2014年12月31日水曜日

田中秀臣とGDPデフレーターとおバカさん

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ask.fmの質問で知ったのだが、「金融緩和がデフレーターに影響無いことも明らかですし」と言う発言に対して、経済学史が専門の田中秀臣氏が「なに、このおバカさん? 頭が悪いと統計データも素直にみれないのか 笑」と言って、(タイトルがおかしい気がするが)GDPデフレーターの昨年比のグラフを貼っていた。2014年第2四半期から跳ね上がっている。明らかに消費増税の影響を補正していない。

2014年12月27日土曜日

あるマルクス経済学者のプロパガンダ(13)

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マルクス経済学者の松尾匡氏の連載『リスク・責任・決定、そして自由!』の新記事『固定的人間関係原理から見た解釈の矛盾──新自由主義と「第三の道」の場合』が出ていた。ざっと眺めてみたのだが、この連載がプロパガンダであって、そうでしかない特徴がよく出ていると思う。

松尾匡氏の主張は、固定的人間関係を前提としたナショナリズム思想で、流動的人間関係を前提としたグローバル化を促進すると無理が出ると言うものだ。これを小泉パッケージと命名して、批判している。大きな枠だけ書くとそれらしいように聞こえるが、細部を見ていくと単なる藁人形論法に思える。

2014年12月24日水曜日

補足:リフレ派が知るべきアジア通貨危機の影響

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前回のエントリー「リフレ派が知るべきアジア通貨危機の影響」についた質疑について考察をしてみたい。(1)製造業従事者数の減少は長期低落傾向の上にあるのではないか、(2)アジア通貨危機ではなく為替レートの影響が大きいのではないか、(3)輸出よりも国内消費の影響の方が大きいのではないか、(4)1997年と2014年は同様の経済状況ではないかの4点になる。

2014年12月22日月曜日

リフレ派が知るべきアジア通貨危機の影響

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円安で輸出が伸びて景気が回復すると言うリフレ派の多くは、アジア通貨危機があったのにも関わらず、1997年から長く続く経済の不調が消費税率引き上げが起因だったと信じている。しかし、失業率が1998年から2002年まで急激に上昇していくのだが、産業別就業者数推移*1を見てみると、消費税の影響を受けない輸出に依存している製造業から先に雇用が減っていく。これに対して消費増税の影響は製造業の方が大きく受けると言う主張をしてきた人がいるので、輸出額と製造業雇用者数の関係を確認してみたい。1998年1月から輸出が低迷していき、同時に雇用者数が減少することから、雇用が国内要因で減り始めたとは言い難い事が分かるはずだ。

2014年12月20日土曜日

正規雇用の減りっぷりについて

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龍谷大学の竹中正治氏の『「非正規雇用は増えたけど、正規雇用は減っていない」という事実』と言うブログのエントリーに、「全就業者数(含む自営業)に占める正規の比率は、1990年61%、2012年59.3%で安定しています。人数も3000万人台で安定」という記述があって、漠然と信じていたのだが、実際に出所データを確認してみたら数字があわない。非正規雇用の増加が正規雇用の減少を上回るだけで、正規雇用の減少は否定できないのでは無いであろうか。

2014年12月18日木曜日

量的緩和でインフレ目標に到達するためには

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ゼロ金利下での量的緩和の効果が無いか薄いと言うと、僅かな効果でも大量に行なえば良いと言う人が出てくる。効果量の小ささを実感できないようだ。僅かな効果があるとして、どれぐらい日銀が国債を買えば良いのか計量分析結果から検討してみた。1年間で377兆円を超えるペースで国債を買い続ければ良いらしい。国債発行残高が780兆円で日銀が既に200兆円を保有していることを考えると、インフレ目標に到達しても維持ができない無理なゲームとなっている。

2014年12月17日水曜日

労働組合・経営者・税理士・学者「軽減税率反対!」自民党・公明党「皆様の理解を得たので軽減税率を導入します」労働組合・経営者・税理士・学者「」

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経済的にも政治的にも弊害が大きく導入国では失敗だったとされている軽減税率*1だが、国内でも租税に専門的知見を持つほとんど人々が反対しているのにも関わらず、公明党が乗り気なせいか、自民党もそれにつられているようだ。

