2012年6月8日金曜日

池田信夫が理解できない価格硬直性と金利非負制約

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経済評論家は自分が何を勘違いしているのか、永久に気付かないのかも知れない。池田信夫が、京都大学教授の藤井聡氏の主張への批判で、デフレで貨幣錯覚は起こっておらず、予想されたデフレだから経済活動に中立だと主張している(BLOGOS)。しかし、貨幣錯覚が原因かは分からないが価格硬直性はあるし、金利の非負制約を考えるとデフレの弊害が無いとは言えない。

1. 価格硬直性

まずは価格調整速度が十分では無いことを示そう。家賃と住宅地価格の乖離を見て欲しいのだが、バブル崩壊後に趨勢に乖離が発生している。住宅価格は住宅地価格と連動している。価格調整速度が十分なら、この二つは連動するはずだ。なお、家賃は消費支出の2割を占める(関連記事:家賃に見る価格の下方硬直性)。

2. 金利の非負制約

デフレの問題は貨幣錯覚だけではない。インフレ予測が正しくマイナス名目金利を予測したとしても名目金利はマイナスにならないし、手数料などもあるので下限はゼロより上になる。

さて名目金利は、需給がクリアされる自然利子率+インフレ率である必要があるが、生産年齢人口の減少を反映して日本の自然利子率は低いと考えられる(関連記事:世代重複モデルで見る少子高齢化と利子率)。白川日銀総裁も言及したことのある小田・村永(2003)は、自然利子率はマイナスである期間も多々ある事を示している。以下は彼らが計測した自然利子率だ。

自然利子率がマイナスかそれに近いのであれば、インフレでないと実質金利がそれに一致する事は無い。即ちデフレは弊害をもたらすわけだ。

3. 本当に頭が悪いのは誰なのか

細かいミス、つまり「実質利益=(名目売り上げ-名目費用)/予想インフレ率」は「予想」が余分か、「実質利益」に「期待」が抜けている事は看過しよう。しかし、価格硬直性や金利非負制約の問題が起きていないとは言えない。池田信夫はデフレの問題が何かを考察した上で主張の裏づけをとって来ないので、議論に耐えられる根拠を示せていない。池田信夫氏は藤井聡氏を頭の悪い学生のように例えているが、本当に頭が悪いのは誰なのであろうか?

A. 藤井聡氏のプレゼン資料に関して

池田信夫氏が批判をしている藤井聡氏が正しいと言うわけではない。藤井聡氏は、ドイツやロシアの人口減少が日本よりひどいと主張しているが、2000~2010年の年平均労働人口増加率は、日本が-0.569%、ドイツは-0.278%、ロシアは-0.060%となっている(関連記事:「人口減少デフレ論」を考察する)。経済学ではなく土木建築の人なので、公共事業を増やしたいだけであろうから細部は議論しないが、それでも政府の破綻条件(ドーマー条件)ぐらいは認識して欲しいと思う。

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