米連邦最高裁が1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)を理由としたトランプ関税を無効とした。議会が大統領に与えた権限の勝手な拡大解釈を戒めるものだ。市場や企業は判決を歓迎している。トランプ政権に振り回されてきた貿易相手国の外交官も、本音ではほっとしている事であろう。
日米合意は日本が米国投資を履行しなかったら米国が関税を引き上げる事になっているが、大統領にその権限がないことが確認されたので、日本の交渉力が増した。ただし、第1期トランプ政権のとき2018年3月23日にかけ、バイデン政権による事実上の中断を挟んで第2期トランプ政権で復活、2025年6月4日に強化された、1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム関税などは、今回の判決の対象外だ。232条も根拠として国家安全保障上の理由を求めているので、裁判で連邦最高裁が合憲と認めるかはわからないが。
トランプ政権は代替措置として1974年通商法122条にもとづく一律関税10%をかけることを宣言した。1974年通商法122条は貿易赤字への緊急対応措置として許されるもので、巨額の貿易赤字自体は存在する。しかし、最長150日間の貿易相手国すべてを対象とするものなので、これまでのトランプ政権の二国間協定を求める貿易交渉には使えない。今後は1962年通商拡大法232条や1974年通商法301条を根拠としてくると予想されている*1。ただし、この二つは国家安全保障上の理由や相手国の不公正な貿易慣行が理由として必要になる。また、具体的な品目も定めなければならない。
今回の裁判はアメリカの輸入業者の集団が起こしたものだ。原告は法技術的な問題に興味関心があるのではなく、関税率そのものに不満がある。理由を232条や301条に切り替えたところで、納得するとは思えない。これを機会に関税率を大幅に引き下げなければ再び裁判が起こされる。トランプ政権が世界中の国に関して「調査」を行い、建前と詳細を用意できるのかが問われる。トランプ政権の行政能力は低い。ペンギンしかいないオーストラリア領のハード島とマクドナルド諸島がトランプ関税の対象地域になっていたと話題であった。大統領の越権が不法行為と認定されるまで1年ほどの時間がかかるので、デタラメな理由でもしばらくは好きに関税をかけることはできることはできるのだが。
トランプ政権への打撃は大きい。関税率を大幅に引き下げると税収の不足が拡大する。トランプ関税は富裕層減税の代替財源でもあった。既に政府効率化省の下手で周知された稚拙な行政手腕をさらに疑わせるものであり、支持率の低下が予想される。支持率の低下は、連邦議会の共和党議員の離反を招く。トランプ政権は他の重要政策も法的に止められているが、連邦最高裁の保守派判事も必ずしもトランプ氏に迎合しないことが分かったので、そちらの勝算も低くなった。クーデターでも起こさない限り事態は打開できそうになく、連邦議会と連邦最高裁の警備を無くした上でMAGAを恩赦で煽ってこの二つに突撃させるような事に出ないかと危惧してしまうわけだが、トランプ氏は大人しく従うようである。すみやかに関税を引き下げるように命じる大統領令に既に署名した。


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