2014年12月16日火曜日

魚で始まる世界史: ニシンとタラとヨーロッパ

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なぜか英文学者が欧州の魚食文化についてまとめた『魚で始まる世界史: ニシンとタラとヨーロッパ』を拝読した。モチベーションが分からないのだが、古い英文学には魚を使った言い回しが多数出てくるらしく、それを深く理解するために調べたのであろう。世界と言うか、主に欧州の魚食文化の話なのだが、宗教、保存技術、魚場などが魚食文化やヴァイキングの域外進出、そして大航海時代や新大陸への移住に与えた影響が、文学作品での魚への言及を交えつつ説明されている。

2014年12月15日月曜日

高齢者雇用対策と若年失業率、その後

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なぜか再雇用制度を定年延長と誤解して若者の職を奪うと批判されていた*1高年齢者雇用安定法だが、2013年4月に施行されて1年半が経過した。

景気動向もあるので因果関係は厳密ではないが、60歳以上の非正規雇用が大幅に増加する一方で、それより若い世代の非正規から正規への転換も進んでいるようだ*2。気になる若者の雇用だが、2014年10月現在の大卒就職内定率は68.4%と4年連続で改善し*3、高卒内定率も63.3%で2008年以来の高水準となっている*4

消費税率引き上げで若者の負担は減る

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「年金給付を削らずに消費税だけ増税したら、その負担はいまの若い人に重くかかる」と言う話を見かけた。消費税率を引き上げた分だけ、制度的に年金給付額も増えると言う指摘のようだが誤りだ。今は平成16年改正で、消費税率引き上げのような賃金上昇なきインフレは、年金給付額を引き上げないようになっているからだ。

2014年12月14日日曜日

マネタリーベースとマネーストックのグラフの描き方について

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定期的に描いてはツイートしているマネタリーベースとマネーストックの推移の二軸グラフに関して、「高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門」と言うブログを書いている菅原晃氏が色々と質問してきた。しかし菅原氏から質問してきたのに、「もう不毛なやり取りはご遠慮願います」と言って関連するツイートを全部消されたので、文句を言いたかったのであろうけれども納得したのか分からない。やはり納得できないといわれたときのために、説明をまとめておきたいと思う。

2014年12月13日土曜日

守秘法域の租税回避地が引き起こすこと

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昨年の米Apple社の租税回避*1が話題になったのを覚えている人はまだ多いと思うが、大企業がタックスヘイブンと呼ばれる法人税率が安い国や地域を使って反則的な租税回避を行なっているのは、それを防止する規則が幾つもあるのにも関わらず、もはや常識として受け止められているようだ。しかし、こういう節税や脱税の手段になるだけではなく、資金洗浄や規制回避の道具にもなる事も認識している人は少ないであろう。「タックスヘイブンの闇」は租税回避地が抱える問題を詳しく追いかけて非難している本で、それが備える守秘法域と言う特性の問題を認識させてくれる。

2014年12月12日金曜日

アベノミクスの大前提はイマイチな状況

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消費増税延期の是非を問う選挙だったのが、いつの間にかアベノミクスの是非を問う選挙になっていた第47回衆議院議員総選挙だが、どうも野党の選挙戦略もしくは経済音痴のせいで、アベノミクスの大前提に対する批判が甘いような気がする。大前提と言うのは、金融政策の転換と言う第一の矢に何らかの効果があったと言う所だ。まずはこれを確認するために、マネーストック統計について言及しなくて良いのであろうか。

2014年12月3日水曜日

金融抑圧(人為的低金利政策)と言う単語だけ紹介しても

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法政大学の小黒一正氏の「増税延期は誤った判断 財政と異次元緩和の背後に潜む“2つの限界”」と言うエッセイで、金融抑圧と言う一般には聞きなれないであろう単語が使われていた。人為的低金利政策と表現するほうが理解しやすいと思うが、(1)資本規制によって金利を低く抑えつつ、(2)インフレ課税を行なう政策の事を指す。

