2020年3月2日月曜日

色々と思い違いをしているだけで、ツイフェミもフェミニストには変わらない

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ネット論客の青識亜論氏が、藁人形論法感のある事例*1を挙げつつツイフェミは女性の選択肢を広げるための「本来のフェミニズム」から外れる偽者だと主張しだした*2

従来の青識亜論氏の議論*3からするとだいぶ前進に感じるのだが*4、青識亜論氏の定義は自然なものとは言えないし、考えようによってはネット界隈の風紀委員型フェミニストも「女性の可能性」を追求していると言え、青識亜論氏の定義でも表現規制派もフェミニストと言える。

1. 青識亜論氏のフェミニストの定義は論拠が弱い

フェミニストを自認する女性の表現規制派フェミニストへの批判が紹介されているのだが、それだけではどちらの主張が本物かは分からない。歴史的にフェミニズムが女性の選択肢を広げることだけを追求してきたとするのは無理がある。女性への性暴力を抑制しようとする運動は本来のフェミニズムに則しているとした方が自然に感じるが、女性の選択肢を広げていると解釈するのは苦しい。性行為に関する自己決定権の保障、男女関係における地位向上と考える方がまだ自然だ。女性の権利拡大・地位向上運動ぐらいに捉えておくと、ほとんどのフェミニストの主張をカバーできる。しかし、こうするとマッキノンらポルノ規制派や表現規制派を、偽フェミニストと言うのは困難だ。萌え絵を嫌うツイフェミの皆さんも間違いなくフェミニストになる。

2. 表現規制派は青識亜論氏の定義でもフェミニストと言える

数々のツイフェミの皆さんの炎上事件を見ていくと、ツイフェミの皆さんが女性と言う属性にどのような固定観念がもたれるか、あるべき女性像がどのように考えられるかについて、強く気にしていることが分かる*5。(自己評価を含めた)女性への偏見、女性の社会的地位が彼らの焦点だ。その主張を補完して考えれば*6、次のようなものであろう:性的魅力の方が重要と言う理由で、女性が高い学歴や職位を手に入れても評価しない社会的風潮は、女性を人格として見ていない。女は男に媚びて生きることが宿命づけられた二級人種ではないし、そのような生き方を礼讃らいさんする表現物は、女を馬鹿にしている。殺人鬼を賞賛する行為と同様に、非難されるべきだ。さらに、偏見は進学/就職/昇進などに関連しうる要素であり、偏見の解消は「女性の可能性」を広げる。メディアにおけるジェンダー表現が人々の性別認識を定めるすれば*7、積極的に表現を規制することによって、少数の例外ではなく多く一般の女性の選択肢、女性の可能性を広げることができる

3. フェミニストか否かは表現規制派の主張の是非に関係ない

このように、表現規制派フェミニスト、つまりラディカル・フェミニストやツイフェミをフェミニストでないと、方向性から分類するのは難しい。そもそもフェミニズムは常に正しいという大前提は成り立っていないわけで、表現規制派がフェミニストであろうかなかろうが、彼らの主張の是非は定まらない。ツイフェミに疑問を投げかけるとすれば、もっと実証的な問題にするべきだ:表現物の種類や内容が多様な社会において、メディアが固定観念を決定するとは言えない*8。性的魅力を追求している女性がいることで、女性の社会的地位が貶められているとも言えない。服装なども保守的な時代の方が、女性の社会的地位は低かった。少年誌/青年誌のマンガにこれだけ女性ファンがいる時代なので、性的魅力を強調した絵が女性一般を不愉快にしているのかも疑わしい。問題にされた表現物の多くは過激なポルノグラフィでも無く、最近の女性の体格や服装などと比較検討すると異常とも言えない。作画ミスを無理やりエロ表現と解釈している風もある*9。性的モノ化など、持ち出してくる概念が適切に運用されていない*10

*1太田弁護士の保育士グラドル批判は、とくにフェミニズムの観点から行われているわけではない。茜さや氏のツイートは「叩かないで」と書いてあるだけで、ツイフェミから叩かれていることを示すものではない。

*2そろそろTwitterフェミニストの色分けをしよう - 青識亜論の「論点整理」

*3関連記事:フェミニストはリバタリアン論客の青識亜論とどう言い争うべきかネット論客の青識亜論氏の反転可能性テストが、よく考えると成立していない件青識亜論さん、労働契約では労働者保護の必要性はなくなりませんよ青識亜論と小宮友根のフェミニストいかにあるべきか論争の問題点

*4選択の自由もフェミニズムが考慮すべき女性の利益の一つと言う話にとどめれば、もっと説得的であったであろう。

*5本音は単なる景観の好き嫌いの問題な気もするのだが、ここでは考慮しない。

*6こういう風に「思いやりの原理」を働かせすぎると往々にしてミスリーディングが発生するので本当はよくないのだが(関連記事:きちんとした批判をするための『哲学思考トレーニング』)、ツイフェミの皆さんの国語表現能力は往々にして高くない。

*7ジェンダー社会学者は、長らくメディアにおけるジェンダー表現は人々の性別認識から自然に見えるように作られるというアーヴィング・ゴッフマンの話を、メディアにおけるジェンダー表現が人々の性別認識を定めると言う風に、因果を逆転して解釈してきた。

*8メディアが人々に与える影響は、様々な分析が行われてきたがはっきりしない(関連記事:テレビなどの影響を悪く言う前に読むべき『メディアと日本人』渡辺真由子のマンガ・アニメ・ゲーム内の性的描写規制論を振り返る,『「幸色のワンルーム」で青年と少女の認知は歪まない』)。

*9関連記事:ラブライブ!高海千歌のJAなんすんの西浦みかん大使のポスターのスカート描写について駅乃みちかの萌え絵のスカートの描写について

*10女性キャラクターはモノだからモノ化しないが、性的モノ化と言う概念で非難を繰り広げている(関連記事:過去のフェミニズムの議論からは、性的モノ化された萌え絵が有害の可能性は低い主題「スザンナと長老たち」で比較する、性的モノ化された裸婦画とそうでない裸婦画)。

*12関連記事:ラブライブ!高海千歌のJAなんすんの西浦みかん大使のポスターのスカート描写について

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