑問だ。
現物支給にすると経済効率が落ちる。ゲームやパチンコなどの遊楽費に月数万円も投じる受給者もいて、それが大きく報道されると納税者としては不愉快な気持ちになるが、それが多数派と言うわけでもない。パソコンや携帯電話が無いと就職活動も困難になる昨今なので、役人や妥当な使途を規定精査するのは難しいであろう。基礎年金よりも高い生活保護を問題にしている人もいるが、基礎年金は家族からサポートを受ける事ができ、多くの資産を持つ人でも受給する事ができるので性質が異なる。
制度設計を改善するのであれば、負の所得税/ベーシック・インカムの導入を本格的に議論した方が良いであろう(関連記事:生活保護制度とベーシックインカムと負の所得税の違い)。
5. 芸人を叩いて有権者に媚びる
片山さつき氏が特定の芸能人を批判した理由には疑念を抱かざるを得ない。不正行為が無い場合は公益性があるか疑問な情報だし、不正行為があったとしても、かなり例外的な事例だからだ。貧乏人が高所得者になるケースはそうはない。そもそも扶養義務親族から十分なサポートを得られているかが問題なのであれば、国会質問を行うか、役所に調査させれば良い。片山さつき氏は以前に国会で、平成22年度で3.3兆円の生活保護費のうち、1,200億円が外国籍で、保護率は日本人の2~3倍になり、その2/3が朝鮮半島出身者である事に対して政府批判を行っている(Youtube)。
生活保護制度の受給者は、“まともな人間”ではないと言う認識が、世間一般にあるのは否定できないであろう。実際、“まともな人間”ではないケースは多い。労働意欲か労働能力が欠如しているからだ。そういう人々を助ける事に意義を見出せない層がいる事は否定できない。その存在が危ういものでも受給者の“不正”を叩く事で一定の支持を得る事もできるのであろう。しかし組織や歴史認識はともかく、誰か個人を叩いても建設的に思えない。片山氏の地元の看板を見ていると、ハート・マークで有権者に媚びているように見えるが、政治姿勢まで同じにする必要は無いのでは無いであろうか。
3 コメント:
片山さつき氏が特定の芸能人を批判したことが大前提ですが
そこのいきさつがどうも曖昧なんですよね
片山が河本か吉本を呼び出したわけでもないようです
事が大きくなったのは、吉本が 片山に「プライバシーの問題だ」と行ってきて、報道陣が片山に取材したあたりからです。
切札ですか・・・。政治的博打の切り札なら、行動に整合性があるような。
いずれにせよ、素人政治家の域を出ず。
片山を叩いてマスコミに媚びる
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