累積債務の規模から考えて人為的低金利政策による債務圧縮も選択肢に入って来てしまうと言うのが小黒氏の指摘であろうが、(a)金融自由化された日本では難しいとは書いてあるが、条件を明示していないと既に今が金融抑圧状態だと誤解をする経済評論家が出てくるだろうし、(b)弊害を書いておかないと、増税ではなく金融抑圧をすべきと言う人々が出てくるであろう。金融抑圧と言う単語だけを紹介しても、と言う感じだ。

2014年11月26日水曜日

職業訓練の前に読み書き算数

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大学改革に関連して、「OECDの職業大学論」で濱口氏が経済協力開発機構の職業訓練のレポートを紹介している。職業大学と言うより、専門学校と表現した方が日本人にはイメージしやすい気がするが、欧米の教育事情が垣間見れて、ある意味興味深い。

レポートの内容は、必要とされる技能が高度化しており、職業訓練で得られる技能が時代遅れで労働市場で通用しないときもあるので、教育現場、実業界、労働組合が協力して職業訓練制度を改善していくべきと言うものだ。期待される政策効果は明確には書いていないのだが、労働生産性の向上による待遇の向上と就業率の向上が狙いのようだ*1

2014年11月25日火曜日

あらゆる政権の経済運営を批判する前に

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嫌いな人から見ると、安倍政権でも、野田政権でも、小泉政権でも、最低な経済政策をしていた言う事になりがちだ。政党間で言い合うのは仕方が無いのかも知れないが、関係の無い人は数字を確認した方が良いと思う。

1995年からの就業者一人あたり実質GDPと完全失業率をプロットし、政権ごとに区切りをつけてみた。少し見づらいかも知れないが、クリックすると拡大ができる。皆さんでこれを加味しつつ実績評価をして欲しい。

2014年11月19日水曜日

雇用はどの程度の遅れてくる指標?

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インターネット界隈では雇用は景気変動から遅れて変化すると言われている。確かに内閣府でも完全失業率は遅行指標に分類している*1。しかし、早い遅いは比較の問題で、ここ数日話題になっていた四半期GDPと比較して早いかは、比較してみる必要があるだろう。過去の四半期GDPと完全失業率のデータをかき集めてきて、時系列分析的にどちらがどちらに影響しているかを分析してみた。その結果からは、四半期GDPが動くと、すぐに雇用に影響が出てきて、1年以内に収束することが分かった。四半期GDPは速報値でも、四半期の最初からは4ヶ月、最後からは1ヶ月のラグがあるため、四半期GDPが公開されたときには、雇用への影響は既に出ていることになる。

2014年11月18日火曜日

2014年7-9月期GDP速報値は大きな景気後退を示していない

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各所で話題になっている2014年第3四半期GDP速報値だが、中身を見ていくとそんなに悪い数字ではなかったようだ。

二期連続のマイナス成長は良い数字では無いのだが、民間在庫品増加の寄与度-0.6が大きいため、在庫調整が進んだ結果だと言えるからだ。4-6月期にGDP比で1.2%ほど民間在庫品増加が記録されていたのだが、増税前の在庫圧縮と7-9月期の在庫処分で調整が完了していれば、10-12月期はプラス成長に戻ることになる。そもそも全体の-0.4と言う数字は2013年10-12月期と同じであり、大きな景気後退ではない。

2014年11月14日金曜日

あるマルクス経済学者のプロパガンダ(12)

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マルクス経済学者の松尾匡氏の連載『リスク・責任・決定、そして自由!』の新記事『旧リベラル派の「社会契約」という「ゴマカシ」』が出ていた。本題は著作の宣伝な気もするが、社会保障を正当化する哲学的議論も紹介している。小うるさい哲学者と厚生経済学者が待ち構えている倫理の問題に踏み込んでいるのだが、幾つか大丈夫なのか疑問に思う所がある。ロールズの議論が理解されているのか疑問だし、規範的な議論を実証的に批判してしまっているし、「社会契約」と言う単語に固執しすぎているように思える*1。この辺の議論は平成24年版 厚生労働白書の第1部第2章に分かりやすい解説が書いてあるのだが、それを参考にしつつ問題点を説明したい。

