『楽天の英語勉強法 TOEIC平均255点アップ』と言う記事が話題になっていた。内容は2010年10月に平均526.1点だった楽天社員のTOEICスコアが英語学習によって、2014年6月に平均781.9点まで上昇したと言うものだ。胡散臭い提灯記事ではないかと、各方面から疑問視されていた。
お気づきの通り、この記事には統計学的に問題がある。企業の従業員は入退社で入れ替わっていくので、母集団が同じとは言えないから、勉強の効果と言うよりは、新入社員の英語力によって平均引き上げになった可能性がある。楽天の新入社員のTOEIC平均点は827と公言される*1一方で、平均勤続年数は3.8年*2となっている。これを加味して、古参従業員の英語力がどれぐらい向上したかフェルミ推定してみよう。
サバイバルな厳しい職場らしいので、平均勤続年数は指数分布に従うとしよう。平均は3.8年。このとき44ヶ月(約3.67年)の離職率は約62%だ。すると、古参従業員の平均的な英語力向上をx点として、(526.1+x)点×(1-0.62)+827点×0.62=781.9点と言う式が立てられる。xは約182.5になる。255点アップは過剰評価だが、182.5点アップの向上はあるようだ*3。なおTOEICテストを主催するETSによると、±50点以上の差が無いと統計的有意とは言えないそうだ。
ただし、それでも古参従業員は平均708.6点でしかないので、大半は800点と言う昇進条件などを満たさないことになる。4年近くの学習でこれなので、昇進や昇給を諦める人が出ているかも知れない。日本語を話せないエンジニアを採用できるメリットがあると言うインタビュー記事もある*4のだが、収益構造から考えれば日本ドメスティックな会社なので、古参従業員は不満を溜め込んでいるのではないかと想像される。経営者の三木谷氏からみたら、是非辞めて頂きたい人々なのかも知れないが。
*2年収ラボ「楽天の平均年収と業績推移」
*3古参従業員の中でも、もともとTOEICの点が高い人が生存したバイアスが入っている可能性は無視している。
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