景気悪化で消費増税を延期しますが、景気回復で法人税が増えます

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景気の悪化を受けて、消費税率10%への引き上げを1年半ほど延期することが政府内部で検討されていると報道されている(Reuters)。一方で、景気の回復を受けて、法人税が大幅に増えると報道されている(Reuters)。政策を議論する前提である景気判断が、どうなっているのか良く分からない。景気は悪化しているのであろうか、回復しているのであろうか。

2014年11月12日水曜日

「世界の経営学者はいま何を考えているのか」でイマドキの経営学の雰囲気を掴む

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気づくと早稲田大学に移籍していた経営学者でついったらー*1の入山章栄氏の「世界の経営学者はいま何を考えているのか」を拝読した。最近の経営学のトレンドを紹介して、ドラッカーあたりの居酒屋談義を真に受ける人を減らそう、もしくは経営学者が真面目に仕事をしている事を世に示そうと言う気概に溢れており、最近の研究成果も色々と紹介している良書だ。日本語も平易だし経営学に興味がある高校生や大学生が読むのに適していると思うが、関連分野の経済学徒も面白く読めると思う。特に産業組織論などに興味がある院生は、短時間で大きなインプットが期待できる。

2014年11月10日月曜日

クローニー・キャピタリズムと言う用語は適切に使いましょう

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NPO法人代表・駒崎弘樹氏の「子育て支援の財源が消費税に紐づいているため、増税に賛成」と言う発言に対して、稲葉振一郎氏がクローニーキャピタリズムと批評したところ、その言い方は侮蔑表現でケシカランと濱口氏が怒っている。しかし態度云々以前に、この縁故資本主義と言う言葉はもっと慎重に扱う必要がある。ある団体の代表者が、ある政策の支持や不支持を表明しても、全くクローニー・キャピタリズムにならないから。

2014年11月9日日曜日

終身雇用制度の発生時期と、専業主婦というロールモデルについて

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労働問題の専門家の濱口氏がツッコミそうな内容ではあるけれども、人事コンサルタントの城繁幸氏が「専業主婦も終身雇用も割と最近の流行りもの」と言うエッセイで終身雇用というシステムの発生について説明しているのだが、問題点を指摘したい。タイトルの部分はともかく、本文の細部に問題がある。城氏がいた頃の大学はレジャーランドで、何かを調べてから議論することを教わらなかったのであろうか。

2014年11月8日土曜日

日本銀行から見たマクロ金融政策を語る本

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第2次安倍内閣の経済政策“アベノミクス”の第一弾として黒田日銀総裁が誕生し、黒田バズーカこと異次元緩和が行なわれて世間の注目を浴びているマクロ金融政策だが、各所から論評されてはいるものの、中央銀行の視点を良く説明している一般書はほとんど無いと思う。そのため少なく無い誤解が過去の、そして現在の日本銀行に向けられており、中には憤慨している人すらいるようだ。そういう人は、日銀出身で京大で教鞭をとる翁邦雄氏の『日本銀行』を読むべきだと思う。日銀も無責任にマクロ金融政策を展開しているわけではなく、長い金融史で培われた心配事があるわけで、この本を読めばそう世の中単純ではないと分かるはずだ。

2014年11月5日水曜日

安易に民族やナショナリズムを語るのがまずい事が分かる本

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政治学や社会学の単語で濫用されているものと言えば、民族とナショナリズムだと思う。

民族は何をもって定義すべきかが明確でなく、血縁、言語、宗教、習慣などのエスニシティで分類するわけだが、時と場合によってどのエスニシティを用いるかは変わっていくし、そもそもエスニシティも時代とともに変化し形成されていく側面がある。

ナショナリズムも、複数の民族を包容したネイションの国民のものなのか、一つの民族の利害を代弁したネイションの国民のものかで性質が異なるし、歴史的にその位置づけも変化してきた。だからナショナリズムとリベラルを対立軸として捉えたりすると、おかしい事になる。

2014年10月30日木曜日

今のアフリカはこんなもんだと分かる『経済大陸アフリカ』

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身近にアフリカ出身者はそうはいないであろうから、日本人から見て心理的に遠い地域と言えばサブサハラ・アフリカだと思う。今度のエボラ出血熱の広がりで、リベリア、ギニア、シエラレオネの位置を地図で確認した人は多いはずだ。また、『ホテル・ルワンダ』と言う映画があったが、政治的に不安定な危険地域で経済的に停滞しているイメージがあると思う。しかし、近年の資源高でサブサハラ・アフリカの経済状況は変わりつつあるらしい。この変化を包括的に論じたのが、「経済大陸アフリカ」だ。広大なアフリカ大陸の現代事情を叩き切るという無理がある内容で、中国のアフリカ関与を最初の章に持って来るなどキャッチーな面もあるが、一般書としてはバランスが取れた本になっていると思う。

2014年10月29日水曜日

日本の高等教育に必要で簡単に実現できるモノ

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先日のエントリーで戦略コンサルタント冨山和彦氏の大学教育の階層化構想の問題点を指摘したところ、「現状がいい/マシと言いたいのだろうか?」と言うコメントをもらった。答えはYESで、冨山提案よりは現状の方がましだと思う。しかし、現状に改善の余地が無いとは言えない。(1)大学教育が職業教育に適していないと言う不満が産業界から、(2)入学者の質が悪く大学教育が満足に行なえないと言う不満が大学側から出されているのが現状だと思うが、高校卒業試験を行い成績証明書を出せば、これらの問題は解決すると思う。

2014年10月26日日曜日

戦略コンサルタントが教育を語るとこんな事になる

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文部科学省の実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議で提出された、戦略コンサルタント冨山和彦氏の「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性」が一部で話題になっている。

産業をグローバル(Gの世界)とローカル(Lの世界)に分けて、それぞれに必要な人材が異なるとし、それぞれのタイプの人材に適応した教育を行おうと言うのが趣旨だが、色々な部分で戦略コンサルタントらしい頭の悪さを発揮している。それっぽいが辻褄のあった議論が出来ていないし、現実も見ていない。

2014年10月24日金曜日

イスラエルでは少人数クラスの方が好成績!

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イスラエルでのクラスの人数と成績の関係を分析した論文Angrist and Lavy(1999)が話題になっていたので、ざっと眺めてみた。どこの世界にも親馬鹿がいて、成績の良い子を少人数クラスの学校に転入させようとしたりするので同時性の問題が発生し、信頼性のある計量分析が難しい。しかし、イスラエルではマイモーン・ルールと言う機械的な人数決定方式を採用しており、また私立学校が極めて少ないので、これを上手く使う事でこの同時性の問題を解決しようとしている、目の付け所が売りのペーパーだ。QJEなので一流誌。

2014年10月22日水曜日

在日韓国・朝鮮人の特別永住権を正当化できない社会学者

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橋下大阪市長が特別永住者の法的扱いに疑問を投げかけたことに対して、関西学院大学の金明秀氏が反論をしている(SYNODOS)。相変わらず民族的自尊心が重要らしく、特別永住者が日本にいることの正当性を主張し、その被害者性を強調している。残念ながら、上手く書けていない。

冗談のような作文だ。在日韓国・朝鮮人は植民地朝鮮から内地への密航者ではあるが、日本国籍を持っていたので不法入国者ではないと言う分かりづらい正当化をしている。大差ない。また、「特別永住資格とは、はたして《日本人にはない特権》というべきものなのだろうか」と他の永住外国人には無い特権と言う批判を無視した問いを立てている。

うわぁ、ノビーがまたやっちゃってるー

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と、経済評論家の池田信夫氏の「アベノミクスの挫折で深まる安倍政権の危機」と言う記事がつっ込まれていた。いつも通りミスの多い記述で、少なくとも四箇所、おかしいところがある。

まず、用語定義。「財政・金融政策で需要を追加しても、供給不足が悪化してコストプッシュ・インフレになるだけだ」とあるのだが、こういう場合は普通はディマンド・プル・インフレーションと言う。池田氏が普通かは存じないが。

2014年10月20日月曜日

楽天の英語勉強法は4年間でどれぐらいの効果があったのか?

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楽天の英語勉強法 TOEIC平均255点アップ』と言う記事が話題になっていた。内容は2010年10月に平均526.1点だった楽天社員のTOEICスコアが英語学習によって、2014年6月に平均781.9点まで上昇したと言うものだ。胡散臭い提灯記事ではないかと、各方面から疑問視されていた。

お気づきの通り、この記事には統計学的に問題がある。企業の従業員は入退社で入れ替わっていくので、母集団が同じとは言えないから、勉強の効果と言うよりは、新入社員の英語力によって平均引き上げになった可能性がある。楽天の新入社員のTOEIC平均点は827と公言される*1一方で、平均勤続年数は3.8年*2となっている。これを加味して、古参従業員の英語力がどれぐらい向上したかフェルミ推定してみよう。

2014年10月16日木曜日

世論調査なんて無視しておっけー、有権者なんてついてくる

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有権者の意向を気にする政治家は多いと思うが、そう細かく気にする必要は無いかも知れない。少なくとも二名の政治学者、カリフォルニア大学バークレー校のBroockman氏とセントルイスのワシントン大学のButler氏が行なった社会実験では、有権者は政治家が自身が支持しない政策を取ろうとしていても、政治家への評価は変えないそうだ(ft.com)。

2014年10月15日水曜日

歯を食いしばって勉強したい人のための伊藤清三『ルベーグ積分入門』

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確率論やフーリエ解析などの応用分野でよく見る数学の裏側には、ルベーグ積分と言うモノが潜んでいる*1。中高までが基本とするリーマン積分では極限操作が扱いづらいなどが理由だが、これを真面目に勉強し出すとそれなり骨が折れるものだ。ただし定番と言われる教科書、伊藤(1963)『ルベーグ積分入門』がある。著者の伊藤清三氏は東大の教官だった人で、この教科書に関連して有名な駄洒落を残している*2

2014年10月12日日曜日

消費税率引き上げの景気への影響はどの程度?

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雇用情勢は引き続き堅調に思える*1が、消費税率引き上げで不況になったと言う言説は良く見かけるようになったし、内閣府も景気判断を下方修正し、先行きに不透明感はある。しかし、実際にどのように不景気なのかが曖昧な気がするので、SNSでの言い争いに備えて関係ありそうなデータを整理してみた。景気の先行きに不安はあるのだが、とりあえず消費税率引き上げの影響は限定的なように思える。

2014年10月7日火曜日

稲葉氏が「まだ詰められんかなあ。と思うんですが」と言うのでスウェーデンのマクロ金融政策小史を確認してみた

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前のエントリーで松尾氏とは十分に意見交換をしたと思うものの、稲葉振一郎氏がスウェーデンのマクロ金融政策で何かもやもやしているようなので、蛇足(右写真参照)的にちょっと材料を探してみた。ついでに紀要論文の再校までに届くかも知れない。

さて、BISのスウェーデンに関する資料を引っ張ってこよう。"Karolina Ekholm: Why Swedish monetary policy needs to be more expansionary"と言うタイトルで、スウェーデンの中央銀行になるリクスバンクの副総裁のスピーチ。大本営発表にはなるが、事実関係に誤解は無いはず。しかも個人的にと前置きして、拡張的金融政策に理解を示しているから、現状追認をしたがっている人ではないようだ。

2014年10月5日日曜日

りふれ派はスウェーデンに触れてはいけない

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スウェーデンがマクロ金融政策で労働需要を増やし完全雇用を目指しているかのような話がマルクス経済学者の松尾匡氏のSYNODOSの記事に書かれていて、その内容を左派リフレ派を名乗る人がツイートしているのを見かけたのだが、どうも上手く騙されていて面白い事になっている*1。書かれているように、1993年に通貨防衛政策を諦めたので、その時に金融緩和になったのは間違いないのだが、雇用水準を目標に置いているわけではなく、たまたまに思える。また、財政的にも総需要管理政策を取っているようには思えない*2

2014年10月4日土曜日

高所恐怖症は登校拒否になるしかない

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人口過疎地域では居住地付近に学校があるとは限らず、何Kmも歩いて通学しないといけないときもある。ネパールやコロンビアでは通学路に川が立ちはだかり、それを超える橋もないので、ロープを伝ったりゴンドラで超えたりしているそうだ。危険性は高く、落下する人もそれなりいるらしい。

2014年9月30日火曜日

在日韓国・朝鮮人はなぜ帰化をしないのか?

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在日はなぜ帰化しないのか」と言う当初は事実誤認が多かった*1池田信夫氏のエントリーをもとに、なぜか終戦直後の朝鮮人の地位を巡る話が続いたようだ(togetter)。しかし、池田氏のエントリーからそうなのだが、今でも帰化しない人々が多くいることの説明になっていない。また池田氏もその批判者も、当時の複雑な状況は無かった事にしている。

インターネット・ショッピングはまだまだ普及中

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意外でもないと思うが、インターネットを利用した買い物の増加傾向は続いている。家計消費状況調査の7月確報資料に、『平成26年7月分(確報)のインターネットを利用した支出総額は、名目4.1%の増加、実質0.0%(前年同月比)』と書いてあった。まだ利用家計は24.7%に過ぎず、不利用家計分を含む総支出の1.88%を占めるに過ぎないわけだが、年々と利用が拡大しているのは確かなようだ。

2014年9月27日土曜日

軟弱な文系のための『ルベーグ積分から確率論』

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不要な知識と言えばそうなのだが、確率論や経済学の理論論文で測度と言う概念を見かけることがある。ルベーグの収束定理、フビニの定理、あとは発展として中心極限定理ぐらいしか言及されない事が多い気がするのだが、何か小難しく偉そうで癪に触る。

どんなものかと定番テキストの伊藤(1963)を読むと、測度の所と積分の定義で挫折しそうになる。応用がどうなっているのか理解できそうにない。そんな私のような軟弱な文系向きの本が、『ルベーグ積分から確率論』だ。

あるマルクス経済学者のプロパガンダ(10)(11)

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マルクス経済学者の松尾匡氏の連載『リスク・責任・決定、そして自由!』の新記事『「流動的人間関係vs固定的人間関係」と責任概念』『内集団ひいきの武士道vsウィン・ウィンの商人道──システム転換と倫理観のミスマッチ?』が出ていたのだが、一つを今日まで見落としていた。幸い、関連した議論になっているので、2回分まとめてコメントしてみたい。政府が世界をコントロールできることが前提になっているが、そんな力が政府にあるのであろうか。

2014年9月26日金曜日

ヘイトスピーチを辞めた在特会と非民主的なカウンター・デモ

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思想家の東浩紀氏が『在特会デモ&カウンター「観光」記』と言うレポートを公開していた。9月23日の六本木周辺の在特会デモを眺めてきたそうだ。素朴に見てきたことが記述されており、文章も軽快で面白い。しかし、肝心なポイントは聞けなかったのか、言及がされていなかった。

2014年9月23日火曜日

浮浪者には家を与える方が安くつく

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効率的に社会保障を実現するかと言うのは、程度の差はあれ福祉国家である先進国共通の悩みだと思うが、ノースカロライナ大学シャーロット校保健福祉学部のLori Thomas助教授(社会福祉)ら、ノースカロライナ大学グリーンズバラ校、サウスカロライナ大学、ノースカロライナAT&T州立大学の共同チームが、興味深いレポートを出していた。曰く、浮浪者には家を与える方が安くつくらしい(UNC Charlotte)。

2014年9月19日金曜日

戦争を通して経済学を勉強する教科書『戦争の経済学』

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SNSでよく言及されている気がする『戦争の経済学』を拝読してみた。端的に言うと、教科書的なミクロ、マクロの経済学で戦争を分析する教科書。章末に練習問題もついている。こう書くと非経済学徒向きでは無いように思えるが、説明に使う経済学の用語や観念は説明されるから、非経済学徒でも問題は無いであろう。しかし、かなりモヤモヤした読後感がある。戦争の本なのに、臨場感が無いのだ。

2014年9月18日木曜日

80年代にはすでに従軍慰安婦が女子挺身隊として強制連行されたと報道されていた

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朝日新聞の元記者・植村隆氏が従軍慰安婦問題、特に従軍慰安婦が女子挺身隊として強制連行されたと言う捏造記事を出し、日韓両国に大きな影響を与えたかのような言説を見かける*1のだが、日時に注意すると説得力が無い。植村氏の記事以前に、問題とされる言説は確認できる。当時も今もタイムマシンはまだ発明されていないはずだ。

2014年9月14日日曜日

計器飛行が大事な事が分かる写真

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Twitterで下の写真が流れていた。背面飛行状態の飛行機の中で、下のペットボトルから上のコップへ水が注がれている。重力に逆らって水が浮いていくように見えて面白いのだが、実は機体が落下しており、ペットボトルとコップが急激に下降していると言った方が正確だ。

ところで、この状態では落下している機体に押されるため、パイロットは下から力を感じる事になる。この落下によるGを重力だと勘違いするときがあり、空間識失調と言って、水平線の見えない夜間などでパイロットが平衡感覚を失うときがある。だから姿勢指示器を信じて、自分の感覚を信じるなと教わるそうだ。

2014年9月13日土曜日

ガロア理論の本を読むための本「天才ガロアの発想力」

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何の役に立つのか良くわからない数学の定理と言えば、代数学の基本定理とアーベル・ルフィニの定理が有名だと思う。前者が「次数が1以上の任意の複素係数1変数多項式には複素根が存在する」と言うのに、後者は「五次以上の代数方程式には解の公式が存在しない」と言うわけで、答えはあるけど教えてあげないよと言われている気分になる。代数学の基本定理の証明は複素数を勉強してれば出てくるぐらいで易しいが、アーベル・ルフィニの定理は数学科の学生以外は馴染みの薄い体論、つまりガロア理論を勉強しないと理解できず敷居が高い。テキストも数学科の学生向きで難解だ。そこで数理経済学者の小島寛之氏がガロア理論を学ぶ下準備をするための本として書いた*1のが「天才ガロアの発想力」だ。

2014年9月12日金曜日

韓国が慰安婦問題を解決したいのであれば

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世宗大教授の朴裕河氏の「それでも慰安婦問題を解決しなければいけない理由」と言うエッセイが流れていた。内容からして、韓国人向けに書かれたもののようだ。韓国人の知識人の見解として参考になる面は多いのだが、現状認識に精緻な面がある一方で、見通しの甘い解決策が気になった。日韓の条約の文面や韓国司法の判断をあわせて考えれば、韓国世論の軟化を期待しても意味がなく、日韓請求権並びに経済協力協定にある仲裁委員会の設置、国際司法裁判所への共同提訴ぐらいしか平和的な解決策はないように思える。

2014年9月10日水曜日

韓国で強い影響を持つと言う、儒教って何だろう?

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先日、韓国で産経新聞に名誉毀損の疑いで捜査が入った件に関して、神戸大学の木村幹氏が『背景には、儒教的な倫理観に基づく「正しいメディアは正しい報道」をしなければならないという韓国独特の考えがある』と説明していた(毎日新聞)。異論があるわけではないのだが、よく考えると自分は儒教が何だか分からない。堅苦しいイメージはあるのだが、儒教として儒教に接する機会はほとんど無かったからだ。木村氏に騙されているとは思わないが、念のために「儒教とは何か」と言う本を手に取ってみた。